著者
吉川 邦生 細田 四郎 粟井 堅一 新楽 実
出版者
The Japanese Society of Gastroenterological Cancer Screening
雑誌
消化器集団検診 (ISSN:02876132)
巻号頁・発行日
vol.1984, no.62, pp.74-84, 1984

1) 過去20年間, 毎年受診率約80%の逐年検診を施行している職域集検を対象に胃集検の費用便益分析を行った。<BR>2) 対象集団の胃癌罹患率, 集検発見率, 集検外発見率, 集見発見, 集検外発見癌の5年生存率などを昭和45年~54年の10年間の平均値として算出し, この値を昭和51年の受診者に適用して, 費用便益分析を行った。<BR>3) 費用便益分析は, 胃集検を施行した場合と施行しなかったと仮定した場合の差であるnetの費用と便益について行った。<BR>4) 昭和51年度の一次間接1件当り費用は, 4,034円で, 一次間接および精検を含む総費用は81,813,000円で, netの費用は74,435,000円であった。<BR>5) 胃集検施行により, 非施行の場合にくらべて5名の胃癌が救命され, 生涯稼働額現価で示される救命利益は212,905,000円であった。<BR>6) 休養日数の減少により得られる生産性減少阻止効果は108,915,000円であった。<BR>7) その他の便益は胃癌の治療費の節約, 15,225,000円, 防ぎ得た給料の減少2,790,000円であった。<BR>8) 総計してnetの費用74,435,000円, netの便益339,835,000円で費用: 便益は1: 4.6であった。<BR>9) A健保の胃集検費用は年間総医療費の1~2%, 健康管理費の10~20%を占めた。