著者
吉川 雅也 Masaya Yoshikawa
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
関西外国語大学研究論集 (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
no.107, pp.75-93, 2018-03

本稿はキャリア理論を計画重視と適応重視に分類し、このうち後者の適応重視のキャリア理論のプロセスについて、ソフトウェア開発におけるアジャイル開発モデルをアナロジーとして用いながら論じるものである。キャリアに関する理論は計画重視のキャリア理論が主流であったが、近年、適応重視のキャリア理論も広く知られるようになった。社会の変化のスピードが早く個人のキャリアも将来の見通しが付きづらい昨今、環境に合わせて適応していくタイプのキャリアが注目されているのは妥当なことである。しかし適応重視のキャリア理論は計画重視のキャリア理論に比べると具体的な実践方法の議論が十分ではなかった。そこで本稿ではソフトウェア開発の分野においてもウォーターフォールモデルからアジャイル開発モデルという計画重視から適応重視の流れがあることに着目し、アジャイル開発モデルの実践からキャリアにおける適応重視理論への示唆を得ることを試みた。
著者
吉川 雅也 Masaya Yoshikawa
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.119-136, 2018-09

本稿はKrumboltzの計画的偶然理論を社会的学習理論の観点から整理したものである。計画的偶然理論は偶然が人のキャリアに与える影響に着目し、チャンスをつくるために自ら行動を起こすことを促すもので、偶然を作るための5つのスキルが有名だが、偶然を作るための4つのステップはあまり知られていない。しかしKrumboltzを社会的学習理論の研究者、そして認知的行動的アプローチを重視する実践家として考えたとき、計画的偶然理論の根幹は5つのスキルより4つのアプローチであったと考えられる。後にハプンスタス学習理論が発表され、発展的に作成された5つのステップが記されている。社会的学習理論の観点からKrumboltzを理解することで、5つのスキルでクライエントの認知を変えるアプローチだけでなく、具体的なステップでクライエントの行動を変えるアプローチも用いることができる。
著者
吉川 雅也 Masaya Yoshikawa
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of inquiry and research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
no.111, pp.193-211, 2020-03

本研究は有機的統合理論における自律-他律パラダイムの観点から主体性概念の構造的理解を試みるものである。主体性という言葉は教育や産業の現場でも頻繁に使用されるが自律や自発などの類語が存在するうえ、それらが何を意味するのか定義が一定しない。自ら考えて行動しても他者の期待に沿わなければ主体的との評価がなされないこともある。本研究は文部科学省「生徒指導提要」の分類を出発点とし、モチベーション研究における有機的統合理論の枠組みを用いて主体性および類語の整理を行った。その結果、自ら考え行動するだけでは自発・自主であり、計画性が認められると自律となり、自らの考えからではなく他者の期待や組織のルールに沿ったことを自らの意志で行うことが主体性であることがわかった。これは有機的統合理論では社会化された外発的動機づけに相当し、主体性が自律的ながら外部から動機づけられた手段性を有するものであることを意味している。