著者
有賀 豊彦 熊谷 日登美 吉川 雅清 川上 肇 関 泰一郎 櫻井 英敏 長谷川 功 衛藤 威臣 住吉 博道 恒吉 唯充 角 眞一郎 岩井 和夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.362-369, 2002-05-15
被引用文献数
4 16

天然無臭ニンニクといわれているネギ属植物について, 植物学的, 生化学的分析を行い, その種の同定を試みた.この植物は, 草丈, 鱗茎ともに通常のニンニクより大きく, 鱗片は花茎に密着して鱗茎を形成する大型のものと, 鱗茎の辺縁に付着する小型のものがあり, これらの数は20に及ぶ.花器はよく発達するが, ニンニクにみられる花序での珠芽形成はない.染色体は2n=32でリーキと同数であり, にんにくの2倍であった.そのDNAの制限断片長多型(RFLP)は, リーキに似ており, ニンニク, エレファントガーリックなどとは異なっていた.アイソザイム分析においてはリーキと最も似たパターンを示した.鱗茎細胞内でのアリイナーゼ(C-Sリアーゼ)mRNAの発現は, 他種に比べ少なかったが, 大きさは等しく, 1.9 kbであった.この植物のアリイナーゼのN末端25アミノ酸残基の配列はリーキのそれと一致し, ニンニクとは2残基相違した.以上の結果から, この植物は, リーキと極めて近縁の植物であり, Allium ampeloprasum L.の中に分類することができると考えられる.