著者
有賀 豊彦 石井 謙二 桜井 英敏 熊谷 日登美 関 泰一郎
出版者
日本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

ニンニクを摂取すると,血液凝固系および線溶系には変動はみられないが,血小板機能が特異的に抑制される。私どもは,このような作用をもたらすニンニク成分をその精油中より分離同定し,メチルアリルトリスルフィド(MATS)であることを確認した。MATSは,in vitroおよびin vivoにおいて抗血小板作用を示すが,その作用機構については不明であった。このたびの科研費補助金による3年間の研究プロジェクトは,主としてMATSの血小板内作用点を特定することを目的に計画され,以下のような成績を得ることができた。1.MATSは消化管より吸収され,血中に出現し,尿中に排泄される。血中出現時間は90〜180分で,その後の臓器分布は,肝と腎に多く認められた。血中では,血球成分に移行し,血小板内の存在も確認された。2.血小板に対するMATSの作用は,アラキドン酸代謝系について確認したところ,専らアラキドン酸からプロスタグランジンが生成されるところが阻害されることが確認された。この代謝系に関る諸酵素について,それぞれ活性測定系を確立して検討したところ,cyclooxygenaseとlipoxygenaseの両酵素活性が阻害されることが明かとなった。MATSがこれらの酵素分子とどのようにinteractするかは不明であるが,恐らく酸化反応にMATSの硫黄原子が何らかの影響を及ぼし反応を阻害する結果になっているものと推察している。3.以上の成績に加えて,無臭ニンニクと呼称されている数種のネギ属植物の分類を,それらの成分分析を行うことで試行した。興味ある結果が得られているので,今後その成績をまとめ報告したい。
著者
有賀 豊彦 熊谷 日登美 吉川 雅清 川上 肇 関 泰一郎 櫻井 英敏 長谷川 功 衛藤 威臣 住吉 博道 恒吉 唯充 角 眞一郎 岩井 和夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.362-369, 2002-05-15
被引用文献数
4 16

天然無臭ニンニクといわれているネギ属植物について, 植物学的, 生化学的分析を行い, その種の同定を試みた.この植物は, 草丈, 鱗茎ともに通常のニンニクより大きく, 鱗片は花茎に密着して鱗茎を形成する大型のものと, 鱗茎の辺縁に付着する小型のものがあり, これらの数は20に及ぶ.花器はよく発達するが, ニンニクにみられる花序での珠芽形成はない.染色体は2n=32でリーキと同数であり, にんにくの2倍であった.そのDNAの制限断片長多型(RFLP)は, リーキに似ており, ニンニク, エレファントガーリックなどとは異なっていた.アイソザイム分析においてはリーキと最も似たパターンを示した.鱗茎細胞内でのアリイナーゼ(C-Sリアーゼ)mRNAの発現は, 他種に比べ少なかったが, 大きさは等しく, 1.9 kbであった.この植物のアリイナーゼのN末端25アミノ酸残基の配列はリーキのそれと一致し, ニンニクとは2残基相違した.以上の結果から, この植物は, リーキと極めて近縁の植物であり, Allium ampeloprasum L.の中に分類することができると考えられる.
著者
関 泰一郎 細野 崇 増澤・尾崎 依 三浦 徳
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

血栓症は、がんと並ぶわが国の死亡原因であり、動脈硬化を基盤として発症する。動脈硬化は、脂質の摂取量の増加により促進されるが、近年、腸内細菌の関与が注目されている。赤身肉、乳製品などに豊富に含まれているコリンは、腸内細菌により代謝され、生成したトリメチルアミンが肝臓のフラビンモノオキシゲナーゼ(FMO)によりトリメチルアミンNオキシド(TMAO)に変換される。TMAOは動脈硬化を促進する可能性が示唆されているが、その詳細は不明である。本研究では、TMAOの生成を抑制する機能性食品成分を探索し、またこれまでに解明されていないTMAOの血栓形成促進機構を明らかにする。