著者
吉本 麻美 千葉 哲也 松井 理絵子 渡邉 真巨 五十嵐 麻子 酒匂 啓輔 谷口 亜図夢 戸田 雄 菊池 佑至 松原 正明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0350, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】近年人工股関節置換術(以下THA)施行後の治療プログラムは、早期離床、早期荷重に移行している。当院では、2週間プログラムを施行し、術後2日目より歩行練習を開始し、歩行自立とともにADL動作の自立を目標に行ってきた。ところで荷重能力の改善は歩行自立にあたり重要な因子と考えられる。今回、荷重能力と股関節外転筋力、歩行能力、ADL動作の関係を検討した。【対象】2003年1月より2004年9月までに当院にてTHAを施行した88例(両側同時THAを除く)を対象とした。平均年齢は63歳、男性6例、女性79例であり、平均体重は55.6kgであり、全例、術後2日目より全荷重が許可された。【方法】術前および術後7日目の荷重能力と股関節外転筋力を測定し、術後の歩行能力、ADL能力を評価した。立位にて術側足底に体重計を設置し、体重に対する比として荷重能力を測定し、背臥位における股関節外転筋の等尺性収縮による最大筋力(Nm/kg)を外転筋力として測定した。T字杖連続歩行400m、階段昇降、床上動作、正座動作、靴下着脱動作については、その自立達成までの日数を各々記録した。なお、荷重能力80%を概ね荷重が可能となった時期と判断し、術後7日目に荷重能力が80%以上となった群(以下、可能群)と80%以下の群(以下、不十分群)に分け、比較検討した。【結果】外転筋力は、不十分群0.28Nm/kgに比し、可能群0.45Nm/kgと有意に可能群で高値を示した(p<0.01)。また、術前の非術側筋力ならびに術側筋力に対する回復率はそれぞれ不十分群35%、53%に比し、可能群71%、85%であり、いずれも可能群にて有意に高い回復を示した(p<0.05)。T字杖歩行は、可能群9.3日、不十分群14.2日、階段昇降は、可能群9.7日、不十分群13日、床上動作は、可能群12日、不十分群15.9日、正座は、可能群11.8日、不十分群15.3日であり、可能群で有意に動作獲得までの期間が短かった(p<0.05)。しかしながら、靴下着脱動作は、可能群9.7日、不十分群10.7日であり、両群間に有意差は見られなかった。【考察】可能群では不十分群に比し、股関節外転筋力の回復が有意に早く、T字杖歩行達成までの期間も有意に短かった。歩行自立と外転筋力の回復が、股関節の安定性をもたらした結果、早期に階段昇降、床上動作、正座動作も可能となり、ADL動作の早期自立が達成できたと考えられる。靴下着脱動作については、荷重能力とは無関係に11日以内に可能となり、2週間プログラムに影響は及ぼさなかった。当院では2週間プログラムを施行してきたが、術後7日目で荷重能力が80%以上可能であれば、T字杖歩行とADL動作の自立が2週間プログラム内でほぼ達成できた。このことから、術後7日目での荷重能力は、T字杖歩行やADL動作自立が2週間以内に達成できる有効な指標の一つと考えられた。
著者
池谷 充弘 石塚 ちあき 安本 弥生 吉本 麻美 長澤 充城子 黒川 誠子 齋藤 薫 隆島 研吾
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.G-100_1-G-100_1, 2019

<p>【はじめに・目的】</p><p>前回調査では地域在住損傷者の歩行能力(10m歩行タイム〔快適/最速〕・6分間歩行距離・TUG)と生活空間の広がりの関係性について調べ、生活空間が「自宅から800m以内の群」と「800m以上の群」では歩行能力に有意差が見られたが、「800m以上16km以内の群」と「16km以上の群」では有意差は見られず、歩行能力だけでは両群を区別できないという結果となった。今回調査では歩行能力評価とともに認知機能を加えて移動能力にどのような影響を与えるのか比較検討した。</p><p>【方法】</p><p>2010.5~2018.5に当施設の自立訓練事業を利用した106名。平均年齢49.5歳、発症からの期間35.7ヶ月、主な疾患名は脳出血(47%)・脳梗塞(24%)・くも膜下出血(13%)、麻痺の部位は右片麻痺(49%)・左片麻痺(27%)、四肢麻痺(14%)・麻痺なし(10%)、下肢Br-stageはⅢ(36%)・Ⅳ(17%)・Ⅴ(30%)・Ⅵ(7%)、使用している主な歩行補助具はT字杖(51%)・なし(32%)・四点杖(9%)、下肢装具はなし(43%)・SHB(33%)・SLB(18%)。認知検査ではWAIS-Ⅲを可能な範囲で実施しクラス分類ごとに平均値を算出した。外出実態状況から利用者の移動能力を小林らが作成した『実用的歩行能力分類(改訂版)』を用いて各クラスに分類した。(class2「平地・監視歩行」:11名、class3「屋内・平地自立」:23名、class4「屋外・近距離自立」:13名、class5「公共交通機関限定自立」:19名、class6「公共交通機関自立」:40名)各クラスごとに歩行能力とWAIS-Ⅲの平均値を比較した。統計処理は一元配置分散分析および多重比較を行った。</p><p>【結果】</p><p>10m歩行タイム〔最速〕とTUGで屋内歩行自立群(class2・class3)と屋外歩行自立以上の群(class4・class5・class6)で有意差あり(p<0.01)。6分間歩行距離で屋内歩行自立群(class2・class3)と公共交通機関利用群(class5・class6)で有意差あり(p<0.01)。歩行能力とWAIS-Ⅲのいずれの項目でも公共交通機関利用限定自立(class5)と自立(class6)で有意差はみられなかった。</p><p>【結論】</p><p>10m歩行タイム、6分間歩行距離、TUGによる歩行能力評価は、前回調査結果と同様に歩行自立が屋内レベルか屋外レベルに広がるかの判断材料になる可能性が示唆された。しかし歩行能力評価やWAIS-Ⅲ(平均値)の今回選択した指標についても公共交通機関利用の自立を見極めるには有効でなかった。今後は、class5とclass6の差を生じさせる因子について、各症例の状況を分析することにより、歩行能力評価や認知機能検査や環境なども含めて探っていきたい。また、生活範囲が大きく異なる、公共交通機関が利用できる群(class5と6)と屋外近距離自立に留まる群(class4)の差の要因についても検討をしていきたい。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>当施設の臨時倫理委員会にて承認を得た。</p>