著者
中釜 英里佳 吉村 匠平
出版者
一般社団法人 日本看護学教育学会
雑誌
日本看護学教育学会誌 (ISSN:09167536)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3-2, pp.103-114, 2023 (Released:2023-03-17)
参考文献数
26

〔目的〕ディプロマ・ポリシー(DP)及び教養教育カリキュラムに着目し、看護系大学における教養教育の違いを検討した。〔方法〕大学設置基準大綱化以前設立の2学部以上ある(以下、前複)10大学と大綱化以後設立の単科(以下、後単)13大学のDP及び教養教育科目の内容を分析し検討した。〔結果〕DP内で前複大学が多かった語は、『解決』、『多様』、『情報』、後単大学が多かった語は、『看護』、『身につける』、『地域』、『態度』だった。教養教育科目の内容は、前複大学が『情報』科目や「外国語」科目で選択の機会が保証されており、後単大学は「英語」科目において専門教育の教養教育への侵入性が高かった。〔考察〕前複大学では、言語能力や情報活用能力など学習の基盤となる資質・能力育成のための科目を含む教養教育カリキュラムが編成されていた。一方後単大学では、教養教育を専門教育である看護学の学習の基礎として位置づけている傾向が見られた。
著者
吉村 匠平
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.85-93, 2000-03-30
被引用文献数
1

本研究は, 「かくこと」が, 文脈抜きでは捉えられない外部との相互交渉活動であり, 従来の文章産出研究のような「考えていることを言葉に置き換える作業(堀田, 1993)」としては捉えられない活動であることを, 幾何の問題解決場面を取り上げながら検討した。実際Iでは, 24人の大学生が幾何の問題を解く様子を録画した。その結果「かくこと」が, (1)解法を模索して行われる探索的な図へのかきこみと答案の作成, (2)身体運動的側面の活性化と所産の活用の2つの次元から構成される活動であることが示された。実験IIでは, 図へのかき込みと答案の作成に3通りの制限(身体運動を制限, 痕跡の利用を制限, 両方とも制限)を加え, それによって問題解決過程にどのような変化が見られるかを検討した。その結果, (1)答案の作成への制限は問題の解決には影響しない。(2)探索的な図へのかき込みへの制限では, 身体運動と痕跡の利用の両方を同時制限された条件でのみ問題解決の進展が停滞する。(3)身体運動, 痕跡の利用のいづれか一方を制限された条件では, 問題解決の過程を変化させることで問題を解くことが示された。さらに, 問題解決の過程の変容を分析し, 「かくこと」が対話の相手を擬似的に現前させつつ, 対話を展開し, それによって外部との相互交渉を展開していく活動であることが示された。