著者
佐藤 琴美 竹内 朋子
出版者
一般社団法人 日本看護学教育学会
雑誌
日本看護学教育学会誌 (ISSN:09167536)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1-1, pp.1-13, 2023 (Released:2023-04-28)
参考文献数
18

〔目的〕臨床看護師が看護系大学教員のキャリアを志向してこなかった理由と、看護系大学教員のキャリアを志向するようになった理由を明らかにする。〔方法〕看護系大学教員17名を対象に半構造化面接調査を行い、質的記述的に分析を行った。〔結果〕臨床看護師が看護系大学教員のキャリアを志向してこなかった理由として、【臨床看護師であり続けることへのこだわり】、【職業としての曖昧な認知】、【資質に欠けるという自己認識】、【否定的な職業イメージ】の4カテゴリーが抽出された。また、看護系大学教員のキャリアを志向するようになった理由として、【臨床看護師以外への視野の拡大】、【職業としての明確な認知】、【資質への自信】、【魅力的な職業イメージ】の4カテゴリーが抽出された。〔考察〕本研究の対象者は、学習経験やタイミング等が相互に影響し合い、様々な転機を経て看護系大学教員のキャリアを志向するようになっていた。
著者
冨安 眞理 川越 博美
出版者
一般社団法人 日本看護学教育学会
雑誌
日本看護学教育学会誌 (ISSN:09167536)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.39-50, 2005-11-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
27
被引用文献数
2

本研究は、病院から在宅へ移行した新人訪問看護師が看護実践への自信を深める要因を探索することを目的とした因子探索型質的研究である。病院での臨床経験を経て訪問看護の経験が2年以内である看護師7名を対象として、半構成的面接調査を実施した。収集されたデータについて質的記述分析を行った結果、次のことが明らかになった。 【療養者とパートナー関係を結ぶ】【ひとりで訪問する】【医療から生活へ看護の軸を移す】【他職種とともに療養生活を支える】を課題として、新人訪問看護師は段階的に取り組んでいた。また、新人訪問看護師が課題に取り組むプロセスにおいて、【先輩看護師からサポートを受ける】【チームメンバーからサポートを受ける】【療養者・家族とつながる】【成長の糧をみつける】といった看護実践への自信を深める要因が、自信に影響を与えていた。これらの結果から、新人教育プログラムおよび新人訪問看護師へのサポート体制について示唆が得られた。
著者
和田 惠美子
出版者
一般社団法人 日本看護学教育学会
雑誌
日本看護学教育学会誌 (ISSN:09167536)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.17-30, 2021-11-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
19

〔目的〕基礎看護の演習や実習で、男子学生が困難に直面した場面と、その困難の乗り越えのプロセスを明らかにし、教員の望ましい教育的アプローチへの示唆を得ることである。〔方法〕平成27年8月~平成28年3月に、2年生の男子学生10名に半構造的インタビューを実施し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)により分析した。〔結果〕男子学生の困難は、【教員対応への不満】と【演習での苦い体験】、【実習における関係者との相互作用】であった。男子学生は困難を克服しようと【主体的な解決に向けた努力】をしていたが、困難を乗り切るためには【女子との交流による学びの向上】と教員や実習指導者の【成功への導きの指導】が必要であった。〔考察〕直接肌が触れる援助技術では、女性多数の中で少数の男子が戸惑うことへの配慮が必要である。男子のコーピングスキルは、先ず、独自の力で乗り切ろうとする傾向があることを教員が理解する必要がある。
著者
小山田 恭子 野崎 真奈美 中原 るり子
出版者
一般社団法人 日本看護学教育学会
雑誌
日本看護学教育学会誌 (ISSN:09167536)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2-2, pp.137-150, 2022 (Released:2022-10-31)
参考文献数
30

〔目的〕研究目的は看護系大学の新任助教の能力開発支援に特化したツールを作成し、メンタリングによる対話を基盤とした活用方法と共にその妥当性を検討することである。〔方法〕先行研究をもとにキャリア開発ラダーに基づくツール原案を作成し、学会で意見収集し修正した。その成果物の評価について7名の大学教員への面接を行い、データは質的に分析、統合した。本研究は所属大学の倫理審査委員会の承認を受け実施した。〔結果〕ツール原案に対して「能力開発支援が目的なら、ラダーよりもルーブリックが適している」等の意見が得られ、ツール原案は7カテゴリ38項目3段階の基準を持つ能力開発支援ルーブリックに修正された。内容と活用方法への賛同は得られたが、メンタリング導入には困難が予想された。〔結語〕作成した能力開発支援ツールは、新任助教の学習支援や役割移行に効果的であると考えるが、実装研究による検証と洗練が必要である。
著者
田中 広美
出版者
一般社団法人 日本看護学教育学会
雑誌
日本看護学教育学会誌 (ISSN:09167536)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.13-23, 2018-11-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
43

〔目的〕対人関係におけるセルフモニタリングの概念分析を行い、定義を明確にすることを目的とする。〔方法〕Rodgersら(2000)の概念分析の手法を参考に、先行要件、属性、帰結、関連概念、定義を検討し分析した。〔結果〕30論文を分析した結果、先行要件は社会的特性、自己の内的特性の2カテゴリ、属性は観察、状況の察知、状況に対する行動の選択とコントロールの3カテゴリ、帰結は状況を見極めた行動、自己の内面的変化の2カテゴリが導き出された。〔結論〕本概念は、対人関係における自身の状況を、意図的にモニターする際の視点として有用であり、経験として蓄積し、実践知へ移行させ、看護実践の向上が可能と考える。
著者
為永 義憲 篠崎 惠美子
出版者
一般社団法人 日本看護学教育学会
雑誌
日本看護学教育学会誌 (ISSN:09167536)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1-1, pp.15-26, 2023 (Released:2023-04-28)
参考文献数
27

〔目的〕看護学生の訪問看護ステーションへの就職意向と訪問看護実習での経験との関連を明らかにする。〔方法〕看護系大学4年生387名に、webアンケートによる無記名自記式質問紙調査を行った。単純集計後、訪問看護ステーションへの就職意向と基本属性、訪問看護実習での経験との関連をみた。〔結果〕102名を有効回答(26.4%)とした。訪問看護ステーションで将来働きたい者は29.4%で、卒後すぐに働きたい者はいなかった。訪問看護に関心がある者は57.8%で、実習時期は4年次(62.7%)が最も多かった。訪問看護ステーションへの就職意向は、訪問看護に関する関心、実習時期、実習の満足度、訪問看護師の学生のことを知ろうとする関わりと関連がみられた。〔考察〕看護学生の訪問看護ステーションへの就職意向には、訪問看護実習での経験が重要と示唆された。訪問看護ステーションへの就職を検討するには、インターンシップや新卒訪問看護師に関する情報提供と、就職活動以前に訪問看護実習を経験することが重要と考えられた。
著者
中釜 英里佳 吉村 匠平
出版者
一般社団法人 日本看護学教育学会
雑誌
日本看護学教育学会誌 (ISSN:09167536)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3-2, pp.103-114, 2023 (Released:2023-03-17)
参考文献数
26

〔目的〕ディプロマ・ポリシー(DP)及び教養教育カリキュラムに着目し、看護系大学における教養教育の違いを検討した。〔方法〕大学設置基準大綱化以前設立の2学部以上ある(以下、前複)10大学と大綱化以後設立の単科(以下、後単)13大学のDP及び教養教育科目の内容を分析し検討した。〔結果〕DP内で前複大学が多かった語は、『解決』、『多様』、『情報』、後単大学が多かった語は、『看護』、『身につける』、『地域』、『態度』だった。教養教育科目の内容は、前複大学が『情報』科目や「外国語」科目で選択の機会が保証されており、後単大学は「英語」科目において専門教育の教養教育への侵入性が高かった。〔考察〕前複大学では、言語能力や情報活用能力など学習の基盤となる資質・能力育成のための科目を含む教養教育カリキュラムが編成されていた。一方後単大学では、教養教育を専門教育である看護学の学習の基礎として位置づけている傾向が見られた。
著者
冨田 亮三 細田 泰子 紙野 雪香
出版者
一般社団法人 日本看護学教育学会
雑誌
日本看護学教育学会誌 (ISSN:09167536)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.13-24, 2016-03-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
40
被引用文献数
2

〔目的〕初期キャリア形成期の看護師におけるピア・コーチングの相互関係の構造を明らかにする。〔方法〕卒後3年目の看護師17名に同期入職の看護師におけるピア・コーチングの経験について半構成的面接を行い、修正版 Grounded Theory Approachで分析を行った。〔結果〕初期キャリア形成期の看護師は対等な立場にある同期を精神的な支えとし、苦楽をともにすることで仲間意識が強まり、〈同期の存在をエネルギーにする〉ことで《互いが無くてはならない存在となる》。さらに、同期との関わりを通じて〈互恵的にさらなる可能性を探る〉ことで〈同期を介してケアを再構成する〉ようになり、《互いの体験やものの見方を実践で統合し成長の糧とする》。〔考察〕初期キャリア形成期の看護師は、同期と一緒に試行錯誤することで関係性が深まり、互いに多くの学びを得ることができる。そのため、同期と協働する場を設定することの重要性が示唆された。
著者
大西 奈保子 田中 樹
出版者
一般社団法人 日本看護学教育学会
雑誌
日本看護学教育学会誌 (ISSN:09167536)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.23-34, 2022-03-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
19

〔目的〕臨地実習で終末期の患者を受け持った看護学生の成長に関連した体験を明らかにすることを目的とした。〔方法〕成人看護学実習で終末期の患者を受け持った学生10名に終末期の患者・家族にどのようにかかわり、その時の学生の考えや思いを中心に話してもらい、その内容を質的帰納的方法で分析した。〔結果〕終末期の患者を受け持った学生の成長に関連した体験には、心理的にも患者のそばに行こうとする【患者・家族とのかかわり】によって【自己を見つめる】ことにつながるかかわりがある一方で、患者を避けるようなかかわりがある。そして、前者を強め、後者から抜け出せるような【一歩踏み出すきっかけ】が明らかとなった。〔考察〕臨地実習において、終末期の患者を受け持つ学生の不安を軽減し、心理的にも患者・家族のそばに行くかかわりができるようになるための支援が必要である。