著者
吉村 彰大 松野 泰也
出版者
日本LCA学会
雑誌
日本LCA学会誌 (ISSN:18802761)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.54-69, 2019 (Released:2019-01-25)
参考文献数
47
被引用文献数
1 1

鉄道は環境負荷の小さい交通機関であり、低炭素社会の構築に重要でありながら、近年は赤字路線の廃止と他輸送機関への代替が続いている。近年、費用便益分析が鉄道存廃の判断基準に用いられているが、鉄道の廃止に伴う周辺道路への影響や交通権の保障などの観点から、費用便益分析のみを判断基準とするのは好ましくない。そのため本研究では、鉄道路線の廃止が並行道路に与える影響の評価と、それに伴う経済的 / 環境的負担の比較、検討を通じて、路線が持つ社会的な存在意義の評価に新たな切り口を提供することを目的とした。具体的には、鉄道の存廃による並行道路の混雑変化への影響と、CO2排出量変化を評価した。さらに、路線の赤字と廃止によって必要となる道路改良費を比較した。対象は、既に廃止された2路線と、経営安定性の低い13路線とした。その結果、廃止された2路線では、利用者の80%が自動車利用に転換しても道路混雑は悪化しないと推計され、実際の道路状況とよく一致した。現存する13路線では、7路線が廃止によって並行道路の混雑を悪化させると予測され、うち6路線では大幅な悪化が予想された。この6路線では、鉄道の赤字額が周辺道路の道路改良費を下回ったことから、路線の維持がより合理的であることが示唆された。CO2排出量では、利用者数の最も少ない阿佐海岸鉄道を除いて鉄道の運行によって軽減できていると推計された。この結果から、鉄道の運行によってCO2排出量を削減するためには、一定以上の利用が必要であるという既存研究と同様の結果が確認された一方、排出量の削減効果と経営安定性との相関は、混雑変化と経営安定性に比べ弱いことが示唆された。本研究を通じ、並行道路の混雑変化と財政負担、CO2排出量変化を個々に比較、検討することが、地方鉄道の社会的な存在意義を評価する新たな切り口となることが示唆された。
著者
吉村 彰大 松野 泰也
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.23-29, 2019-01-01 (Released:2018-12-25)
参考文献数
42
被引用文献数
11 10

In this paper, a novel method for recovering platinum using molten FeCl3-KCl system as “dry aqua regia” is presented. The method consists of the dissolution of platinum by molten FeCl3-KCl system and the recovery of dissolved platinum by the solvent leaching of frozen FeCl3-KCl, using the different solubility between platinum compounds and iron compounds for the solvents. Platinum dissolution was conducted in the molten FeCl3-KCl system at 585-655 K. The maximum dissolution rate of platinum was 0.45 mol・m−2・h−1, which is fast enough compared with the hydrometallurgy process using aqua regia or electrochemical dissolution process in ionic liquid. And dissolved platinum recovered as K2(PtCl6) by the solvent leaching of frozen FeCl3-KCl using water or ethanol. This “dry aqua regia” process have a number of advantages, including low energy consumption, easy operation and low toxicity of chemicals compared with pyrometallurgy process and hydrometallurgy process, as recycling process of platinum.
著者
吉村 彰大 末益 航洋 松野 泰也
出版者
日本LCA学会
雑誌
日本LCA学会誌 (ISSN:18802761)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.29-39, 2020 (Released:2020-01-25)
参考文献数
38

近年、航空機エンジンの性能や燃費向上にニッケル基超合金が用いられ、高温クリープ特性向上にレニウムが添加される。しかし、天然資源に乏しいことから供給は不安定である。本研究では、航空機用途のレニウムについて、物質フロー分析を通じて 1980 年から 2017 年にかけての需要、ストック、およびリサイクルポテンシャルを推計した。その結果、1980 年以降航空機の新造向けのレニウム需要、およびストックは増加を続けており、最大値はそれぞれ2016 年の 49.9 t、および 2017 年の 708 t と推計された。一方メンテナンス向けの需要は整備周期に依存し、4 年周期、 6 年周期、8 年周期とした場合、それぞれの最大値は 2017 年の 29.8 t、18.3 t、および 12.2 t となった。また、退役機に由来するリサイクルポテンシャルの最大値は 2015 年の 15.3 t と推計された。2013 年以降、航空機向けのレニウム需要が一次地金の生産量とほぼ同量となったことから、需給バランスは退役機からのスクラップのリサイクルで維持されていると示唆された。ただし、将来的に退役機数、および退役に起因するスクラップ発生量の減少が予想されたことから、安定的な供給にはスクラップからのリサイクル率の向上が重要であることが示唆された。