著者
上田 哲史 吉永 哲哉 川上 博 陳 関栄
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.1141-1147, 2000-10-25
参考文献数
10
被引用文献数
5

自律系にみられるリミットサイクルにおいて,パラメータの変化により特性乗数が複素単位円を横切る場合,Neimark-Sacker分岐を生じる.本論文ではこの分岐パラメータ値を求める新しい計算方法を提案する.固定点条件,Poincaré断面条件に加えて,共役複素数の特性乗数を代入した特性方程式を実部と虚部に分離し,それぞれを独立した条件として採用する.これら条件式を連立させ,ニュートン法により解く.新たな独立変数として,共役複素な特性乗数の偏角を用いた.ニュートン法のヤコビ行列の各要素は,複素数演算,数値微分を用いることなく,変分方程式の解と行列操作によって求めることができるため,ニュートン法の収束性もよい.例として8次元自律系のリミットサイクルのNeimark-Sacker分岐の計算結果をあげる.
著者
藤原 澄人 稲葉 直彦 関川 宗久 藤本 憲市 吉永 哲哉 遠藤 哲郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.487, pp.77-80, 2013-03-07

本研究では,delayed logistic写像の結合系を解析し,2-トーラスと3-トーラスの境界について調べた.2-トーラスと3-トーラスの境界については,リミットサイクルの2度のネイマルクサッカー分岐によって生じるという仮説があった.その仮説は多くの研究者を惑わせるシナリオであったに違いない.しかしながら,1世代前の計算機の計算機速度ではそのシナリオの可否を十分に検証することは難しかった.本研究では,3-トーラスを発生するdelayed logistic写像の結合系をリアプノフ解析することにより,その仮説が成り立たないことを明らかにする.
著者
関屋 大雄 吉永 哲哉 茂呂 征一郎 森 真作 笹瀬 巖
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.42-52, 2001-01-01
被引用文献数
2

近年, 4個の3次元カオス発振器をキャパシタで完全結合した系に生じる同期現象について詳しく調べられ, van der Pol発振器の結合系では生じない2組の逆相同期が90度の位相差にロックする4相同期が生じることが報告されている.しかし, 恒等な発振器の結合系において, 2組の逆相同期がロックする条件についての理論的考察はされていない.本論文では, 奇関数で表される非線形特性をもつ4個の恒等な発振器の結合系について, 独立逆相同期が発生するための必要十分条件を与える.与えた条件を満足しない系には, 独立逆相同期が生じず2組の逆相同期がロックする周期解が生じる.よって, van der Pol発振器の結合系では生じない2組の逆相同期がロックする現象の存在が理論的に明らかとなる.具体的な結合系として, 3次元発振器をキャパシタで完全結合した系に対して計算機実験を行う.そして, 独立逆相同期の発生に関する必要十分条件の妥当性を示す.各発振器が直流成分をもって振動し, かつ結合に関する変数の応答が直流成分をもち, 更に逆相の関係にある発振器が等しい直流成分をもって振動するとき, 独立逆相同期の発生条件の一つである系の対称性が崩れるため独立逆相同期は生じない.このとき, 4相同期, 及び2組の逆相同期が0度でロックする交互逆相同期が発生することを確認する.特に安定な交互逆相同期の発生は本論文ではじめて確認される現象である.
著者
関川 宗久 稲葉 直彦 吉永 哲哉 川上 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.213-222, 2003-03-01
参考文献数
19

本論文では,強制レイリー方程式の分数調波引込領域の分岐の構造を系の対称性と関連づけて解析する.系の対称性により,状態空間上において原点について対称な形状をしたアトラクタが発生する場合と,原点について非対称な形状をした二つのアトラクタが互いに原点対称な位置に発生する場合の2種類の分数調波周期解の引込領域が存在する.それらの分岐集合のパラメータ平面上での形状を調べたところ,前者と後者の分数調波引込領域は基本調波周明解のネイマルク・サッカー分岐曲線の近傍で異なった構造をもっていることが明らかになった.