著者
深山 貴文 ⾼梨 聡 北村 兼三 松本 ⼀穂 Yamanoi Katsumi 溝⼝ 康⼦ 安田 幸⽣ 森下 智陽 Noguchi Hironori 岡野 通明 ⼩南 裕志 吉藤 奈津⼦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>森林の地球温暖化防止機能には炭素固定機能の他、森林が放出する揮発性有機化合物がエアロゾルを生成し地球を冷却する機能がある。森林起源の揮発性有機化合物の主要成分は、イソプレン(C5H8)とモノテルペン(C10H16)であり、主にイソプレンは広葉樹林、モノテルペンは針葉樹林から気温の上昇に伴って揮発性が高まる夏に集中的に放出されることが知られている。一方、世界各地の様々な植生の森林において夏に限らず低温の時期に、これらの濃度上昇が観測された事例が報告されている。本研究では日本国内の6か所の森林において概ね月1回の頻度で3年間にわたって観測されたデータを用いて、国内においても低温期に同様の濃度上昇現象が発生しているのかを確認すると共に、この現象が発生した際の気象要因についての検討を行った。その結果、20℃未満の低温期に20回の高濃度現象が発生していたことが確認された。また、その多くがイソプレンは春、モノテルペンは秋の降雨後に発生していたことから、この現象の発生に降雨が影響している可能性が示唆された。</p>
著者
深山 貴文 高梨 聡 北村 兼三 松本 一穂 山野井 克己 溝口 康子 安田 幸生 森下 智陽 野口 宏典 岡野 通明 小南 裕志 吉藤 奈津子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>フィトンチッドとも呼ばれる森の香り物質は、主にゴム様の香りのイソプレン(C<sub>5</sub>H<sub>8</sub>、以下ISO)と、樹脂香のα-ピネンに代表される複数のモノテルペン(C<sub>10</sub>H<sub>16</sub>、以下MT)からなる。ISOは主に広葉樹、MTは針葉樹の葉から大量に放出され、その量は人為起源の揮発性化合物より多いため、地球のオゾンやエアロゾルの原因物質として非常に重要であるが観測例は少ない。本研究では、2015年12月から2018年12月までの3年間、森林総合研究所(KHW、YMS、FJY、API、SAP)と琉球大学(OKI)の全国6林分の微気象観測タワーサイトにおいて230回、日中の森林大気中のISOとMT(主要8種の合計)の採取を実施し、濃度の季節変動特性と気温-濃度関係の評価を行った。ISOはコナラ-アカマツ林のYMS、MTはスギ-ヒノキ林のKHWで最大値が観測され、主要樹種が放出源となっていると考えられた。全サイトで最高気温が観測された8月のMT濃度は高かったが、亜熱帯のOKIは8月、暖温帯のYMSとKHWは5~6月、冷温帯のFJY、API、SAPは7月にピークが観測された。この違いは、亜熱帯のOKI以外ではMTが冬季に葉内に蓄積され、北方ほど放出開始直後の高放出の時期が遅れて生じている可能性が考えられた。</p>
著者
深山 貴文 森下 智陽 奥村 智憲 宮下 俊一郎 高梨 聡 吉藤 奈津子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.59-64, 2016-04-01 (Released:2016-06-14)
参考文献数
17
被引用文献数
2

森林土壌のテルペン類の放出特性に関する研究は少なく,特に空間分布特性の評価が必要とされている。本研究はアカマツ林床が放出するテルペン類の主成分であるα-ピネンについて,その放出量を測定するための土壌チャンバーを開発し,空間分布特性と変動要因について検討した。野外観測の結果,樹幹からの距離とα-ピネン土壌放出量の関係性は方位の違い,個体差に関わらず認められなかった。アカマツのリター堆積量とA0層上の放出量の間には関係性が認められなかったが,リター堆積量とリター除去後に測定したA層上の放出量との間には春秋共に正の相関が認められた。室内実験で十分にリターを撹拌した場合,リター量とリターの放出量の間には線形的な関係が認められた。アカマツ林床では特に春に高い放出量が観測されるが,これはA0層上に存在する樹脂成分が放出量の不均一性をもたらすと共にその高い放出の原因となっている可能性が考えられた。