著者
小野田 雄介 中嶋 聖徳 板東 玲青 小南 裕志
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

大きな森林では、隣り合う樹木のは完全に独立し、「樹冠の譲り合い」(Crown shyness)と呼ばれる隙間をもつ。「譲り合い」という優しい響きとは裏腹に、この樹冠の隙間は、強風時の樹冠の衝突によって形成されると考えられる。しかし、樹冠の隙間を研究した例は少なく、天然の森林で、樹種や樹木の形状にどう依存しているのかはわかっていなかった。そこで本研究では、以下の課題に取り組んだ。(1) 風によって、樹木がどのくらいたわむのか?(2) UAVを使用した樹冠の隙間を定量方法の確立、(3)樹冠の隙間が樹種や樹高、幹太さにどの程度依存するのか?
著者
深山 貴文 ⾼梨 聡 北村 兼三 松本 ⼀穂 Yamanoi Katsumi 溝⼝ 康⼦ 安田 幸⽣ 森下 智陽 Noguchi Hironori 岡野 通明 ⼩南 裕志 吉藤 奈津⼦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>森林の地球温暖化防止機能には炭素固定機能の他、森林が放出する揮発性有機化合物がエアロゾルを生成し地球を冷却する機能がある。森林起源の揮発性有機化合物の主要成分は、イソプレン(C5H8)とモノテルペン(C10H16)であり、主にイソプレンは広葉樹林、モノテルペンは針葉樹林から気温の上昇に伴って揮発性が高まる夏に集中的に放出されることが知られている。一方、世界各地の様々な植生の森林において夏に限らず低温の時期に、これらの濃度上昇が観測された事例が報告されている。本研究では日本国内の6か所の森林において概ね月1回の頻度で3年間にわたって観測されたデータを用いて、国内においても低温期に同様の濃度上昇現象が発生しているのかを確認すると共に、この現象が発生した際の気象要因についての検討を行った。その結果、20℃未満の低温期に20回の高濃度現象が発生していたことが確認された。また、その多くがイソプレンは春、モノテルペンは秋の降雨後に発生していたことから、この現象の発生に降雨が影響している可能性が示唆された。</p>
著者
奥村 智憲 谷 晃 小杉 緑子 高梨 聡 深山 貴文 小南 裕志 東野 達
出版者
The Society of Eco-Engineering
雑誌
Eco-engineering = 生態工学 (ISSN:13470485)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.89-95, 2008-04-30

Biogenic volatile organic compounds (BVOCs) emitted by plants play an important role in the atmospheric chemistry of the troposphere. We conducted f ield measurements of monoterpene emissions from leaves of <I>Chamaecyparis obtusa</I>, which is one of the major tree species in Japan. Diurnal and seasonal variations of monoterpene emissions from <I>C. obtusa</I> were measured at the Kiryu Experimental Watershed (KEW) at 34°58′ N, 135°59′ E in Shiga Prefecture, central Japan. In August and October 2006 and in January and April 2007, the monoterpene emission rate (<I>E</I>), together with the leaf temperature, was measured using branch enclosure methods for a branch of two trees. The obtained data sets revealed that <I>E</I> highly correlated with leaf temperature throughout the seasons. The basal emission rate (<I>E<SUB>S</SUB></I>) under the standard conditions of 30°C, calculated using a widely used emission algorithm, ranged from 0.088 and 4.126 μg g<SUP>-1</SUP> h<SUP>-1</SUP>. The estimated <I>E</I> values were consistent with the measured <I>E</I> values within a root-mean-square (RMS) error of 0.005-0.525 μg g<SUP>-1</SUP> h<SUP>-1</SUP>, suggesting that the emission model can be used to determine the monoterpene emission responses of <I>C. obtusa</I> to temperature. However, the <I>E<SUB>S</SUB></I> values were significantly different between the trees and also different between seasons, indicating that a representative <I>E<SUB>S</SUB></I> value must be obtained from more data sets using more branches and trees.
著者
深山 貴文 高梨 聡 北村 兼三 松本 一穂 山野井 克己 溝口 康子 安田 幸生 森下 智陽 野口 宏典 岡野 通明 小南 裕志 吉藤 奈津子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>フィトンチッドとも呼ばれる森の香り物質は、主にゴム様の香りのイソプレン(C<sub>5</sub>H<sub>8</sub>、以下ISO)と、樹脂香のα-ピネンに代表される複数のモノテルペン(C<sub>10</sub>H<sub>16</sub>、以下MT)からなる。ISOは主に広葉樹、MTは針葉樹の葉から大量に放出され、その量は人為起源の揮発性化合物より多いため、地球のオゾンやエアロゾルの原因物質として非常に重要であるが観測例は少ない。本研究では、2015年12月から2018年12月までの3年間、森林総合研究所(KHW、YMS、FJY、API、SAP)と琉球大学(OKI)の全国6林分の微気象観測タワーサイトにおいて230回、日中の森林大気中のISOとMT(主要8種の合計)の採取を実施し、濃度の季節変動特性と気温-濃度関係の評価を行った。ISOはコナラ-アカマツ林のYMS、MTはスギ-ヒノキ林のKHWで最大値が観測され、主要樹種が放出源となっていると考えられた。全サイトで最高気温が観測された8月のMT濃度は高かったが、亜熱帯のOKIは8月、暖温帯のYMSとKHWは5~6月、冷温帯のFJY、API、SAPは7月にピークが観測された。この違いは、亜熱帯のOKI以外ではMTが冬季に葉内に蓄積され、北方ほど放出開始直後の高放出の時期が遅れて生じている可能性が考えられた。</p>
著者
後藤義明 玉井幸治 深山貴文 小南裕志
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.193-201, 2005-06-01 (Released:2008-05-22)
参考文献数
37
被引用文献数
4 5

山火事の延焼速度予測モデルとして最も一般的に使用されているRothermelモデルと,山火事の物理的強度の指標であるByramの火線強度を,日本の森林の可燃物に適用して,日本で発生する山火事の強度を推定した。火線強度推定のために必要な,可燃物の燃焼特性を示すパラメータ値の相対的な重要度を調べたところ,表面積一体積比以外のパラメータは,可燃物の種類を問わず固定値を用いても問題はないものと考えられた。火線強度は樹林地よりも草原で大きく,斜面の傾斜や風速の影響を強く受けた。日本で発生する山火事の火線強度を推定したところ,林床にコシダが密生するアカマツ林を除いて,いずれも850kWm-1以下とアメリカやカナダの森林で報告されている地表火の火線強度の範囲内(10~15,000kWm-1)にあった。しかし,コシダが密生するアカマツ林の火線強度は20,000kWm-1以上に達していたと推定された。この値は,繰り返し起こる山火事によって維持されていると考えられているフィンボスやチャパラルなど,地中海性気候下の植生での火線強度に匹敵するものであった。
著者
後藤 義明 玉井 幸治 深山 貴文 小南 裕志
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.193-201, 2005-06-01
参考文献数
37
被引用文献数
5

山火事の延焼速度予測モデルとして最も一般的に使用されているRothermelモデルと,山火事の物理的強度の指標であるByramの火線強度を,日本の森林の可燃物に適用して,日本で発生する山火事の強度を推定した。火線強度推定のために必要な,可燃物の燃焼特性を示すパラメータ値の相対的な重要度を調べたところ,表面積-体積比以外のパラメータは,可燃物の種類を問わず固定値を用いても問題はないものと考えられた。火線強度は樹林地よりも草原で大きく,斜面の傾斜や風速の影響を強く受けた。日本で発生する山火事の火線強度を推定したところ,林床にコシダが密生するアカマツ林を除いて,いずれも850kW m^<-1>以下とアメリカやカナダの森林で報告されている地表火の火線強度の範囲内(10〜15,000kW m^<-1>)にあった。しかし,コシダが密生するアカマツ林の火線強度は20,000kW m^<-1>以上に達していたと推定された。この値は,繰り返し起こる山火事によって維持されていると考えられているフィンボスやチャパラルなど,地中海性気候下の植生での火線強度に匹敵するものであった。
著者
安宅 未央子 小南 裕志 深山 貴文 吉村 謙一 上村 真由子 谷 誠
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.388, 2014 (Released:2014-07-16)

日本の森林で一般的な複雑地形の林床面では、落葉が不均一に分布し、その結果として分解呼吸や土壌呼吸の空間変動の要因となると考えられる。落葉堆積量の空間分布は、有機物量の違いによって呼吸量を変動させるだけでなく、水分に代表される環境因子を変化させることによって分解呼吸量に影響を与えるため、堆積量-環境因子関係を考慮に入れた堆積量-分解呼吸量の変動特性を調べる必要がある。本研究では、京都府・山城試験地(1.7ha)を190プロット(10×10m)に分け、落葉堆積量の測定(プロット毎にN=12)を年に3回(2,6,10月)行った。これと落葉量を変えて連続観測した分解呼吸と落葉層内含水比の結果から、落葉堆積量の空間分布が分解呼吸の時空間変動特性に与える影響の評価を行った2,6,10月の落葉堆積量はそれぞれ0.2~6.6、0.3~5.5、0.2~2.9tC/haで、流域内の空間変異が非常に高いことを示した。呼吸観測からは、堆積量によって異なる落葉層内の含水比鉛直分布が、分解呼吸の時間変動に強く影響を与えることを示した。本発表ではこれらをふまえて、複雑地形における落葉堆積量の空間分布が群落全体の有機物分解過程に与える影響の評価を試みる。
著者
安宅 未央子 小南 裕志 吉村 謙一 深山 貴文 谷 誠
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

日本の森林に多くみられる斜面林では、林床面に供給される有機物(主に落葉)の不均質な分布によって、落葉分解呼吸量は空間的に変異する。さらに、温帯林においては、落葉層含水比のダイナミックな変動に従って、落葉分解呼吸速度は時間変動する。本研究は、複雑地形が特徴的な山城試験地(京都府)において3つのスケール(①プロット・②トランセクトライン・③流域スケール)を対象に、落葉量の空間的・時間的な変動が落葉分解呼吸速度・量に与える影響を定量化した。 まず、①では、320cm<sup>2</sup>区画での落葉の含水比と分解呼吸速度の連続測定によって、落葉量がこれらの変動特性に与える影響を評価した。次に、②では、1斜面37地点(1m毎)で毎月測定された落葉量とそれを基に推定した落葉分解呼吸量の空間分布と季節変動を評価した。さらに、③複雑地形の試験地流域全体へと拡張し、流域全体(1.7ha)での落葉堆積量の観測を行うことによって、落葉分解呼吸量の代表値を推定した。以上より、落葉分解呼吸は、落葉の量とその含水比の不均質な分布を通じて、土壌呼吸の時間的・空間的な変動の重要な制御因子になることを明らかにした。
著者
檀浦 正子 小南 裕志 高橋 けんし 植松 千代美 高梨 聡
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

環境変動予測のためには、陸域炭素循環において大きな役割をもつ森林の炭素循環解析およびモデルの確立が必要である。そこで、炭素同位体パルスラベリングをアカマツ、コナラ、ミズナラ、マテバシイに適用し樹木内の炭素移動速度および樹木内滞留時間の樹種間比較を行った。アカマツにおける移動速度は広葉樹と比較して遅く、樹木内滞留時間には季節変動がみられ特に冬季は顕著に遅くなった。ミズナラ・マテバシイについては大きな違いは見られなかった。コナラの葉に固定された炭素は4日程度でそのほとんどが幹へと移動した。しかしラベリングから長期間経過後も13Cが残存し、同化産物によって滞留時間が異なることが示唆された。
著者
東野 達 山本 浩平 南齋 規介 小南 裕志
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

化学輸送モデルを用いた人為起源二次粒子生成量の評価には、人為起源のみならず植物起源VOC発生量の正確な推定が必要であるが、東アジアにおける実測例は極めて少ない。前年度はコナラ個葉のイソプレン放出速度を計測したが、森林全体からの放出量推定精度を検証するため、簡易渦集積(REA)法を用いてコナラ群落からのイソプレン放出フラックスを夏〜冬に実測した。その結果、イソプレンの放出は気温と日射量に相関があり、紅葉により葉が黄色に変色するとイソプレン放出がなくなること、盛夏時のイソプレンフラックスはアマゾンの実測値を凌ぐことが初めて明らかとなった。一方、個葉の実測値とモデル式に基づく積み上げ法による森林全体のイソプレン推定放出量と、REA法による正味のイソプレンフラックスとの間には約1〜3割の差があり、イソプレンの森林内での分解や再吸収について観測する必要性が分かった。これらのデータはわが国で初めて得られた成果である。大気化学輸送モデルを用いて、わが国三地域への二次汚染物質沈着量の寄与度を日中韓の4部門について評価した。その結果、夏・冬に中国、建築・製造部門からの硫酸塩の寄与が大きいことが示された。二次粒子影響ポテンシャルによる経済部門の相互依存性解明の前段として、日本、中国などのアジア諸国と米国を含む10ヶ国のアジア国際産業連関表をもとに、各国の76経済部門におけるエネルギー消費量を各種統計データから推計し、さらにCO_2排出量に変換して部門別内包型原単位を求めた。対象10ヶ国の内包CO_2排出量のうち中国、米国が突出しているが、米国は他国への誘発量が最も多く、逆に中国は他国への誘発量は少なく他国からの誘発量が最大であることが明らかとなった。また、日本の最終需要による海外誘発量は、電力部門が最大で次いで輸送部門であることが分かった。
著者
上村 真由子 小南 裕志 金澤 洋一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.138-144, 2005-04-01
被引用文献数
4

枯死木分解呼吸の環境要因への反応特性を調べるために, 呼吸量を自動測定するシステムを開発し, コナラの枯死木呼吸量を2年間連続測定した。日単位の呼吸量は, 枯死木表面付近の温度変化に伴い明瞭な日変化を示した。また, 降雨による含水率の上昇に伴い呼吸量は急激に減少し, 降雨後に徐々に増加する傾向がみられた。呼吸量の季節変動は, 温度に対して指数関数的な関係があり, 冬期と夏期の呼吸量の差は約8倍であった。同じ温度下における呼吸量のばらつきは主に材の含水率の変化によるものであると考えられ, 一降雨から次の降雨までの含水率の変化に対して呼吸量は平均約1.5倍程度の変化をみせた。温度を変数とした指数関数と含水率を変数とした2次式を乗じた関数を用いて日平均呼吸量の推定を行ったところ, 呼吸量のばらつきの85%を説明することができ, 温度変化に対する呼吸量の季節変化や, 含水率の変化に対する呼吸量の短期的な増減の再現が可能であった。このように, 枯死木の呼吸量は温度と含水率の時系列変化に伴い, 変化幅が約8倍の季節変化と, 変化幅が約1.5倍の含水率の変化に伴う短期的な変化と, 日変化によって複合的に構成されていることが明らかになった。
著者
後藤 義明 金子 真司 池田 武文 深山 貴文 玉井 幸治 小南 裕志 古澤 仁美
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.327-336, 2004-11-16
参考文献数
36

人工的に調整した海水をクヌギ林に散布して,空中消火による海水の散布が森林に及ぼす影響を調査した。海水散布後の樹冠通過雨の導電率(EC)およびNa^+,Cl^-濃度は急激に上昇したが,降雨とともに低下し,2カ月後には平常の状態に回復した。土壌抽出水のECは海水散布の1週間後にピークに達し,その後は徐々に低下していった。土壌抽出水のECが最も高かった1週間後であっても土壌に残留する塩分は植物に障害を与えることはないであろうと判断された。海水散布の2日後には葉に褐変が現れ,11日後にはほとんどの葉に壊死が生じた。木部圧ポテンシャルの測定から,この褐変は葉が水ストレス状態になったことによる萎凋ではなく,海水による葉への直接的な影響によるものと考えられた。海水散布後の5カ月間は落葉量が増加したが,それ以降は海水散布の影響は現れなかった。胸高直径および樹高成長,堅果生産量にも海水散布の影響は現れなかった。今回の実験により,海水16mm(16Lm^<-2>,散布時間約10分)程度の散布量であれば,クヌギの生育に大きな影響を及ぼすことはないと判断された。