著者
名生 貴昭 松井 智紀 榎堀 優 西尾 信彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.5, pp.1267-1278, 2013-05-01

スマートフォンなどに搭載されたセンサの観測値を収集・蓄積し,解析する研究がなされている.我々は,この一連の活動をいわゆるライフログになぞらえてライフログセンシングと呼んでいる.本論文は,蓄積されたその観測値を効率的に解析するためのフレームワークであるDwarfstarを提案する.我々は30か月間にわたってライフログを蓄積してきた経験から,(1)センサごとの観測周期の違いをアプリケーション側で吸収する手間と,(2)分散環境において時系列性を維持しつつ断続的に観測値の増分を処理することを課題とした.本論文では,それぞれの課題について(1)ウィンドウスキャンと呼ぶスキャン操作の拡張と,(2)分割インクリメンタル処理と呼ぶ処理モデルとその分散環境における処理系によって解決した.HBase上に実装したプロトタイプを用いた実験から,ウィンドウスキャンその他の拡張による性能低下が15%程度であり,分割インクリメンタル処理は単一ホストでのみ処理する手法に比べて平均4.1倍高速であることを確かめた.更に,サンプルアプリケーションを用いた開発実験では,開発工数を約三分の一に削減でき,Dwarfstarの有効性を確認した.