著者
大原 荘司 向井 厚志 藤原 昇
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.460-467, 2015-08-20 (Released:2015-12-29)
参考文献数
14

宮城県石巻市から福島県飯舘村を中心に33点のコケを採取しCs-137残留放射能の分析を行い,福島第一原発事故に伴うCs-137の放射能拡散状況を把握することを目的とした研究を行った.地形条件と拡散放射能の残留状況との関係も結果的に明らかになることも目指した.コケの高い放射能吸着性とカーペット状に地表を覆う特性に注目し,単位面積当たりのCs-137残留放射能量を求めた.コケは土壌に比べて種類による放射能吸着性の差が小さいと考えられ,汚染マップを求めるにはコケの分析が適していると判断した.測定には,主としてNa(ITl)シンチレーション検出器を用いた.文部科学省報告の積算線量推定マップと傾向はよく一致して風向き,標高などの条件で飯舘村がホットスポットとなっていることがコケの分析でも明らかになった.また,同じコケサンプルを用いCs-134とCs-137のガンマ線ピークを分離できるCdZnTe 半導体検出器による測定でCs-134/Cs-137のガンマ線強度比の地域差を求めたが顕著な差は認められなかった.
著者
向井 厚志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00152, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
7

福山港泊地において約2か月間の潮位観測を実施し,潮位変化に及ぼす局地気象学的な影響を調査した.福山港泊地は,瀬戸内海沿岸から内陸部に向けて約8.5km入り込んだ細長い水路である.この泊地では,局地気象学的な影響として,気圧変化に伴う吸い上げ効果の他,泊地奥方向の東風による吹き寄せ効果が観測された.台風接近時のような極端な気象条件の場合,これらの効果によって1mを超える海面上昇が生じる可能性がある.また,泊地では常時,周期42分程度の副振動が現れており,2021年9月の台風接近時には副振動によって約0.4mの海面上昇が生じた.これらのことから,満潮時に台風が接近する際には吸い上げ効果と吹き寄せ効果に加え,副振動による海面上昇が加わることで,平均海水面より潮位が3m以上上昇する可能性がある.