著者
大原 荘司 向井 厚志 藤原 昇
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.460-467, 2015-08-20 (Released:2015-12-29)
参考文献数
14

宮城県石巻市から福島県飯舘村を中心に33点のコケを採取しCs-137残留放射能の分析を行い,福島第一原発事故に伴うCs-137の放射能拡散状況を把握することを目的とした研究を行った.地形条件と拡散放射能の残留状況との関係も結果的に明らかになることも目指した.コケの高い放射能吸着性とカーペット状に地表を覆う特性に注目し,単位面積当たりのCs-137残留放射能量を求めた.コケは土壌に比べて種類による放射能吸着性の差が小さいと考えられ,汚染マップを求めるにはコケの分析が適していると判断した.測定には,主としてNa(ITl)シンチレーション検出器を用いた.文部科学省報告の積算線量推定マップと傾向はよく一致して風向き,標高などの条件で飯舘村がホットスポットとなっていることがコケの分析でも明らかになった.また,同じコケサンプルを用いCs-134とCs-137のガンマ線ピークを分離できるCdZnTe 半導体検出器による測定でCs-134/Cs-137のガンマ線強度比の地域差を求めたが顕著な差は認められなかった.
著者
馮 文和 趙 佳 藤原 昇
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.107-112, 1997-09
参考文献数
9

本研究では, ジャイアントパンダの年齢と精液生産との関係, 電気刺激によって採取された精液の一般性状ならびに新鮮精子と凍結保存精子の体外における生存性などについて比較検討した。ジャイアントパンダは大体5〜25歳までが繁殖可能な年齢で, この期間内にあるものを実験に供した。精液は電気刺激によって採取した。採精後直ちに精液性状を検査した。ついで精液の一部を7%グルコース液で希釈して4℃で保存した。一方, 凍結精液については, 約2%のグリセロールを含む緩衝液で希釈した後, ドライアイスを用いたペレット法で凍結し, 液体窒素中(-196℃)で保存した。ジャイアントパンダの精巣の発達は年齢15歳くらいで最高となり, その後徐々に衰退することが確認され, 精液量も8〜14歳が最高であった。一方, 電気刺激によって採精した精液の量および精子濃度に繁殖季節による差異がみられた。また, 精液量と奇形精子数との間にも関連性が認められ, 精液量が少ない場合には無精子のものも観察された。つぎに, 精液のpHについてみると, 6.4〜7.2の範囲を外れると体外保存した精子の生存性が著しく低下する現象がみられた。さらに, 体外における精子の生存性をみると, 射出直後の精子を0〜4℃で保存すると, 約130時間(約5日)生存したが, 受精可能な運動性(30%以上)を保持するには60時間が限度であった。一方, 凍結・融解精子を37℃で保存した場合, 30%以上の運動性を保持するのは90分間程度であったが, 全ての精子が運動性を停止したのは約6時間後であった。
著者
藤原 昇
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.916-920, 2007 (Released:2011-01-18)
著者
馮 文和 趙 佳 藤原 昇
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.135-142, 1996
参考文献数
10

ジャイアントパンダの自然における棲息状態をみると, 中国本土においてすら自然環境が徐々にではあるが破壊され, 棲息分布範囲が狭められており, それにともなって個体数も少しずつ減少していく傾向には変わりはない。また, 現在, 中国では14の自然保護区と17の自然棲息地帯, 例えば, 秦嶺山脈や臥龍山脈などがあるが, これらの場所あるいは地域へ人間の侵入を完全に禁止することができれば, 野生パンダの絶滅を少しは遅らせることができるのではないかと思われる。一方, 世界各国に出ているパンダについても, 例えば, 動物園, 研究所およびその他の施設で飼育されているものについては, 人工繁殖などが盛んに実施されており, 成果は上がっているようである。しかし, パンダの繁殖あるいは保育に関する研究は, まだ緒についたばかりで, これからの研究課題である。これまでのところ, 人工繁殖によって得られた子パンダを人工的に保育する技術が確立されておらず, 成獣になる割合は極めて低い現状である。これが今後の問題でもあり, 十分に研究して, その対策を検討することが必要である。したがって, これからは以前にも増して, パンダに関する国際的規模での研究を発展させていく必要があろう。
著者
鈴木 達行 音井 威重 藤原 昇
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

-20Cで3ヶ月間凍結保存後、融解した牛胎児細胞からドナー核を作り出した。セルラインの7回から12回継代培養したものを本研究のドナー核として用いた。これらのドナー核にオワンクラゲ蛍光遺伝子、EGFPジーンフラグメントをリポゾームの媒介により牛胎児細胞内へ取り込んだ。牛胎児細胞は遺伝子導入前に4〜5日間飢餓状態に置くため、牛血清添加量を抑えた0.5%血清加DMEM培地内で順化させた。一方、除核卵子を準備するため、食肉処理場で得られた卵丘付き卵母細胞を修正卵管液で成熟培養し、20〜22時間後に5ug/mlサイトカラシンB+0.3%BSA加修正SOF液内で除核し、ドナー核を挿入して電気融合装置BTX2001によりDCパルス1kv/cm, 50マイクロ秒にてチマーマン液内で融合した。その後修正SOF液内で8日間培養し、発生した胚盤胞、拡張・脱出した胚盤胞への遺伝子導入成果を確認した。その結果、胚全体に遺伝子が導入されたものは11例(3.5%)で、このうち胚盤胞は1例(1.0%)に過ぎなかった。遺伝子導入例の大部分がモザイク状で26例(8.4%)にみられた。遺伝子導入核構築胚の一部は開発した陰圧式炭酸ガス培養器で培養しながら、日本(福岡)から中国(チンタオ)空港を経て、中国莱陽農業大学で準備した5頭の受胚牛へ移植実験を試みた。その結果、3頭が妊娠し、1頭は移植後60日後に流産、2頭が分娩した。これらの分娩牛からの遺伝子導入成功の有無については未だ確認されていない。