- 著者
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向井 大介
近藤 乃梨子
杉万 俊夫
- 出版者
- 公益財団法人 集団力学研究所
- 雑誌
- 集団力学 (ISSN:21872872)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, pp.66-240, 2017-12-28 (Released:2017-09-13)
- 参考文献数
- 22
本研究は、過疎化や高齢化が進行する2 つの地域における地域活性化活動の事例を題材にして、これまで見過ごされてきた地域活性化活動の潜在的な側面を再検討し、より有意義な地域活性化活動の在り方や情報発信の方法を提示しようとするものである。本論文では、参与観察を行って収集した情報を、筆者や活動参加者の人物像を明記したうえで、活動参加者でもあった筆者の当該時点における率直な感想をも記述する「新しいスタイルのエスノグラフィ」を試みた。 <br> 本研究を通じて明らかになったのは、次の4 点である。第1 に、地域活性化活動を数値的に評価する場合、「数値的な成果を高めるもの」として認識されることが多いが、地域活性化活動に参加する個人の視点に立つならば、それは、「幸福を追求するための営み」の一形式にほかならず、地域活性化活動は、あくまでも、その文脈で評価されることが重要であることを指摘した。 第2 に、地域活性化活動における最大の価値は、活動それ自体に「かけがえのなさ」を共同構成するプロセスにあることを主張した。また、そのプロセスにおいて、行為そのものが規範贈与の性質を有することが示唆された。第3 に、地域活性化活動が拡大・発展するための潜在的かつ重要な要因として、「規範贈与の整流化」とも言うべき現象が必要であることが明らかになった。第4 に、上述の「新しいスタイルのエスノグラフィ」は、読者がよりリアルな追体験をすることを可能にすると同時に、インターローカルな協同的実践を喚起し、活動を継続するための内省にも役立つ素材となることが見出された。 <br> 最後に、以上の結果を踏まえたうえで、新しい地域活性化活動の在り方、新しい地域活性化活動支援の在り方、外部の人の扱い方を提示した。