著者
宮下 盛 田中 祐志 澤田 好史 村田 修 服部 亘宏 滝井 健二 向井 良夫 熊井 英水
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.199-207, 2000-06-20 (Released:2010-10-28)
参考文献数
33

クロマグロの卵発生を観察するとともに,発生速度,孵化所要時間および孵化率に及ぼす水温の影響を調べた。水温24℃における卵発生を観察した結果,卵は平均直径0.973±0.025mm(n=60)の分離浮性卵で,産卵直後から卵割期にいたる形状および各発生段階は一般硬骨魚と大差なく,産卵32時間後から孵化した。次に水温22℃から28℃の範囲に4区の水温区を設け,発生速度に及ぼす水温の影響を調べたところ,各発生段階への到達時間は水温が高いほど速く,高温区と低温区の各発生段階への到達の時間差は水温26.5℃以上で小さく,24℃以下で大きかった。16~33℃にわたる種,々の水温下で孵化所要時間と孵化率を調べた。孵化所要時間を対数として水温との関係を直線回帰して表したところ,25℃付近に直線の傾きの変曲点が認められた。桑実期から実験を開始して正常孵化仔魚が得られた水温範囲は19.9~31.5℃,50%以上の正常孵化率を示した水温範囲は21.2~29.8℃であった。また,最も正常孵化率が高く奇形率が低かった水温は25℃付近であった。これらの結果から,クロマグロの卵発生に最適な水温は25℃付近と考えられた。