著者
石原 秀平 清 明広 楠田 理一 三柴 徹 中本 光則 村田 修 熊井 英水
出版者
水産増殖談話会
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.79-88, 2020 (Released:2020-12-22)

わが国において唯一,動物用医薬品として製造承認を得ている魚類および甲殻類の麻酔剤であるオイゲノール製剤の「FA100」を用い,近年普及しているワクチンの注射を想定して,マダイ,ブリ,カンパチ,シマアジ,イシダイおよびイシガキダイ稚魚を対象魚とし,「FA100」の麻酔効果と魚に対する安全性について検討した。その結果,供試した魚種や魚体重は異なるが,供試魚の安全性およびワクチン注射の作業時間などを考慮して100~200ppmの希釈が適正な麻酔濃度であることが分かった。ただし,カンパチで100gを超える場合には,麻酔から回復することなく死亡する供試魚が多くなる傾向が認められたことなどから,ワクチン注射の場合には,実際の作業現場にて,本研究を参考にし,事前に最適な麻酔濃度,麻酔時間を設定して行う必要がある。
著者
村田 修 宮下 盛 那須 敏朗 熊井 英水
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.145-151, 1995-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12

マダイの卵にクロダイ精子を媒精して作出した交雑魚 (マクロダイと呼ぶことにする) の養殖品種としての特性を明らかにする目的で, その成長, 生残率, 外部形態, 環境ストレス耐性などについてマダイおよびクロダイ両種と比較した。(1) 媒精した浮上卵の受精率はクロダイ>マダイ>マクロダイの川頁, 孵化率はマダイ>クロダイ・マクロダイの順であった。(2) 孵化後30日目までの生残率はマダイ>マクロダイ>クロダイの順であったが, その後71日目から140日目までのそれはマクロダイおよびクロダイの方がマダイよりも著しく高くなった。(3) 成長は孵化後約8ヶ月目まではマクロダイ>マダイ>クロダイの順であったが, 満1年目からはマダイの方がマクロダイよりも徐々に大きくなり, 満3年目におけるマクロダイの成長はマダイよりは遅いがクロダイよりは早く両親の中間となった。(4) 環境ストレス耐性では, 水温上昇および低下, 比重低下, 並びに溶存酸素低下に対してマクロダイはいずれもクロダイよりも弱かったが, マダイよりも著しく強かった。(5) 外部形態や体色などからマクロダイはクロダイに近く父系遺伝が強いことが示唆された。
著者
村田 修 家戸 敬太郎 那須 敏朗 宮下 盛 和泉 健一 熊井 英水
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.677-678, 2000-12-20 (Released:2010-10-28)
参考文献数
6
被引用文献数
1

Chemical compositions of the dorsal muscle of hybrids, yellowtail, Seriola quinqueradiata _??_ × goldstriped amberjack S. aureovittata _??_ (termed as YG) and purplish amberjack S.dumerili_??_ × goldstriped amberjack _??_(termed as PG) were compared with each parents fish species. The lipid content of YG was remarkably higher than that of goldstriped amberjack. In collagen content concerning texture, though YG was lower than goldstriped amberjack, it was significantly higher than yellowtail. Crude protein, total extractive nitrogen and collagen content of PG showed the intermediate value of the parents fish species.
著者
藤田 譲 堀 徹 井上 清 村田 修二 摩嶋 禎規
出版者
The Japan Society of Naval Architects and Ocean Engineers
雑誌
日本造船学会論文集 (ISSN:05148499)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.165, pp.215-224, 1989 (Released:2009-09-16)
参考文献数
9

Wooden ships up to around 55 m in length have been so far designed and built with hulls of double skin planking which consists of each single layer of longitudinal planking and diagonal planking crossing with an angle of 45°. Based on successful operation of these ships, large-scaled wooden ships of around 70 m are recently under consideration adopting hulls of triple skin planking. The triple skin planking consists of the outer skin of a single layer of longitudinal planking and the inner skin of double layers of diagonal planking wihch cross the longitudinal planks with angles (θ) of ±45°.Experiments and theoretical investigation as listed in the followings have been made in order to establish design formulae for the longitudinal bending and shear strength of hulls of the triple skin planking : (1) Simplified formulae are induced for calculating the rigidities and the stresses of the triple skin planking, and the practical methods are shown on the longitudinal and shear strength of hulls.(2) The results of the structural loading tests of the box-shaped ship model sizing 6.54 × 0.9 × 1.04 m are compared with the structural analyses by the three-dimensional (3D) truss model. The structural members of the test model are in 1/2 scale of those of a prototype ship except the overall dimensions.(3) The results of the same kind of 3D truss analyses made for the whole hull of the prototype ship are compared with the calculations by simplified formulae.It is concluded as follows : ·The 3D truss model reasonably represents the behaviour of the triple skin planking.The simplified calculation methods can be applied to actual ship design.·The effectiveness of the diagonal planking on the longitudinal bending strenth is 25 % theoretically when θ= ±45°, and a practical value of 20 % is proposed.·The inner skin of two layers of diagonal planking predominantly carries shear forces. The axial stresses of diagonal planks are simply obtained by doubling the shear stresses when θ= ±45°.·Longitudinal members such as gunwale, chine and keel contribute to the shear strength of a hull by their sectional areas multiplied by a factor of 4G/E theoretically when the rotations of the sections are restrained by neighbouring members. The actual degree of contribution is subject to further investigation.
著者
宮下 盛 村田 修 澤田 好史 岡田 貴彦 久保 喜計 石谷 大 瀬岡 学 熊井 英水
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.475-488, 2000-09-20 (Released:2010-10-28)
参考文献数
42
被引用文献数
2

1987年に採捕したクロマグロ幼魚を親魚まで養成し,成熟年齢と想定した満5歳以降,生殖腺体指数(GSI)の周年変動を調べるとともに,毎年6~8月にかけて自然産卵を観察し,産卵条件を検討した。また,産卵盛期における産卵時刻直前の生殖腺の性状を調べるとともに,卵および精子の構造を電子顕微鏡を用いて観察した。GSIは雌雄とも7月を中心に最大となる傾向を示した。産卵時刻直前の雌個体は,体重21.3kgと小型ながら熟卵を有し,卵巣内の卵径組成は0.8mm以上の卵を約25%含む多峰型を示し,産卵多回性を認めた。自然産卵は満7歳以降,延べ4年にわたり認められた。串本での産卵期は,6月中旬から8月中旬の約2カ月間と推定された。産卵が認められた水温範囲は21.6~29.2℃であり,50%正常孵化率で示す孵化限界水温範囲に対応した。本種の精子は,全長約35μmで,頭部,中片部および尾部から構成され,硬骨魚類の一般的な形態を示した。卵の動物極と思われる位置には直径5μmの卵門が観察され,卵膜表面全体に多数のpit(小孔)が認められた。
著者
村田 修 家戸 敬太郎 石谷 大 那須 敏朗 宮下 盛 山本 眞司 熊井 英水
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.75-80, 1997-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
15

1990年3月に作出した交雑魚マダイ♀×クロダイ♂およびマダイ♀×ヘダイ♂を4年間飼育した後, 2月から6月までの生殖腺成熟の様相を, 同様に4年間飼育した両親魚種 (マダイ, クロダイおよびヘダイ) と比較した。その結果, 両交雑魚から摘出した生殖腺は外観的に同時期の両親魚種のそれらに比較して明らかに未成熟であった。両親魚種の生殖腺指数はいずれも4月に最大値となり, その平均値はいずれも8以上の高い値であったのに対し, 両交雑魚のそれは1以下であった。生殖腺組織像から両交雑魚とも精原細胞, 精母細胞, 精細胞および精子形成は観察できたが卵母細胞は認められなかった。以上より, 両交雑魚は雌雄ともに生殖不能すなわち雑種不妊であることが明らかにされた。
著者
村田 修 板倉 壮太 山本 眞司 服部 亘宏 倉田 道雄 太田 博巳 升間 主計
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.93-95, 2017-03-20 (Released:2018-03-20)
参考文献数
11

In order to breed a faster-growing grouper, the longtooth grouper, Epinephelus bruneus (LG), was hybridized with the giant grouper, E. lanceolatus (GG). Eggs from a female LG that was injected with HCG were inseminated by the fresh sperm of LG and cryopreserved sperm of GG obtained from a fish in Malaysia. Normal hatching rate was 8.8% (LGGG) and 18.6% (LG), respectively. The LGGG and LG larvae were raised for 61 days after hatching; the survival and mean size were 17.5, 42.0% and 63.6±11.3, 36.2±8.7 mm, respectively. This new hybrid grouper would be a promising-breed for aquaculture.
著者
村田 修
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学水産研究所報告 (ISSN:09117628)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-101, 1998-03-31
被引用文献数
6

養殖魚における品種改良の歴史は栽培植物および家畜のそれに比べまだ著しく短い。しかし, 水産養殖業の将来の一層の進展を計るためには, 養殖魚の品種改良によって, 成長, 外観, 肉質, 環境ストレスおよび病気に対する耐性など経済的特質の向上を期待する必要がある。このような観点から, 本研究では海水養殖対象魚として重要な数種の魚類について, 選抜育種, 交雑育種, 導入育種および倍数体育種による品種改良を行い, 作出した魚類の特性を調べそれらの養殖効果について検討した。I.農畜産物および養殖魚における品種改良の意義と歴史について述べた。II.天然マダイよりも成長の早い養殖用マダイ種苗を生産することを目的として, 選抜育種によるマダイの品種改良を試みた。すなわち1964年前後に天然幼魚を飼いつけて親魚になるまで育て, それから仔魚を得て育成し, 成長の速いものを選んで親魚とする選抜法を25年以上に亘って繰り返した。その結果, (1)選抜世代回数を重ねる毎にその4歳親魚の平均体重は増加し, 1世代目では2,000gであったものが, 6および7世代目では5,009gになった。(2)選抜マダイ種苗の成長も世代を重ねる毎に明らかに速くなり, 商品サイズの1kgに達するまでの平均日数が約320日も短縮された。(3)各世代4歳親魚の平均体重と各世代の成長曲線より求めた実現遺伝率は0.33±0.28であった。さらに, 長期間に亘り選抜育種されたマダイ種苗についてアイソザイムを遺伝標識とする集団解析を行った。その結果, 本実験に用いたマダイ種苗では, その長年に亘る継代交配にも関わらず, ホモ接合体過剰すなわち近親交配の影響は認められなかった。しかし, 1遺伝子座当たりの平均対立遺伝子数および多型的遺伝子座率の減退より, 集団としての遺伝子保有量は天然魚に比べ著しく減少していることが示唆された。このことは, 優良形質の獲得と固定化をめざす選抜育種の観点からすれば, 本学のマダイ種苗が選択育種系として遺伝的に均質化されているとみなすことができる。III.海水養殖魚類の生産効率を高めるための手段の一つとして交雑による品種改良を試みた。1.マダイ♀×クロダイ♂(以下, マクロダイと呼ぶ), マダイ♀×ヘダイ♂(以下, マヘダイと呼ぶ), イシダイ♀×イシガキダイ♂(以下, キンダイと呼ぶ), ブリ♀×ヒラマサ♂(以下, ブリヒラと呼ぶ)およびカンパチ♀×ヒラマサ♂(以下, カンヒラと呼ぶ)の特性を明らかにする目的で, これらの交雑魚の成長, 生残率, 外部形態および環境ストレス耐性などをそれぞれの親魚種と比較した。その結果, (1)マクロダイおよびマヘダイの成長は孵化後8〜10ヶ月目まではそれぞれの両親魚種よりも速かったが, 約3ヶ年目になるとマダイと他の親魚種との中間となった。(2)マクロダイの環境ストレス耐性はクロダイよりも弱いがマダイよりも著しく強がった。(3)マヘダイでは海水比重低下耐性だけがヘダイよりも弱くマダイよりも強かった。(4)外部形態や体色などから, マクロダイはクロダイに, マヘダイはヘダイに近く, いずれも父系遺伝が強いことが示唆された。(5)キンダイは, イシダイよりも速く商品サイズにまで成長した。またその生残率は両親魚種イシダイおよびイシガキダイよりも高かった。さらにキンダイの外部形態はイシダイよりもイシガキダイに近いことが分かった。(6)ブリヒラとヒラマサを比較した場合, ブリヒラの方が成長が良く, 約1年6ヶ月間養成後の平均体重はヒラマサの約2倍であった。飼料効率でもブリヒラはヒラマサ, ブリに優った。またブリヒラの高水温ストレス耐性はヒラマサとブリの中間であった。(7)カンヒラはカンパチおよびヒラマサよりも飼料効率が高く, 増肉係数は6.2となり, またその高水温および低水温に対する耐性も両親魚種より高かった。これよりカンヒラは今後の養殖対象魚として注目される。2.前節に記した各種交雑魚における産卵期の生殖腺成熟の様相を調べ, 次の結果を得た。(1)マクロダイおよびマヘダイは雌雄ともに生殖不能すなわち雑種不妊であった。(2)キンダイの雌はすべて正常に成熟し, かつ雌の割合が90%以上を占めた。一方, 雄のそれは6%にすぎないにもかかわらず, その成熟状態から生殖能力をもった正常な雄が存在することが分かった。(3)ブリヒラおよびカンヒラの成熟は親魚種のカンパチおよびヒラマサよりも容易に進むことが分かった。3.交雑魚の遺伝生化学的, 細胞遺伝学的分析を試みた。すなわち, 次の3種の交雑魚マクロダイ, マヘダイおよびキンダイのアイソザイムおよび染色体分析を行いそれぞれの両親魚種との比較を行った。その結果, (1)各交雑魚の染色体は両親魚種の半数染色体の和で構成された二倍体雑種であることが確認された。(2)イシダイとイシガキダイとの間の遺伝的距離が, マダイとクロダイおよびマダイとヘダイとのそれらよりも比較的近い位置にあることが示唆された。このような違いは, マクロ
著者
村田 修 宮下 盛 那須 敏朗 熊井 英水
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.145-151, 1995

マダイの卵にクロダイ精子を媒精して作出した交雑魚 (マクロダイと呼ぶことにする) の養殖品種としての特性を明らかにする目的で, その成長, 生残率, 外部形態, 環境ストレス耐性などについてマダイおよびクロダイ両種と比較した。<BR>(1) 媒精した浮上卵の受精率はクロダイ>マダイ>マクロダイの川頁, 孵化率はマダイ>クロダイ・マクロダイの順であった。<BR>(2) 孵化後30日目までの生残率はマダイ>マクロダイ>クロダイの順であったが, その後71日目から140日目までのそれはマクロダイおよびクロダイの方がマダイよりも著しく高くなった。<BR>(3) 成長は孵化後約8ヶ月目まではマクロダイ>マダイ>クロダイの順であったが, 満1年目からはマダイの方がマクロダイよりも徐々に大きくなり, 満3年目におけるマクロダイの成長はマダイよりは遅いがクロダイよりは早く両親の中間となった。<BR>(4) 環境ストレス耐性では, 水温上昇および低下, 比重低下, 並びに溶存酸素低下に対してマクロダイはいずれもクロダイよりも弱かったが, マダイよりも著しく強かった。<BR>(5) 外部形態や体色などからマクロダイはクロダイに近く父系遺伝が強いことが示唆された。
著者
宮下 盛 田中 祐志 澤田 好史 村田 修 服部 亘宏 滝井 健二 向井 良夫 熊井 英水
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.199-207, 2000-06-20 (Released:2010-10-28)
参考文献数
33

クロマグロの卵発生を観察するとともに,発生速度,孵化所要時間および孵化率に及ぼす水温の影響を調べた。水温24℃における卵発生を観察した結果,卵は平均直径0.973±0.025mm(n=60)の分離浮性卵で,産卵直後から卵割期にいたる形状および各発生段階は一般硬骨魚と大差なく,産卵32時間後から孵化した。次に水温22℃から28℃の範囲に4区の水温区を設け,発生速度に及ぼす水温の影響を調べたところ,各発生段階への到達時間は水温が高いほど速く,高温区と低温区の各発生段階への到達の時間差は水温26.5℃以上で小さく,24℃以下で大きかった。16~33℃にわたる種,々の水温下で孵化所要時間と孵化率を調べた。孵化所要時間を対数として水温との関係を直線回帰して表したところ,25℃付近に直線の傾きの変曲点が認められた。桑実期から実験を開始して正常孵化仔魚が得られた水温範囲は19.9~31.5℃,50%以上の正常孵化率を示した水温範囲は21.2~29.8℃であった。また,最も正常孵化率が高く奇形率が低かった水温は25℃付近であった。これらの結果から,クロマグロの卵発生に最適な水温は25℃付近と考えられた。