著者
向田 清峻 芳村 圭 キム ヒョンジュン 沖 大幹
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2014

文化の黎明期から人類は常に洪水に悩まされてきた、我が国日本もその例外ではない。本研究では、全球モデルを小さな領域スケールにおいて適用することによってスケールの違いをシームレスにつなぐ河川流路網のモデリングの枠組みを構築することを目的とする。またダウンスケーリングに従って全球モデルでは考慮されていなかった現実の断面形状を組み込み、水位・流量のモデル内での表現を現実に近づける。本研究に用いるCaMa-Floodという河川流路網モデルを開発したYamazaki(2011)の手法を基に日本域において1/12°格子の解像度で河川流路網を作成しシミュレーションを行った。計算は浅水回水路における一次元サンブナン方程式を採用し、キネマティック波に加え拡散波による水の流れを表現し、かつ拡散方程式では無視れさた局所慣性項を考慮して計算の安定性を確保すると同時に高速化を実現している。その中で高解像度にすることに応じて河道断面形状を考慮するために二つの点を導入した。一点目は利根川流域において国土交通省の水文水質データベースとGoogle Mapを用いて各グリッドに対して河道幅と河道深を一つ一つ手作業で入力した。二点目は矩形の単断面に仮定していた断面形状を2つの矩形を横に連結した形の複断面とし導入した。この二点の導入により現実の河道断面形状をモデルに反映させた。栗橋観測所での水位と流量を比較した結果、流量・水位の変動のトレンドを良く表現できた。また全球モデルのCaMa-Floodのシミュレーションでは河道幅、深さは各グリッドの上流流出量の関数によって推定していたが、その関数を本研究での利根川の実河道幅、深さで補正することで利根川流域における河川断面マップを作成した。利根川流域の検証により流量のトレンドが捉えられた。それを利用し河道幅、河道深を推定し全国の河川でシミュレーションを行い水位流量に関して一定の改善が見られた。これは全球における河道幅、深さのパラメタでは小さいスケールの河川を表現できなかったことに起因する。以上の結果から全球スケールでの再現性が確認されているモデルを用い、日本の河川の流域という領域スケールでの水位・流量の再現性を確認できた。実断面形状を考慮することで結果が向上したことにより、十分な地理的データのある場所で高解像度でのシミュレーションが行えることが分かった。