著者
沖 大幹 芳村 圭 キム ヒョンジュン ゴドク タン 瀬戸 心太 鼎 信次郎 沈 彦俊
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.61-61, 2007

地下水、土壌水分、積雪水量などの陸水貯留量の変化は陸域水収支の特に季節変化を考える際には非常に重要である。最新のデータに基づき3種類の独立の手法で推定された大河川の総陸水貯留量の季節変化を相互比較し、それらの間の対応を検討した結果を報告する。
著者
向田 清峻 芳村 圭 キム ヒョンジュン 沖 大幹
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2014

文化の黎明期から人類は常に洪水に悩まされてきた、我が国日本もその例外ではない。本研究では、全球モデルを小さな領域スケールにおいて適用することによってスケールの違いをシームレスにつなぐ河川流路網のモデリングの枠組みを構築することを目的とする。またダウンスケーリングに従って全球モデルでは考慮されていなかった現実の断面形状を組み込み、水位・流量のモデル内での表現を現実に近づける。本研究に用いるCaMa-Floodという河川流路網モデルを開発したYamazaki(2011)の手法を基に日本域において1/12°格子の解像度で河川流路網を作成しシミュレーションを行った。計算は浅水回水路における一次元サンブナン方程式を採用し、キネマティック波に加え拡散波による水の流れを表現し、かつ拡散方程式では無視れさた局所慣性項を考慮して計算の安定性を確保すると同時に高速化を実現している。その中で高解像度にすることに応じて河道断面形状を考慮するために二つの点を導入した。一点目は利根川流域において国土交通省の水文水質データベースとGoogle Mapを用いて各グリッドに対して河道幅と河道深を一つ一つ手作業で入力した。二点目は矩形の単断面に仮定していた断面形状を2つの矩形を横に連結した形の複断面とし導入した。この二点の導入により現実の河道断面形状をモデルに反映させた。栗橋観測所での水位と流量を比較した結果、流量・水位の変動のトレンドを良く表現できた。また全球モデルのCaMa-Floodのシミュレーションでは河道幅、深さは各グリッドの上流流出量の関数によって推定していたが、その関数を本研究での利根川の実河道幅、深さで補正することで利根川流域における河川断面マップを作成した。利根川流域の検証により流量のトレンドが捉えられた。それを利用し河道幅、河道深を推定し全国の河川でシミュレーションを行い水位流量に関して一定の改善が見られた。これは全球における河道幅、深さのパラメタでは小さいスケールの河川を表現できなかったことに起因する。以上の結果から全球スケールでの再現性が確認されているモデルを用い、日本の河川の流域という領域スケールでの水位・流量の再現性を確認できた。実断面形状を考慮することで結果が向上したことにより、十分な地理的データのある場所で高解像度でのシミュレーションが行えることが分かった。
著者
吉田 奈津妃 キム ヒョンジュン 沖 大幹
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2015

陸域水循環のモデリング研究において、大気と地表面の間のエネルギー交換(潜熱と顕熱)とそれに伴う水の相変化(蒸発散)は重要なプロセスである。これまで地球規模のエネルギー・水収支の算定をより現実的に行うため、地表面の情報を陸面モデルに取りこむ研究がなされてきた。しかし、地表面情報には異なる手法や元データの時空間的な不均一性等による不確実性が存在することが指摘されている。陸域水文研究においても、気候外力である降水データの持つ不確実性が河川流量に影響を与えることが明らかになっている。しかし、これまで地表面情報の不確実性が全球陸面水文モデルの推定値にどのような影響を与えるのかはほとんど明らかにされていない。そこで、本研究では地表面情報の不確実性が全球陸面モデルによる水収支に与える影響を明らかにすることを目的とする。地表面の情報については、植生被覆・土地被覆・土壌タイプを対象とし、現存するこれらのデータを複数収集し、陸面モデル入力データの整備をした。そして、陸域水文モデルMATSIROを用いたアンサンブルシミュレーションを行った。得られた水文量について、降水が蒸発散量と流出量に分かれる内訳や、蒸発散量の内訳(蒸散・遮断蒸発・土壌蒸発・植生からの昇華、土壌からの昇華)、流出量の内訳(表層流出、深層流出)について、全球やBudyko気候区分による地域ごとの比較を行った。その結果、まず地表面情報の不確実性については、LAIと土地被覆分類は、特に北半球の高緯度地域において不確実性が高いこと、土壌分類は全球的に不確実性が高いことが確かめられた。また、LAIと土地被覆分類の不確実性は、水収支へ与える影響は小さいものの、蒸発散量や流出量の内訳を大きく変えることがわかった。特に半湿潤地域と寒湿潤地域での流出量の内訳を変えることがわかった。土壌分類においては、水収支と蒸発散量の内訳へ与える影響は小さく、半湿潤地域と寒湿潤地域の流出量の内訳を変えることがわかった。本研究は、初めて地表面情報の不確実性が全球陸面モデルに与える影響を明らかにした研究であり、複数のデータセットを収集し、アンサンブルシミュレーションを行うことで不確実性の幅を明らかにした。この成果は、陸域水循環のモデリング研究において、推定値の確からしさを判定する際やモデルの改良点を見つける際に有益な情報となる。