著者
関口 瞳 長谷川 幸子 君崎 文代
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第59回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.176, 2010 (Released:2010-12-01)

はじめに 災害はいつどこで起こってもおかしくない。災害時、入院中の子供達の避難は勤務している看護師、医師に委ねられている。2010年2月から災害時の備えとして既成の小児一般病棟用の災害時避難シュミレーションを実施している。しかし、一般病棟に対してのシュミレーションが主であり小児集中治療室(以下PICU )を併設する当病棟において、PICUの避難が的確にできるか不安を感じた。また他のスタッフはPICUでの対応を理解しているのか、理解していなければ対応策を考えたいと思い、今回重症患児の避難方法について看護師に聞き取り調査を行った。 研究目的 PICUにおける災害時の避難方法について今後の課題を見出す。 研究期間:2010年2月~5月 対象:小児科病棟のPICUに勤務する看護師10名 データ収集法:聞き取り調査 災害時のPICUにおける避難に対する気持ち,優先順位,必要物品は何かを聞き取る。 倫理的配慮 聞き取り調査を実施の際、プライバシーの保護をし研究以外で使用しないことを保証した。 結果 以下の3項目の質問をした。_丸1_PICUでの避難に対する気持ちは4名が『人手が足りないことが困る』と、全員が『避難させる自信がない』と答えた。_丸2_優先順位は6名が『わからない』、4名が『人工呼吸器装着児は最後に』と答えた。しかし人工呼吸器装着児が複数いたら誰から避難させるかわからないと答えていた。_丸3_必要物品は全員が『アンビューバック』と答えた。複数回答で酸素ボンベや吸引器,救命セットなどあがってきた。 考察 スタッフもPICUの避難方法について自信がないことがわかった。また,スタッフの意見にもばらつきがあった。今後,話し合う機会を設け避難方法を統一していく必要がある。必要物品も明確にし,スタッフ間で確認しあう機会が必要である。
著者
渥美 利奈 梶山 由紀 君崎 文代
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.274, 2008 (Released:2009-02-04)

はじめに 当院の小児科病棟には、一般病棟の他に小児集中治療室(以下PICUとする)がある。面会時に家族と関わり情報提供を行っているが、面会に来る家族は何を望んでいるのか、家族にとって必要な情報を提供できているのか疑問に思い、本研究に取り組んだ。 _I_.研究目的 面会時家族が看護師に何を求めているか、再確認し家族支援につなげていく。 _II_.研究方法 1.研究期間:2007年7月~8月 2.対象:1)PICU入院中、またPICUより一般病棟へ転室となった子どもの家族8人 2)病棟看護師18人 3.データ収集方法:質問紙調査 看護師がどのような情報を提供しているか、家族が必要としている情報を知り、両者を比較する。 4.倫理的配慮:対象者には研究の趣旨と無記名である旨を説明し、承諾を得て実施した。 _III_.結果 回収率:看護師100% 家族72.7% 表1. 現在の面会について 表2. 情報提供内容について(複数回答) 表3. 現在のケア状況について _IV_.考察 病状説明については、看護師からの説明に家族はほぼ満足しているという事が分かった。木下は、「看護者が両親に子どもの様子を伝えること,いわゆる情報提供は,両親に安心感や子どもを知る手がかりを与える」1)と述べている。このことから、バイタルサインなど身体面を重視している看護師に対し家族は、身体面同様機嫌や睡眠といった精神面も重視しているのではないかと考えられる。そのため、今後身体面だけではなく、面会時間外の児の精神面に関する申し送りを充実させ、家族へ提供できるようにしていく必要があると考える。 また、ケアについてはアンケート結果より一緒に行うべきだと思っていることが分かった。しかし現状においては、看護師が「行っている」と思っているのに対し、家族は「行っているが日によって違う」「行っていない」と意見の違いが生じた。これは、PICUのケアを二人で行っているため、入院中の患児全員を同じようにケアに入ることが難しいという現状から出てきているのではないかと推察する。松嵜は「患児とその家族が何を不安に感じどのように困っているのか、医療スタッフは何を提供することができるのかが重要となってきている」2)と述べている。PICUには緊急入院やレスパイト、急変等様々な児がいるため、必要なケアが個々に違うと思われる。アンケート結果から、ケアを必要としていない家族がいることも分かった。誰が何のケアを望んでいるのか、コミュニケーションのなかから導き出さなければならないと考えた。 _V_.おわりに 今回のアンケート調査により、看護師が提供したいと思っていることと、家族が望んでいることに大きな相違はなかったが、看護ケアに関しては看護師と家族の間に違いが生じていることが分かった。
著者
川田 志浦 門間 智子 梶山 由紀 長谷川 幸子 君崎 文代
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.341, 2007 (Released:2007-12-01)

【はじめに】プレパレーションは、心理的準備段階と言われ、患児に正しい知識を提供することで、自らの治療や検査に対する不安や恐怖心を緩和し、患児が納得して検査を受けようとする対処能力を引き出すのに有効とされている。 今回、採血前と採血中、採血後に紙芝居や採血人形、おもちゃ等を使って、プレパレーションを行い評価をしたので、その報告をする。 【研究目的】採血前、中、後のプレパレーションの効果を年齢別に検証する。 【対象】3歳から6歳の発達障害のない患児20名とその母親20名 【方法】採血前の紙芝居や、採血方法を体験できる人形を作成し、それらを用いてプレパレーションを実施した。また、採血中は、ボタンを押すと光と音の出るおもちゃ等で患児の気を紛らわした。そして採血後は、アンパンマンのメダルを渡した。これらの過程を観察し、終了後患児と母親にインタビューし、結果をまとめた。 【倫理的配慮】研究対象の児の母親に、研究の趣旨やプライバシ−の保護等について、文章と口答で説明し、同意を得て施行した。 【結果】採血前からの様子を年齢別にまとめてみると、3歳(2名)は、紙芝居を見て、「アンパンマンだ」と言って喜んでいたが、採血人形で注射針の説明をした時点で恐怖心を抱き、泣き出す患児がいた。4歳(8名)は、紙芝居を見て、自ら処置室に歩いて行く姿が見られ、採血も泣かずにできた。5歳(4名)は、「アンパンマンが、がんばれと言っていたからがんばる」と言って泣かずに出来た患児もいた反面、紙芝居は理解して「がんばる」と言っても、実際に針を見ると「泣いてもいい?」と大きな声で泣いた患児もいた。6歳(6名)は、人形を使って実際に採血を体験したいと言う患児が多く、シリンジを引いた時に中から赤い液体が出てくるのを見て、笑顔が見られ「ミッキーの採血をやって、自分の採血も楽しかった」という感想が得られた。また、採血中は、ストローの抱きつき人形を見て、声を出して笑っているうちに採血が終わってしまった患児もいた。母親からは、「何をするのか、きちんと説明があって良かった」「おもちゃを用意してもらって良かった」という意見が得られた。 【考察】紙芝居は、患児が好きなキャラクターを登場させたことで、親しみやすく、アンパンマンとともにがんばろうという意欲が見られた。また年齢が上がるにつれて、紙芝居の理解度は高く、採血人形を使う患児は多く見られたが、理解度と、納得したかということは、比例するものではなく、年齢別に見てもそれ程差はなかった。むしろ、それぞれ「泣く」という行為には様々な理由があり、納得できなくて泣く患児と、理解し、納得しても泣いてしまう患児がいることが明確になった。 大野ら1)が「プレパレーションとは、手術や検査を受ける子どもの心理過程をくり返し丹念に追っていく活動であり、子どもに医療知識を授けることや、検査や手術で泣かないための理解促進ではなかった」と述べているように、保育士は、プレパレ−ションやディストラクションをして行く中で、患児の奥深い気持ちを受け止めることが重要なことだと考える。それには、採血終了後の励ましや、遊びを通して患児に接することで、次の遊びを展開するきっかけとなるよう援助していくことが大切である。 【引用文献】 1)大野尚子:プレパレ−ションの理論と実際、保育士の立場から、小児看護29(5)P572、2006