著者
若松 祐三 中村 雄一 重信 隆彰 石山 重行 草野 健 前之原 茂穂
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.314, 2008 (Released:2009-02-04)

〈緒言〉昨今の食事の欧米化、運動不足に伴い肥満人口が増加している。体脂肪率、BMIは肥満の判定に有効な手段だが、メタボリックシンドロームの病態基盤である内臓脂肪量評価との関係性を調べることにより、当センター検診CTにおける内臓脂肪量評価の基準(内臓脂肪の面積をcm2で表したものを「内臓脂肪量」と定義し内臓脂肪量100cm2未満 正常、100cm2以上150cm2未満 多い、150cm2以上 非常に多い)の妥当性を確認する。なお当センターでは平成19年1月よりMS診断の補助としてCTによる内臓脂肪測定を開始している。今回平成19年4月より1年間おける受診者の測定結果と体脂肪率、BMI、との関係について検討した。対象及び方法)平成19度人間ドック受診者11712名中 CTによる内臓脂肪測定を行った1631名(男性:1042名 女性:589名)を対象とした。使用機器は東芝製Asteion4、内蔵脂肪解析ソフトはN2システム Fat Scan、TANITA 身長体重計を使用した。臍の高さ、呼気時のCT撮影、Fat Scanで処理したCT断面図により腹壁の筋肉を境にして外側を皮下脂肪、内側を内臓脂肪とした。内臓脂肪の面積をcm2で表したものを「内臓脂肪量」と定義し内臓脂肪量が100cm2未満を_I_群、100cm2以上150cm2未満を_II_群、150cm2以上を_III_群とし、その3つの群と、体脂肪率、BMIとの関係を調べ、内臓脂肪量の至適基準を検討する。結果)内臓脂肪量をGold standardとしてBMI、体脂肪率を検討した。BMI正常者の内臓脂肪量の平均は82.148cm2標準偏差43.007、またBMI異常者では平均136.168cm2標準偏差55.560となった。体脂肪率正常者の内臓脂肪量の平均は男性102.871cm2標準偏差47.771、女性は54.377cm2 標準偏差29.894となった。体脂肪率異常者の男性の平均は144.199cm2 標準偏差57.423、女性は平均97.978cm2 標準偏差43.576となった。さらに男性の体脂肪率25%未満、女性の体脂肪率30%未満を体脂肪率正常者、それ以上を体脂肪率異常者とした場合、男性の体脂肪率正常者は_I_、_II_、_III_群それぞれ82.7%、61.4%、43.7%となり、女性の体脂肪率正常者はそれぞれ63.4%、16.3%、13.5%となっている。_I_群の場合でも体脂肪率異常者が存在し、また男性の内臓脂肪量100cm2以上の_II_,_III_群にも体脂肪率正常者が存在している。次に内臓脂肪量各群とBMIとの関係について検討した。BMI25未満を正常者、25以上を異常者とした場合、正常者は_I_群では79.7%で_II_群、_III_群になるとそれぞれ48.7%、26.3%と減少傾向にある。これは皮下脂肪などの全構成要素か含まれた為だと考えられる。 BMI、体脂肪率は、肥満の度合いを知る為の簡便な方法ではあるが、必ずしも内臓脂肪量を正確に反映してるとは言えない。内臓脂肪量の正確な測定法としては、CTがもっとも適していると思われる。さらにメタボリックシンドロームとの関連も検討して報告する。
著者
渥美 利奈 梶山 由紀 君崎 文代
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.274, 2008 (Released:2009-02-04)

はじめに 当院の小児科病棟には、一般病棟の他に小児集中治療室(以下PICUとする)がある。面会時に家族と関わり情報提供を行っているが、面会に来る家族は何を望んでいるのか、家族にとって必要な情報を提供できているのか疑問に思い、本研究に取り組んだ。 _I_.研究目的 面会時家族が看護師に何を求めているか、再確認し家族支援につなげていく。 _II_.研究方法 1.研究期間:2007年7月~8月 2.対象:1)PICU入院中、またPICUより一般病棟へ転室となった子どもの家族8人 2)病棟看護師18人 3.データ収集方法:質問紙調査 看護師がどのような情報を提供しているか、家族が必要としている情報を知り、両者を比較する。 4.倫理的配慮:対象者には研究の趣旨と無記名である旨を説明し、承諾を得て実施した。 _III_.結果 回収率:看護師100% 家族72.7% 表1. 現在の面会について 表2. 情報提供内容について(複数回答) 表3. 現在のケア状況について _IV_.考察 病状説明については、看護師からの説明に家族はほぼ満足しているという事が分かった。木下は、「看護者が両親に子どもの様子を伝えること,いわゆる情報提供は,両親に安心感や子どもを知る手がかりを与える」1)と述べている。このことから、バイタルサインなど身体面を重視している看護師に対し家族は、身体面同様機嫌や睡眠といった精神面も重視しているのではないかと考えられる。そのため、今後身体面だけではなく、面会時間外の児の精神面に関する申し送りを充実させ、家族へ提供できるようにしていく必要があると考える。 また、ケアについてはアンケート結果より一緒に行うべきだと思っていることが分かった。しかし現状においては、看護師が「行っている」と思っているのに対し、家族は「行っているが日によって違う」「行っていない」と意見の違いが生じた。これは、PICUのケアを二人で行っているため、入院中の患児全員を同じようにケアに入ることが難しいという現状から出てきているのではないかと推察する。松嵜は「患児とその家族が何を不安に感じどのように困っているのか、医療スタッフは何を提供することができるのかが重要となってきている」2)と述べている。PICUには緊急入院やレスパイト、急変等様々な児がいるため、必要なケアが個々に違うと思われる。アンケート結果から、ケアを必要としていない家族がいることも分かった。誰が何のケアを望んでいるのか、コミュニケーションのなかから導き出さなければならないと考えた。 _V_.おわりに 今回のアンケート調査により、看護師が提供したいと思っていることと、家族が望んでいることに大きな相違はなかったが、看護ケアに関しては看護師と家族の間に違いが生じていることが分かった。
著者
安田 康紀 大河内 昌弘 本田 浩一 馬場 卓也 近藤 好博 加藤 幸正 後藤 章友 神谷 泰隆 大野 恒夫
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.332, 2008 (Released:2009-02-04)

糖尿病患者の究極の治療目標は、糖尿病細小血管合併症・大血管合併症の発症・進展を阻止し、健常人と変わらない日常生活の質の維持・寿命の確保であるが、その目標を達成するためには、薬物・運動療法に加えて、食事療法が重要であることは言うまでもない。最近、糖尿病患者の食後高血糖が、糖尿病性心血管合併症と密接に関連し、食後血糖が高いほど、糖尿病性心血管合併症を発症しやすいことが示されてきている。食後血糖値の上昇幅を表す指標として、Glycemic Index(GI)が知られており、GI値が高い食品ほど食後高血糖が上昇しやすい。多くの日本人が主食としている白米は、GI値が高いのに対し、玄米や発芽玄米はGI値が低く、食後の血糖上昇が低いことが知られている。また、発芽玄米の更なる利点は、発芽玄米が、白米、玄米に比べて、糖尿病ラットの神経伝導速度および尿蛋白漏出量を著明に改善するとの最近の報告から、糖尿病患者の神経症・腎症を予防できる可能性が示されてきていることにある。発芽玄米は、玄米を水に浸してほんの少し発芽させたお米であり、発芽によって眠っていた酵素が活性化し、新芽の成長に必要な栄養素が増加する特徴があり、-アミノ酪酸や抗酸化成分などが、白米、玄米に比べて豊富に含まれる。 そこで、我々は、発芽玄米食に注目し、入院中の糖尿病患者の食事療法に発芽玄米食を取り入れた処、糖尿病コントロールが劇的に改善し、著明なインスリン注射単位数の節減効果をもたらすことが出来た症例を経験したので報告する。症例は、54歳女性、身長157cm、体重58kg、BMI 21.6kg/m2。うつ病で、当院精神科にH19年4/19に入院となった。糖尿病は、10年程前から指摘されており、入院前は、ノボラピッド朝10, 昼10, 夕8単位+ペンフィルN眠前12単位 の4回注(計40単位)でHbA1c8.6%と糖尿病コントロール不良であった。尿中C-peptide3.6μg/dayと内因性インスリン分泌は低値であった。糖尿病性網膜症・腎症・神経症は認めず、肝臓にも異常を認めなかった。糖尿病コントロール不良のため、入院時H19年4/19より、ヒューマログ朝14, 昼14, 夕14単位+ペンフィルN朝16, 眠前16単位 の5回注(計74単位)に変更したところ、毎食前血糖値100-130mg/dl, HbA1c5.6%と安定し、その後3ヶ月間血糖コントロールは安定して経過した。その後、注射回数が少ない方がよいとの患者の希望があり、H19年7/4より、ヒューマログ50mix朝16, 昼16, 夕14単位の3回注(計46単位)に変更したが、食前血糖値100-130mg/dl, HbA1c5.3%と、半年間、安定して経過した。その後も本人の血糖コントロールに対する意欲が高かったため、H20年1/11より、食事療法として、白米から発芽玄米食に変更したが、食事カロリー(1520kcal)はそのままとした。また、その他の治療方法は、精神科薬も含めて、全く変更しなかった。そうした処、発芽玄米食に変更以降、毎食前血糖値が急激に下がり始め、インスリンの減量を頻回に必要とするようになり、H20年2/5には、ヒューマログ50mix朝12, 昼6, 夕8単位の3回注(計26単位)で、食前血糖値70-110mg/dl, HbA1c4.9%、4/23には、ヒューマログ50mix朝10, 昼2, 夕6単位の3回注(計18単位)で、食前血糖値80-110mg/dl, HbA1c4.7%と、インスリンの必要単位数の激減に加えて、血糖コントロールの更なる改善が得られた。インスリン抗体等の低血糖を起こす要因は認めず、発芽玄米食摂取が、血糖コンロールの著明な改善を促し、インスリン注射単位数の劇的な節減効果をもたらした貴重な一例と考えられた。
著者
山本 祐美子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.299, 2008 (Released:2009-02-04)

【はじめに】 当病棟は、循環器・血液内科の急性期病棟であり、緊急の処置を要する患者が多い。特に循環器内科においては、昼夜を問わず緊急入院が多く多忙を極める。また入院患者も高齢化している。このような状況の中で、頻回なナースコールも多く看護師はどのような思いでいるのかを知る目的で調査を行った。その結果、頻回なナースコールに対し看護師は感情をコントロールし対応している事が分かったので報告する。 【研究】 期間:平成20年3月1日~21日 対象:病棟看護師23名(卒1~2年5名、3~5年5名、6~9年8名、10年以上6名) 看護体制:チームナーシング、受け持ち看護師制 【方法】 頻回なナースコールへの対応に対する思いをアンケート調査により明らかにする。 【結果】 アンケート回収率は100%であった。 (1)「1時間にナースコールが何回なると頻回だと感じますか?」3~4回12名(52.1%)5回以上10名(30.4%)2回1名(8.7%) (2)「頻回と感じる時間帯は?」深夜帯16名(69.5%)準夜帯7名(30.4%) (3)「頻回だと感じた時、仕事は忙しいですか?」忙しい12名(52.2%)とても忙しい6名(26.1%)少し忙しい4名(17.4%)忙しくない1名(8.7%) (4)「ナースコールを頻回に押してくる患者の気持ちが理解できましたか?」よくできた1名 (8.7%)できた9名(39.1%)少しできた12名(52.1%)できない1名(8.7%) (5)「頻回にナースコールが鳴ってもにこやかに対応できましたか?」よくできた3名(13.0%)できた12名(52.1%)少しできた7名(30.4%)できない1名(8.7%) (6)「イライラする感情がどのくらい持続しますか?」5分~10分16名(69.5%)1時間以上5名(21.7%)15分~30分2名(8.6%) (7)「イライラしている時の気持ちの切り替え方法は?」(自由記載)深呼吸をする3名、患者の立場に立って考える6名、その他、仕事と割り切る、楽しい事を考える、気持ちの切り替えができないなどであった。 (8)「患者に対する感情は?」(自由記載)何かあったのか?8名、イライラ4名、不安なのかな?、また?、ため息、一度に用件を言ってほしいなどであった。 (9)「患者の話をきちんと聞けましたか?」については、聞けた23名(100%) 【考察】 アンケート結果から、ナースコールが頻回と感じる時間帯が深夜帯という回答が最も多く、頻回と感じるナースコールの回数は1時間に3~4回であったが、深夜帯はCCU への緊急入院や重症患者の頻回な観察にもかかわらず、頻回のナースコールにも自分なりの工夫で感情をコントロールして看護を行っていると考えられる。さらに、夜勤での身体的疲労に加え精神的緊張も重なるため少数意見ではあるが、イライラする感情が1時間以上持続する看護師や、気持ちの切り替えができない看護師もいた。忙しい中では当然の事だと考えるが、患者の立場を考えると、今後もいかに忙しい状況の中でも思いやりを持ってよりよい看護を実践してくかが今後の課題であると考える。また、頻回なコールの内容を検討し、対策をしていくことも重要である。 【まとめ】 (1)頻回なナースコールに対し看護師は、感情をコントロールし対応している事が明確になった。 (2)ナースコールが頻回と感じる時間帯は深夜帯であった。
著者
赤羽 優夏 丸山 麻希 小林 修司 小松 俊雄 唐澤 忠宏 小松 修 矢澤 正信 井上 憲昭
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.310, 2008 (Released:2009-02-04)

<はじめに> 亜鉛は必須微量金属のひとつであり、その欠乏症として味覚・臭覚障害が広く知られているが、この他に褥瘡等の皮膚障害、成長発育障害などにも関与している。これまでの測定方法は原子吸光法が主流であり、その特殊性から、入院患者の一般検査項目に入れられることは少なかった。しかし自動分析用試薬が開発され、当院内においても簡便に測定することが可能となった。今回、入院患者の褥瘡発生と亜鉛濃度との関連性について検討したので報告する。 <対象> 当院に入院中の寝たきり患者33名を対象とした。このうち、褥瘡のある患者(以下、褥瘡(+))は18名(年齢47~109歳 平均83.5歳 男10名 女8名)、褥瘡のない患者(以下、褥瘡(-))は15名(年齢57~102歳 平均86.7歳 男4名 女11名)であった。比較対照として、非寝たきり患者16名(年齢60~89歳 平均79.1歳 男9名 女7名)についても調査した。 <方法> 1.栄養摂取状況の調査 2.血清中亜鉛、総蛋白、アルブミンの測定 測定機器:日立7170S形自動分析装置 使用試薬:アキュラスオートZn(シノテスト社) 自動分析用試薬「生研」 TP (Biuret法) (デンカ生研) エクディアXL‘栄研’ALB-BCG (栄研化学) <結果> 血清亜鉛平均値は褥瘡(+)患者47.0μg/dl、褥瘡(-)患者55.8μg/dlで、褥瘡(+)と褥瘡(-)の患者間に有意差(t検定)を認めた。総蛋白平均値は褥瘡(+)患者6.21g/dl、褥瘡(-)患者5.97g/dlで、有意差は認めなかった。アルブミン平均値は褥瘡(+)患者2.99g/dl、褥瘡(-)患者平均3.22g/dlで、有意差は認めなかった。なお非寝たきり患者の平均値は、亜鉛61.0μg/dl、総蛋白6.89g/dl、アルブミン3.78g/dlであった。 <考察> 今回、血清亜鉛、総蛋白、アルブミンのうち、褥瘡(+)と褥瘡(-)の患者間において有意差が観察されたのは、血清亜鉛のみであった。また、褥瘡(+)患者の亜鉛平均値は基準値(65~110μg/dl)を大きく下回っていた。以上のことから、寝たきり患者においては、血清亜鉛濃度を測定することにより褥瘡発生を予測できる可能性があると考えられた。 褥瘡の予防において栄養状態の良否は大きく影響する。通常、栄養状態を評価する検査項目として総蛋白、アルブミン値が利用されているが、本研究結果によれば両者の値から褥瘡の発生を予測することは困難であると考えられた。 亜鉛濃度が院内で簡便・迅速に測定できるようになったことで、亜鉛の褥瘡マーカーとしての有用性が今後高まっていくであろうと思われる。
著者
小森 佑美 笹井 由利子 須原 伸子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.178, 2008 (Released:2009-02-04)

【はじめに】現在、当院では、顔の清拭を朝と夕方に蒸しタオルにて行っているが、眼脂が残っていることがあり、眼の清拭が不十分だった。布団を掛け臥床している患者にとって、顔は第一印象となる。しかし、長期臥床患者は自己にてケアすることができず、眼脂の多い患者は、点眼薬を使用し続け悪循環となる。また、点眼薬に関する研究は数多くされているが、眼清拭に関する研究はほとんど見あたらず、関心の低さが伺えた。そこで、2%ホウ酸水コットンにて眼清拭を取り入れた結果、洗浄や点眼を使用しなくても眼脂が減少し、効果が得られたので、ここに報告する。【研究方法】1.研究期間:2007年7月~9月 2.研究対象:当院長期療養型病棟入院中65歳以上の寝たきり患者 3.方法:_丸1_2%ホウ酸水コットンを作り、朝・昼・夕方に眼清拭をする。_丸2_点眼薬使用者は、医師の許可を得て、ケア期間中点眼薬の使用を中止し、すべての患者を同じ条件にて行う。_丸3_手洗い後、又は手袋を使用し眼脂の少ない側から拭く。拭く時は、まず初めに目頭部分の眼脂を拭き取り、コットンの面を変えて目頭から目尻にむかって拭く。 評価方法:スケール表を個別に作成し、両眼計30点で1週間ごとに3回評価する。【研究結果および考察】眼脂は、眼清拭実施前も眼清拭実施後も朝に多くみられた。また、眼脂は目頭側に一番多くみられ、続いて目尻側に多くみられた。点眼薬未使用者だけでなく眼清拭実施前点眼者(以後点眼者とする)も、眼清拭実施後どの時間帯にも眼脂の量は減少した。分析の結果、有意差があり(p<0.00)眼清拭が効果的だったと言える。また、点眼者に対しても有意差があり(p<0.05)、眼清拭は効果的だったと言える。そのため、現在も点眼薬を使用せず経過している。しかし、眼清拭実施後、眼脂の量はある一定量まで減少したが、分析の結果、有意差はなく眼脂量が減少しつづけているとは言えなかった。眼脂は夜間閉眼していることや、ケアをしない時間が長いことで朝に多くみられたと考えられる。そのため、夜間のケアを導入すれば、もっと眼脂の減少につながると思われるが、患者の睡眠を配慮すれば、必須とは言えない。評価方法に関しても、個別のスケール表を使用したが、有る無は分かっても、量的な評価に関しては難しさを感じた。眼脂が目頭側に多く見られたのは、目頭には鼻涙管があることが考えられ、一般的な拭き方では、眼脂を広げることになる。そこで、初めに目頭側の眼脂を拭き取ってから、コットンの面を変え目頭から目尻に向かって拭くことが眼脂の減少につながったのではないかと考えられる。また、結果から目尻側を最後にもう一度拭き取る清拭方法を見直すことが、より効果的だったと考えられる。【結論】高齢で長期臥床患者の眼脂は、2%ホウ酸水コットンにて眼清拭をすることで減少した。しかし、消失することはなかった。
著者
長 純一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.75, 2008 (Released:2009-02-04)

〈緒言〉 長野県は男性1位、女性3位と長寿ながら、老人医療費が全国平均の約8割と最低であり、見習うべきモデルとされてきた。97年には厚生省が国保中央会に委託し、全国の統計調査と長野の調査がおこなわれ「市町村における医療費の背景要因に関する報告書」にまとめられた。報告書を一般書にした「PPKのすすめ」(水野肇・青山英康編・紀伊国屋書店)でも分析されているが、病床数など医療供給体制以上に医療費が抑制されているのが最大の特徴である。その要因分析では、ベッド数が少ない・平均在院日数が短い・在宅死が多い・保健師の数が多い・などから、地域医療が充実している・医療従事者の専門職としての自立性が高いなどがあげられている。しかしこの報告書は統計上の数値のみに注目し、いわば現象論のみの分析で、長野に特徴的な活動の歴史的社会的分析が科欠けている。またここ数年長野においても、『医療崩壊』とも表現される状況は深刻になっており、上記の報告書で分析された時点から大きく状況が変化している。これらの点をふまえ、新しい『健康長寿・低医療費の長野』の解釈を提示する。 〈方法〉 97年の報告書と書籍を再検証すると共に、そこで取り上げられなかった長野県の医療特性を確認する。現状と医療史をたどると『厚生連農村医療』と『国保地域医療』が長野県医療の特徴と考えられるため、この活動を文献等から検証する。特に報告書等で低医療費の要因とされ『長野県は在宅医療・地域医療が充実しており、在宅死が多く、そのために医療費が低い』との在宅医療・死の神話ついて再検証する。 〈結果〉 医療供給体制では民間医療機関が全国45位と少なく、県立や国立も少なく、一方公的医療機関(厚生連が病床数で18%強)が多い。これは厚生連が故若月俊一氏の下、戦後まもなくの時期に殆ど県立などに移管しなかったためと考えられる。また国保医療機関も多く、全国の国保地域医療を牽引してきた。厚生連と国保の活動は、保健活動や生活環境や食生活の改善等、病院の中での治療医学だけではなく、地域活動・予防医学を重視するなどの点で共通点を持つ。このような地域・患者にとって必要な活動は不採算でも積極的に取り組んできた事が、低医療費で健康長寿に貢献した可能性が高い。この姿勢と、それを公的及び公立医療機関が提供してきた事から、長野では高邁な理念のもと医療を『社会的共通資本』として捉え、実践してきた医療者の姿が読み取れる。この結果の一つが、高い在宅死率であったと考えられるが、近年極端に減少している。92年には32.4%と全国平均19.9%を大きく上回って全国一であったが、06年には13.7%と全国の12.2%と大差がないところまで低下した。特に94年以降極端に低下している。これは医療の機能分けが進められ、診療所が在宅医療を担い、一方で特に地方病院を窮地に追いやった医療政策が展開された時期に一致する。長野の在宅医療は実は国の描くような診療所ではなく、地域医療を実践する病院が不採算でも支えていたことが推定される。病院に厳しい医療情勢の上、在宅は診療所という方針により、長野の在宅死は激減した可能性が高い。このように長野を見習えと言ってきた国により、長野の医療神話は崩壊の危機に瀕している可能性が高く、再度長野の医療特性を検証し、歴史を踏まえた上で実情にあった医療政策を提言する必要がある。