著者
周防 一平
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.147-154, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
41

岡部素道は昭和の日本鍼灸界における第一人者であった。その功績は,経絡治療の樹立,GHQ 旋風時のGHQ との直接交渉,北里研究所東洋医学総合研究所設立への貢献など数知れない。そこで筆者は昭和鍼灸史の見直しを目的とし,戦前における岡部の治療方法とその成立過程についての調査を行うこととした。岡部晩年の内弟子であった相澤良氏に対する岡部本人の談話の聞き取り調査,岡部最初の論文「古典に於ける補瀉論に就て」を中心とした岡部の著作,論文等の調査を行ったところ以下のことが判明した。戦前の岡部の治療は,晩年の比較脈診による69難本治法とは異なり,六部定位による脈位脈状診に基づき診断を行い,単刺による一経補瀉を行っていた。現在一般にいわれている昭和14年(1939)3月3日の新人弥生会結成が経絡治療の始まりではなく,昭和11年(1936)の段階で経絡治療の理論・臨床体系が出来上がっていた。
著者
周防 一平
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.6-10, 2015-03-31

現在通俗的に用いられる「妖怪」は,造形化されたキャラクターを意味している.この「妖怪」に対するイメージは,鳥山石燕に始まり水木しげるによって完成された.そのルーツとなった鳥山石燕の『画図百鬼夜行』シリーズにおける身体表現の一例として下垂手を取り上げ,陰陽論からその意味を読み解いた.『画図百鬼夜行』シリーズにおいて下垂手を示す妖怪は「火車」「野寺坊」「飛頭蛮」「雪女」「ひょうすべ」「濡女」「酒顛童子」「火消婆」「川赤子」「魍魎」「震々」「狂骨」の12種であった.これらの妖怪には,陽の虚した状態もしくは陰の盛んな状態という特性が共通してみられた.また,下垂手自体に着目すると,前腕伸筋群の弛緩性麻痺によりこの肢位をとることが知られている.この伸筋群は経絡流注でいう手の三陽経の支配部位となる.つまり陽の虚した状態を示していると考えられる.よって,下垂手は陽虚,陰盛の表現と解釈することが出来る.
著者
周防 一平
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.147-154, 2015

岡部素道は昭和の日本鍼灸界における第一人者であった。その功績は,経絡治療の樹立,GHQ 旋風時のGHQ との直接交渉,北里研究所東洋医学総合研究所設立への貢献など数知れない。そこで筆者は昭和鍼灸史の見直しを目的とし,戦前における岡部の治療方法とその成立過程についての調査を行うこととした。岡部晩年の内弟子であった相澤良氏に対する岡部本人の談話の聞き取り調査,岡部最初の論文「古典に於ける補瀉論に就て」を中心とした岡部の著作,論文等の調査を行ったところ以下のことが判明した。<br>戦前の岡部の治療は,晩年の比較脈診による69難本治法とは異なり,六部定位による脈位脈状診に基づき診断を行い,単刺による一経補瀉を行っていた。<br>現在一般にいわれている昭和14年(1939)3月3日の新人弥生会結成が経絡治療の始まりではなく,昭和11年(1936)の段階で経絡治療の理論・臨床体系が出来上がっていた。