著者
長谷川 誠 和田 信昭 井上 孝志 安原 洋 仲 秀司 黒田 敏彦 野尻 亨 新川 弘樹 藤田 尚久 古谷 嘉隆
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.852-857, 2000-04-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
28
被引用文献数
5 13

1986年5月から1999年6月までの14年1ヵ月間に,当院に来院した経肛門的直腸内異物症9例と,本邦報告例55例について臨床的検討を加えた. 患者年齢は最小年齢15歳から最高年齢43歳で,平均年齢は29.6歳,性別では男性が7人,女性が2人であった.主訴では異物が7人,腹痛が2人で,来院する患者の中には異物挿入の事実を隠している場合もしばしば認められた.原因としては性的行為に関係している症例が8例と最も多かった.そのため患者は羞恥心から夜間当直帯に来院することが多かった.また繰り返し経肛門的直腸内異物で来院する症例も2例認められた.摘出は穿孔性腹膜炎を発生していた1例を除き経肛門的に摘出された.異物の種類ではスプレー缶2例,ハンガー・針金2例,試験管1例,瓶1例,バイブレーター1例,キセル1例,鉛筆1例,お菓子の容器1例となっていた.
著者
新川 弘樹 井上 孝志 藤田 尚久 野尻 亨 古谷 嘉隆 黒田 敏彦 仲 秀司 安原 洋 和田 信昭
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.59-63, 2001 (Released:2011-06-08)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

V-P (脳室・腹腔) しゃんとの腹腔側ちゅーぶが直腸に穿通し, 肛門より脱出した稀有な1例を経験したので報告する. 症例は74歳の男性. 他院で脳内出血後の正常圧水頭症に対し, V-Pしゃんとを施行された. 10か月後, 髄膜炎で当院脳外科に入院, 抗生物質投与により軽快していた. 入院3か月後, 肛門よりしゃんとちゅーぶが脱出しているのを発見され, 当科紹介となった. 腹部には圧痛, 腹膜刺激症状を認めず, 白血球数6,400/mm3, CRP1.9mg/dlと炎症反応は軽度で, がすとろぐらふぃん ®による注腸造影X線検査で造影剤の漏出は認めなかった. 大腸内視鏡検査ではちゅーぶは肛門縁から10cmの直腸右側壁を穿通していた. 腹膜炎所見がないことから, 経肛門的にちゅーぶを抜去した. 1週間後の注腸検査で造影剤の漏出がないことを確認し, 経口摂取を再開した. V-Pしゃんとちゅーぶの消化管穿通はまれであるが, 注意すべき合併症の1つと考えられた.
著者
新川 弘樹 井上 孝志 藤田 尚久 野尻 亨 古谷 嘉隆 黒田 敏彦 仲 秀司 安原 洋 和田 信昭
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.59-63, 2001
被引用文献数
3

V-P (脳室・腹腔) しゃんとの腹腔側ちゅーぶが直腸に穿通し, 肛門より脱出した稀有な1例を経験したので報告する. 症例は74歳の男性. 他院で脳内出血後の正常圧水頭症に対し, V-Pしゃんとを施行された. 10か月後, 髄膜炎で当院脳外科に入院, 抗生物質投与により軽快していた. 入院3か月後, 肛門よりしゃんとちゅーぶが脱出しているのを発見され, 当科紹介となった. 腹部には圧痛, 腹膜刺激症状を認めず, 白血球数6,400/mm<SUP>3</SUP>, CRP1.9mg/dlと炎症反応は軽度で, がすとろぐらふぃん <SUP>&reg;</SUP>による注腸造影X線検査で造影剤の漏出は認めなかった. 大腸内視鏡検査ではちゅーぶは肛門縁から10cmの直腸右側壁を穿通していた. 腹膜炎所見がないことから, 経肛門的にちゅーぶを抜去した. 1週間後の注腸検査で造影剤の漏出がないことを確認し, 経口摂取を再開した. V-Pしゃんとちゅーぶの消化管穿通はまれであるが, 注意すべき合併症の1つと考えられた.
著者
長谷川 誠 永嶌 嘉嗣 和田 信昭 長尾 俊孝 石田 康生 長尾 孝一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.1854-1861, 1999-07-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
20
被引用文献数
5 1

虫垂粘液嚢胞腺腫の1例を経験したので,その診断,手術術式などについての考察を加えて報告する.症例は77歳,女性.主訴は右下腹部痛と右下腹部腫瘤. 1カ月前より右下腹部痛と右下腹部腫瘤を自覚していたが(心窩部痛,嘔気,下痢などは認めなかった.),次第に症状が悪化し近医より紹介され来院した.右下腹部には軽い圧痛を伴う直径3cm大の腫瘤を触知した.超音波検査では右下腹部に20×17mm大のlow echoic lesionを, CT検査では回盲部に直径2cm大の中心がlow densityを示すmassを認めた.注腸造影検査では盲腸に透亮像は認めず,また虫垂は造影されなかった.また大腸内視鏡検査では,虫垂根部に粘膜の発赤と腫脹を認め,虫垂の内腔は閉塞していた.手術はまず虫垂切除術を施行し,術中迅速病理検査で虫垂粘液嚢腫との診断であった.しかし切除断端に腫瘍細胞が認められたため,回盲部切除を追加施行した.後日の病理学的検索では,多量のmucinの産生を認め, 7×12mm大のcystを形成し,これを取り囲むように一層の丈の高い円柱上皮を認めた. NC比は小さく核の形,大きさも比較的均一で異型性は少なく,最終診断はlow grade malignancyの虫垂粘液嚢胞腺腫であった.患者は術後14日目に軽快退院した. 3年経過後の現在患者は再発なく健在である.