著者
磯貝 明 木村 聡 岩田 忠久 和田 昌久 五十嵐 圭日子 齋藤 継之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

結晶性ミクロフィブリルを有する構造多糖のセルロースおよびキチン、貯蔵多糖のカードランについて従来型および新規TEMPO触媒酸化を適用し、反応条件と酸化多糖の化学構造、ナノ構造、分子量変化を明らかにするとともに、新たな酸化機構を見出した。得られたバイオ系ナノフィブリル表面を位置選択的に高効率で改質する方法を検討し、生分解性のスイッチ機能付与、親水性から疎水性へのスイッチ機能付与方法を構築した。得られたバイオ系ナノフィブリルから各種複合材料を調製して構造および特性を検討し、軽量高強度化、ガスバリア性・選択分離性、重金属捕捉機能、透明導電性など、新規バイオ系ナノ材料として優れた特性を見出した。
著者
空閑 重則 和田 昌久 磯貝 明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

中性塩の中でセルロースに対する膨潤・溶解作用の最も強いものの一つであるチオシアン酸カルシウムの作用を、この溶液中でセルロースが作るゲルの熱的挙動、および固体セルロースの溶解時の熱現象から調べた。その結果塩-セルロースゲルの融解。ゲル化挙動は水-アガロースゲルと類似した熱可逆性を示すことが分かった。ラミー繊維を用いたX線回析による検討から、チオシアン酸カルシウム-セルロース系では溶解に先立ち準結晶性の錯体が形成されることが分かり、その生成の最適条件(90℃、5〜15分)を決定した。そして錯体の回析パターンから、その構造はアルカリセルロースに類似した疎水面の結合によるシート形成に基づくものであることが示唆された。アルカリセルロースの構造とその中でのセルロース分子鎖の状態を検討し、このときにはセルロースは比較的不動化された状態にあること、したがってセルロースI→セルロースIIの変態は水洗・再生の過程に起こることが強く示唆された。またこのとき逆平行鎖のセルロースIIが選択される理由がセルロース分子鎖の幾何学的構造にあると考えられた。チオシアン酸カルシウム溶液による溶解・再生処理の応用を検討し、TEMPO酸化によるセロウロン酸の調製の検討から、この処理がセルロースの化学修飾のための非晶化前処理として有効であることが分かった。これは他の誘導体調製にも応用できると思われる。次にチオシアン酸カルシウム溶液にセルロース以外の多糖も溶解することを利用してセルロース-アミロースの複合物を調製した。この混合溶液もゲル化するが、熱測定からその挙動にアミロースは分子レベルでは関与しないことがわかった。しかしこのゲルにはアミロースが固定化されており、ビーズ化してクロマトグラフィー用充填剤を作ることができることを見出した。