著者
石坂 昌司 山内 邦裕 喜多村 昇
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.361-367, 2013-04-05 (Released:2013-06-17)
参考文献数
37
被引用文献数
1 6

エアロゾル微小水滴は,気候や大気化学などの分野において極めて重要な役割を果たしている.レーザー捕捉法は,マイクロメートルサイズの単一微小水滴を非接触で気相中に浮遊させることができるため,エアロゾル微粒子系に関する強力な研究手段であると言える.本稿では,レーザー捕捉・顕微ラマン分光法による,エアロゾル微小水滴の化学組成ならびに水滴サイズの直接測定に関して報告する.さらに,レーザー捕捉法を気相中における過冷却微小水滴の凝固の直接観測に応用した研究例に関しても紹介する.レーザー捕捉法を駆使し,光学顕微鏡下に雲中で起こる降雨・降雪の初期過程のモデル反応系を構築することが可能である.
著者
安積 徹 佐々木 陽一 喜多村 昇 山内 清語
出版者
国際教養大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

以前安積は、モリブデンの六角クラスターの三重項状態からの燐光の温度変化を解析し、燐光は、三重項状態がスピン軌道相互作用によって分裂した3つのスピン副準位からの発光の重ね合わせによるものと解釈した。その後、モリブデンクラスターと同じ電子数で同じ対称性のレニウムクラスターについてGreyらによって報告されたが、彼らは、スピン副準位を考えず、温度変化の原因を振動励起状態からの発光の寄与と結論した。一方、北海道大学の喜多村らは、スピン副準位の寄与を考えたが、安積のモリブデンクラスターと異なり、4つのスピン副準位が関与していると結論した。電子数も対称性も同じである2種類のクラスターでどうして発光機構がそれほど異なるのかを解明するために、本研究では、モリブデンクラスターとレニウムクラスターを総合的に理論、実験の両面から再検討を行った。実験は、モリブデンクラスターについては、カウンターイオンの異なる2種類のクラスターを、また、レニウムクラスターについては、配位子の異なる2種類のクラスターを、結晶状態およびPMMAポリマー溶液状態で燐光の温度変化を詳細に観測した。その結果、すべてのモリブデンおよびレニウムクラスターについて、燐光は主として3つのスピン副準位からの発光の重ね合わせであることが明らかになった。更に、測定温度を極低温の3Kまで拡張した測定により、2番目のスピン副準位についてJahn-Teller効果による対称性の低下が起こり、それに伴ったエネルギーレベルの分裂が観測された。理論面では、従来のd電子のみを考慮する二重群論に基づく理論が、この種のクラスターに広く適用できることが明らかとなった。