著者
佐々木 陽一郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学経済研究 (ISSN:09127216)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.333-352, 1998-12-02

Economic historians must always pay much attention to the first-hand materials or primary sources. These are basically documents of the contemporary people : diaries, account books of merchants, and notes of rent collections by landlords. As an economic demographer of Tokugawa period, I have been heavily involved in reading the Shumon-ninbetsu-cho, or the ledgers of religious denominations of villagers of each village. These ledgers had been compiled by lower bureaucracies annually and kept well. By comparing the data of a certain year's document with another year's, you can surmise and finally determine the local transformations of population. According to my investigation of Takayama district of Hida prefecture, I concluded that the poor people there did not belong to those who had more children than richer ones.佐々木陽一郎先生退官記念号Collected Papers on the Occasion of the Retirement of Professor Yoichiro Sasaki
著者
佐々木 陽一 LAMPRECHT G. SYKES A.G. 馬越 啓介 市村 彰男 永澤 明 SYKES A.Geoffrey SAYSELL Dabi 阿部 正明 今村 平 LAMPRECHT Ge MCFARLANE Wi A.GEOFFREY S
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は,レニウム錯体について,酸化状態の違いと配位子置換反応性の関連および金属間の相互作用と酸化還元反応性の関連を明らかにすることである。レニウムは周期表の中でも最も多くの酸化状態をとる元素であり,これらの反応性を調べるのに適している。本研究は,日本側で研究に適した新レニウム錯体の合成,英国のSykes教授の研究室でそれらの反応性の速度論的研究という大まかな役割分担で行なった。また,2年間に英国よりSaysell博士,南アフリカよりBotha博士がそれぞれ3ケ月間北海道大学を訪問,精力的に研究を行ない理想的な共同研究成果をあげた。Re(V)錯体のキレート環形成過程を,N,N,N,O型の4座キレート配位子およびN,N,O型の3座キレート配位子を用いて調べた。Re中心へのキレート環形成過程を,中間過程の化学種を単離,構造決定することにより明かに出来た。これにより高酸化数に伴うオキソ基の配位が多座配位子のキレート環形成過程に及ぼす効果を視覚的に明かに出来た。これは,置換活性な金属イオンでは不可能な成果であり,レニウム錯体以外にも広く適用できる重要な知見である。レニウム(III)六核錯体の特異な反応性が明かとなった。硫黄架橋レニウム(III)六核骨格,Re_6S_8は最近機能性物質や,生体内鉄硫黄クラスター骨格の基礎的な構造モデルとして,注目されつつあるものであるが,その基礎的な反応性はほとんど調べられていなかった。主にRe-Re間に多重結合をもつ複核錯体を新たに合成し,その構造や酸化還元反応性を明らかにした。本研究では,この化合物を,レニウム金属間結合を持つ典型的な化合物と捉え,配位子置換反応性と酸化還元反応性を調べた。その結果,異常に置換不活性であることと,これまでの見解に反し,酸化還元活性であることとが明かとなった。Re複核錯体ではその酸化数が,(III,IV)および(IV,IV)の二つの状態の錯体の構造解析により,両者のRe-Re距離の比較から,金属間結合に関わる結合軌道の性質を初めて明かにした。
著者
安積 徹 佐々木 陽一 喜多村 昇 山内 清語
出版者
国際教養大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

以前安積は、モリブデンの六角クラスターの三重項状態からの燐光の温度変化を解析し、燐光は、三重項状態がスピン軌道相互作用によって分裂した3つのスピン副準位からの発光の重ね合わせによるものと解釈した。その後、モリブデンクラスターと同じ電子数で同じ対称性のレニウムクラスターについてGreyらによって報告されたが、彼らは、スピン副準位を考えず、温度変化の原因を振動励起状態からの発光の寄与と結論した。一方、北海道大学の喜多村らは、スピン副準位の寄与を考えたが、安積のモリブデンクラスターと異なり、4つのスピン副準位が関与していると結論した。電子数も対称性も同じである2種類のクラスターでどうして発光機構がそれほど異なるのかを解明するために、本研究では、モリブデンクラスターとレニウムクラスターを総合的に理論、実験の両面から再検討を行った。実験は、モリブデンクラスターについては、カウンターイオンの異なる2種類のクラスターを、また、レニウムクラスターについては、配位子の異なる2種類のクラスターを、結晶状態およびPMMAポリマー溶液状態で燐光の温度変化を詳細に観測した。その結果、すべてのモリブデンおよびレニウムクラスターについて、燐光は主として3つのスピン副準位からの発光の重ね合わせであることが明らかになった。更に、測定温度を極低温の3Kまで拡張した測定により、2番目のスピン副準位についてJahn-Teller効果による対称性の低下が起こり、それに伴ったエネルギーレベルの分裂が観測された。理論面では、従来のd電子のみを考慮する二重群論に基づく理論が、この種のクラスターに広く適用できることが明らかとなった。
著者
荻野 博 谷口 功 松村 竹子 田中 晃二 佐藤 弦 佐々木 陽一
出版者
東北大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

本研究を推進する上で基本となる単核、二核および多核錯体ならびにクラスターの合成について大きな進歩が見られた。特に二核錯体については系統的な錯体の合理的な合成がいくつかの系で可能となった。これらの成果にもとずき、錯体の電子状態と酸化還元電位との関連および混合原子価状態の理解を深めることができた。ゼロ次反応速度則に従う電子移動反応系、プロトン移動と共役した電子移動やCO_2還元を触媒する錯体の発見など、興味ある種々の電子移動反応系が発見された。金属タンパク質の電極上における酸化還元挙動の研究の歴史は極めて浅いが、本研究においても大きな進展が見られた。金属錯体の光誘起電子移動反応が理論および実験の両面から研究された。走査トンネル顕微鏡(STM)の発明とその後の急速な発展は、これまでほとんど推測の域をでなかった固体界面の研究状況を一変させつつある。電極と溶液界面における電子移動との関連から、本研究においてもSTMを使った表面化学種の構造解析が行われ、大きな発展があった。以上述べた研究は研究者間の相互の連絡のもとに進められた。平成3年11月11日および12日の両日にわたって東工大において、さらにまた平成4年11月11日および12日の両日にわたって分子科学研究所でそれぞれ公開シンポジウムを開催し、総括的な検討を行った。なお1992年のノーベル化学賞は「化学系における電子移動理論への貢献」を行った米国カリフォルニア工学大学のマーカス教授が受賞した。我々の研究提案がいかに緊急性があったか、また時宜を得たものであったかを証明したものと自負している。