著者
村松 正道 喜多村 晃一 若江 亨祥 小浦 美樹 島津 美幸 Que Lusheng Li Yingfang Mohiuddin Md Liu Guangyan Monjurul Ahasan Wang Zhe
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、免疫系の効果分子APOBECとヒト腫瘍ウイルスの代表であるパピローマウイルス(HPV)やB型肝炎ウイルス(HBV)との関係性を調べた。その結果、APOBECはHPVの粒子形成プロセスに干渉し、感染性を低下させ、あるいはウイルスDNAに変異を作る事が明らかになった。またAPOBECがHBVのウイルスRNAを破壊する活性を持つ事がわかった。これらの研究により、免疫系の持つHBVやHPVに対する感染防御力の一つにAPOBECという宿主酵素群が関与する可能性が浮上し、その機構の一旦が明らかになった。
著者
村松 正道 喜多村 晃一 リャン グオシン
出版者
日本臨床免疫学会 = The Japan Society for clinical immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, 2008-08-31

我々はこれまで、活性化B細胞に特異的に発現する遺伝子Activation-induced cytidine deaminase (AID)を単離し、次にAIDが抗体遺伝子の2つの遺伝子改編(クラススイッチ組換えとsomatic hypermutation)のトリガーとなる事を示してきた。すなわち、生体が抗原刺激を受けた際、B細胞が活性化されAIDを新規に発現誘導し、AIDが抗体遺伝子にDNA切断を誘導する。S領域のDNA切断はクラススイッチ組換えにつながり、AIDが可変領域に作用するとsomatic hypermutationが起こる。実際、変異によりAIDの機能不全が起こると常染色体劣性遺伝の液性免疫不全症である高IgM症候群となる事がわかっている。その後の解析より、AIDによる抗体遺伝子座改編システムは、B細胞による獲得免疫の根幹を形成するメカニズムであるのみならず、そのシステムの些細なほころびが発がんのリスクとなる事もわかってきた。ここではAIDと発がんの関連に関する研究の一端を紹介する。 もう一つのトピックとしてAIDにまつわる新たな展開を紹介したい。AIDは、DNAやRNA上の塩基を修飾し塩基の遺伝情報を改変する活性を持つDNA/RNA deaminaseの1員である。この一群のdeaminaseは遺伝情報を再編集し生体の様々な局面に関わっている事が少しずつ明らかになってきた。AIDに最も近いdeaminaseメンバーであるAPOBEC3は、ここ数年HIVウイルスにhypermutationを導入することでHIVを不活性化する自然免疫のeffecter分子として注目されている。HIV以外のウイルスでも、このdeaminaseの働きが相次いで報告されている。AIDも含むdeaminaseの自然免疫における役割を考察する。