著者
後藤 克己 四ツ柳 隆夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.49-53, 1968-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6
被引用文献数
5

多量の多核アルミニウムイオンの存在する試料に,既報の8-キノリノ一ル塩抽出法を適用すると,多核イオンの解重合による誤差とクロロホルム層の乳濁化とを生じ,単核イオンの正確な定量は不可能となることがわかった。この乳濁状態は,ドデシル硫酸ナトリウム溶液の添加によりただちに破壊できることを見いだした。また定量条件における解重合反応は,多核イオンとして存在するアルミニウム濃度を[A1]Pとすると,その速度を[A1]P[CH3COO-]2および[A1]P[8-キノリノールイオン]2の項の和として表示され,並発形と推定される。その初期反応は見かけ上,時間に対して直線的に進行するので,作図による補外によって試料の単核イオンを定量できる。定量に対する各種陰イオンの影響を調べ,この方法によって定量される錯体は,配位子交換速度の大きな単核アルミニウム錯体(A1(aq)3+,A1(OH)2+,A1(SO4)+,A1(CH3COO)n(3-2n)+,A1(C2O4)n(3-2n)+など)であることを明らかにした。本法のアルミニウムイオンの加水分解に関する研究への応用について論じた。
著者
四ツ柳 隆夫 山口 拓 後藤 克己 永山 政一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.16, no.10, pp.1056-1061, 1967
被引用文献数
1

2価金属のシアノ錯体を含むアンモニアアルカリ性溶液に還元剤(L-アスコルビン酸塩)を添加するとMn<SUP>2+</SUP>イオンだけが選択的にEDTAと反応することを見いだした.<BR>[Mn(CN)<SUB>6</SUB>]<SUP>3-</SUP>+<I>e</I><SUP>-</SUP>+EDTA<SUP>4-</SUP>→MnEDTA<SUP>2-</SUP>+6CN<SUP>-</SUP><BR>この反応を詳細に検討し,1個の試料を用いてCa<SUP>2+</SUP>+Mg<SUP>2+</SUP>,Mn<SUP>2+</SUP>およびZn<SUP>2+</SUP>を滴定する方法を確立した.すなわち,鉄およびアルミニウムを除去したのち大量のシアン化カリウムを加えてZn<SUP>2+</SUP>とMn<SUP>2+</SUP>とをマスクし,Ca<SUP>2+</SUP>+Mg<SUP>2+</SUP>をEDTAにより滴定する.ついでMn<SUP>2+</SUP>に対して過剰のEDTAと還元剤とを加え,60~70℃に加温して上記の反応を完了させ,余剰のEDTAをMg<SUP>2+</SUP>標準溶液で逆滴定しマンガン量を求める.さらに,この溶液にホルムアルデヒドを添加して,Zn<SUP>2+</SUP>を脱マスクし,EDTAにより滴定する.この方法を上記の金属イオンを含む金属鉱山排水の分析に応用した.
著者
星 座 四ツ柳 隆夫 青村 和夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.592-597, 1977-09-05
被引用文献数
1 4

ジメチルホルムアミド(DMF)及び60%(v/v)DMF-水混合溶媒中におけるグリオキサールジチオセミカルバゾン(GDS)のニッケル,銅,亜鉛,カドミウム及びパラジウム錯体について,その組成(M:GDS=1:1),吸収スペクトル及び錯形成pH条件などを明らかにし,GDSの吸光分析試薬としての可能性を論じた.更に,これらの検討に基づき,極めて選択的なパラジウムの吸光光度法を提案した.
著者
五十嵐 淑郎 佐伯 知司 四ツ柳 隆夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.39-43, 1983-01-05
被引用文献数
4 4

新しい水溶性ポルフィリン,α,β,γ,δ-テトラキス(5-スルホチエニル)ポルフィン{T(5-ST)P}を合成した. T(5-ST)Pは水によく溶解し,その水溶液は安定で,しかも酸性pH条件における試薬及びその錯体の二量体生成反応は認められなかった. ソーレー帯における吸収スペクトルは,酸性型(H_4P^<2+>)が特異的に長波長側(456nm,ε=32.9×10^4cm^<-1>mol^<-1>dm^3)に位置し,亜鉛錯体(428nm,ε=41.7×10^4cm^<-1>mol^<-1>dm^3)と十分離れていた. このスペクトル特性を利用して,二波長増感法による10^<-9>g/cm^3の亜鉛(II)の吸光光度法を開発した. 本法のsandell指標は,1.12×l0^<-4>μg/cm^2であり,公定法であるジチゾン法の14.3倍の感度である. 又,相対標準偏差値は1.31μ/25cm^3の亜鉛(II)に対しO.6%(10回測定)であった. 本法を市販の四塩化炭素特級試薬中の亜鉛(II)の定量に応用し,良好な結果を得た.