著者
國本 学史
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.237-248, 2017-11-01 (Released:2017-11-15)
参考文献数
31
被引用文献数
2

近代日本において,色彩論は欧米より輸入され,受容される.その過程で,日本画家である田口米作により,『色彩新論』が著された.本書は明治43年に刊行されたが,欧米の近代的な色彩論を主に紹介する同時期の書籍とは性質が異なる.田口米作は著作の中で,色彩理論の解説に加え,日本の色彩文化論的内容を含む独自の視点を提示している.これは当時の色彩論関係の書籍ではあまり見られない特徴である.独特の色彩理論が構築された要因として,米作が浮世絵師出身でポンチ絵師であったこと,東京美術学校のようなアカデミズムとは距離があったこと,日本画家として色彩理論を独自に学んだこと,が挙げられる.一方で,米作は『色彩新論』刊行を待たず早世し,弟子筋へ技術や知識が継承されなかった.本研究は田口米作の『色彩新論』の成立における諸背景を整理し,その特異性を明らかにする.
著者
國本 学史
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.36-39, 2017

近代日本において,色彩論は欧米より輸入され,受容される.その過程で,日本画家である田口米作により,『色彩新論』が著された.同書は,当該書が刊行された明治40年前後の,欧米の近代的な色彩論を主に紹介する書籍とは性質が異なる.また,水彩・油彩画家等による絵画技法の解説・入門書のように色彩を説明する書籍とも性質を異とする.米作は著作の中で,色彩理論の解説に加え,日本の色彩文化論的内容を含む独自の視点を示している.これは当時の色彩論的書籍ではあまり見られない特徴である.独特の色彩理論が構築された要因として,米作が浮世絵師出身でポンチ絵師であったこと,美術学校のようなアカデミズムとは距離があったこと,日本画出身者としての問題意識のもとで色彩理論を独自に学んだこと,が挙げられる.一方で,米作は『色彩新論』刊行を待たず早世し,弟子筋へ技術や知識が継承されなかった.田口米作の特異な色彩論の知見は後世に受け継がなかった一方で,その後日本ではマンセル理論等が取り入れられ,日本の色彩論は,さらなる変化を遂げて行った.本論は,田口米作の『色彩新論』成立のこうした諸背景を整理し,その特異性を明らかにする.
著者
國本 学史
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.200, 2020-05-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
15

黄櫨染は令和のお代替わりに際して,天皇が身につける袍・束帯の色と見なされた.しかし,即位礼において天皇が黄櫨染袍・束帯を身に付けるのは,明治天皇以降である.孝明天皇の代までは,即位礼には冕服を天皇は着用していた.黄櫨染は,櫨を用いた染色とされる.位色がもたらされた中国の影響が大きいと考えられるが,中国の櫨と日本の櫨は文字が同じながら異なる植物と推測され,両国の櫨材染色を比較しても同色ではない.平安時代の『延喜式』の記録では,黄櫨と蘇芳の交染であるとされたが,これは中国皇帝の袍・衫の赭黄や赤黄の色に似せるためとも考えられる.中国の服色制度の受容に際して,黄櫨染以外は唐の常服の色を日本の礼服(後,束帯)に適用している.しかし,中国皇帝の常服の赭黄・赤黄の色は,日本の律令制度における「衣服令」の天皇の礼服位色としては適用されず,後代に規定されるようになる.天皇が神事等に着用する帛衣・斎服の「白」,「麹塵の青」,「赤白橡」,などの天皇位色も生じたが,黄櫨染のみ天皇に絶対的に限定されていた.そして黄櫨染は,近代の即位礼における天皇の服色として規定されることで,新たな意味性を付加されている.
著者
國本 学史
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.1-14, 2006-12-31 (Released:2017-05-22)

The original coloring materials are remaining at arts and crafts in the 7th century to the 8th century, those coloring materials have been keeping use for ornaments of arts and crafts till the 17-18th century. In documents of the 7-8th century we can find many descriptions about coloring materials, it appears there was limitation to use coloring materials. I try to point out the reason of restriction to use coloring materials that is because of chemical character. There is no research which analyzes quality and characteristic of coloring materials themselves, and insists that chemical changes and chemical reactions cause restriction to use of coloring materials. Even if we analyze optically arts and crafts, we can't point out what coloring materials were used to perfectly. So it's necessary to refer documents which record how the coloring material was used, and in which amount used. In consideration of descriptions of documents and decorations examples of arts and crafts and chemical character of coloring materials, I would like to indicate that the restrictions to use of coloring materials are caused by the compatibility and the aptitude of the coloring material.