著者
土 隆一
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.642-652, 1959-12-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

静岡市の東南に位置する有度丘陵周辺の地形発達を地質構造にもとづいて考察した.この地域には,古い方から,久能山面,日本平面,国吉田面,現冲積平野面の4 stagesの平坦地形面が認められるが,これらは洪積世初期からの, 4回の海侵によつて生成した地層それぞれの堆積面をあらわし,各面形成の間には顕著な海退期が認められる.一方,この地方では洪積世初期以降,継続的なドーム状隆起が続いており,そのため各地形面は旧期の面ほど強く曲隆し,有度丘陵は背後の山地から離れて冲積原に孤立している.また,丘陵東側および南側に見られる海蝕崖地形の形成時期について,冲積面下の地質,遺跡の資料にもとづいて検討し,前者が洪積世末期,後者が繩紋時代の海面上昇期と推定した. これらの事実から,この地方の地形発達は,海に迫つた急峻な背後山地とそれを侵蝕して多量の荷を運ぶ河川の存在と云う地理的条件のもとに,ドーム状曲隆運動とおそらくGlacial eustasyとが相まつて作用したと解釈することができる.