著者
齋藤 雅通 池田 伸 土居 靖範 近藤 宏一 谷口 知弘 棚山 研
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

調査に基づく共同研究の結果、研究論点として、ドイツの各都市でNPO法人によって推進されている都市マーケティング(Stadtmarketing)の重要性を析出した。また都市マーケティングは、都市型サービス産業が直面している課題の解決の一視点でもあると結論づけた。この点を具体的に明らかにするために2005年2月および9月に、マンハイム及びケルンの都市マーケティングNPO及び商工会議所、市役所(スポーツ局、文化局)、地域スポーツNPO等関連団体へのインタビューと資料収集を実施した。都市マーケティングのより深い究明については、今後も継続して研究する課題である。各メンバーによる研究としては、(1)齋藤雅通は、ドイツにおける都市型の小売商業集積であるパサージュの実態調査に基づいて理論的可能性と限界を明らかにした。(2)土居靖範は、ドイツのケルンおよびカールスルーエの都市交通経営体や運輸連合の調査を行い、財源調達のしくみを主に解明した。またLRTの国内への導入を、具体的にJR富山港線のLRT化の経緯と課題を調査研究した。(3)近藤宏一は、主にドイツにおける都市公共サービス、とりわけ文化・芸術関連サービス(オーケストラ、歌劇場、美術館)と観光および公共交通にかかわる組織の現状と課題について調査と資料収集を行った。(4)棚山研は、サッカーの日韓W杯開催時から開催地である新潟の継続調査と調査データの整理を行った。併せて、2度にわたるドイツのスポーツクラブの調査を通じて、日独のスポーツクラブの運営、生活文化への定着度についての比較を試みた。(5)池田伸は、現代都市における消費者研究およびそれに係わる調査方法論について、社会統計学や文化人類学などの周辺領域の成果を含めて検討した。その結果,現代都市のポストモダニティをマーケティング(消費者行動)の社会学として構想するにいたった。(6)谷口知弘は、京都市出町地域の取り組みの現地調査に基づいて、市民参加のまちづくりについて論究した。
著者
井本 正人 土居 靖範
出版者
高知女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

規制緩和の流れの下で、市場原理の活用では対応困難な過疎地域の移動ニーズにどのように応えていくかは交通運輸分野での大きな課題である。過疎地域住民の生活様式と移動ニーズに対応した移動のナショナルミニマムを効率的に確保することは地域生活にとってますます重要となってきている。ここでは、国内事例として、過疎が進行し、過疎バス対策も比較的に進んでいる高知県下の3町村の取り組みについて分析し、また、スウェーデン、スイスにおける移動のナショナルミニマムの考え方とそのレベルアップの取り組み実態について検討することによって、より国際的な視野のもとに過疎地域におけるより普遍的な移動保障のあり方を明らかにした。具体的には、主に次の3点の検討を行う。1.各自治体は、地域のそれぞれの実情をふまえ、法的・財政的枠組みの中で移動手段の組み合わせによる住民満足度の高い効率的運行パターンをどのようにして実現してきているか、検討を行う。2.効率的な運行を実現し、改善していくための主体(自治体、住民、事業者)と財政・負担のあり方について検討を行う。3.我が国の特殊性を明らかにし、過疎バス運行システムに関するより普遍的な考え方と傾向を明らかにするため、EU内での事例を紹介しながら、比較検討を進めるその結果、移動のミニマムについては、朝、診療所等に行き、昼自宅に帰ると行った形での一往復が物理的なミニマムで、朝、昼、夕刻の運行が一般的なミニマムと考えられている。交通手段の組み合わせによる住民満足度の高い効率的運行パターンの具体化方法は国、地域によって異なるが、総じて、路線バスとスクールバスを中心とする複数の移動手段の連携と、様々な移動ニーズの路線バスへの統合といった方法があり、それらにおいて低料金あるいは乗車無料といった方向性が見られる。我が国の場合、いわゆる縦割り行政の下でこうした取り組みがダイナミックには取り組まれにくいといった事情もあるが、財政負担を伴う低(無料)料金での運行については、その効率性の確保と住民の支持が不可欠であると考えられることが明らかとなった。
著者
平田 純一 近藤 宏一 木下 明浩 斉藤 雅通 山崎 正史 塚口 博司 春名 攻 土居 靖範 平井 孝治
出版者
立命館大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
1999

本地域連携研究は,京都府,滋賀県,京都市を対象地域とし,対応する行政機関との連携をはかりつつ研究活動を継続してきた.研究期間内に大規模小売店舗法から大規模小売店舗立地法へと大規模小売店舗の主点調整に対する枠組みの変更もあり,現在ではいわゆるまち作り3法(改正都市計画法,改正建設基本法,大規模小売店舗立地法)によるまち作りとあわせた大規模小売店舗の立地調整が基本となってきた.こうした商業活動を巡る環境の変化と併せて研究期間内には商業活動自身にも大きな変化が発生した.複数の大規模小売業が破綻または大規模なリストラを行う必要が発生した.こうした商業活動を巡る大きな変化を目の当たりにしつつ,本研究プロジェクトでは,対象地域の各自治体における商業調整方法の変化や中心市街地活性化計画等の説明を受けつつ,大学の研究者が独自の研究計画に従った,研究を進め相互交流を図った.研究成果はいくつかに分類することができるし,今回の研究成果のすべてを研究報告書に取り入れることはできなかったが,今後個人ベースで今回の研究成果をより精査することと併せて,学内で研究グループを維持し,行政の担当者との交流を含めて来年度の研究成果の本格的なとりまとめを行うことを予定しており,学内的な予算措置も講じた.本研究では,京都府,滋賀県,京都市における商業活動状況の特性を明らかにすることを目指して,商業統計データの詳細な分析により,地域間の商業活動の比較分析を行った上で,京都府下および滋賀県内における具体的な研究対象地域を設定し,ここにおいて各種の調査を行った上で,これらの地域に対する具体的なまち作り計画を検討した.ここで対象とした地域は,京都府京都市伏見区の大手筋を中心とした商業地区と滋賀県草津市の中心市街地である.伏見地区では,TMOによる具体的な中心市街地活性化計画を策定中であり,これが完成した時点において,この地区がどのようになるのかを歴史的検討と併せて評価を行った.草津市後威信市街地では,大手スーパーSEIYUが撤退跡市を含む隣接地域の将来経計画が大きな課題となっており,これらを含めて検討を行った.こうした検討を行う上で,両地区の通行量調査,来街者調査,消費者の買い物動向調査を行い,これらの調査結果もとりまとめている.こうした調査は,これまで行政主体のものが多く,ここではこれらの内容にとらわれることなく,独自の調査を行った.