著者
土生 芳樹
出版者
近畿作物・育種研究会
雑誌
作物研究 (ISSN:1882885X)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.85-90, 2016 (Released:2016-12-26)
参考文献数
27

近年の交配育種においてはマーカー育種法やゲノミックセレクション法などの進展により多数の交配後代個体から目的のゲノム組成を持つ個体を選抜する効率が飛躍的に向上したが,減数分裂期組み換えの位置や変異誘発の頻度を積極的に制御する試みはほとんど行われていない.減数分裂期組み換えはゲノム中で限られた領域(ホットスポット)に集中しているため,ホットスポット以外の領域に組み換えを誘導する技術の確立は効率的な作物育種にむけた重要な課題の一つである.組み換えが起きないゲノム領域はDNAの局所的な「固さ」と関係していることが知られており,この固さを決める要因がエピゲノムと呼ばれるDNA-ヒストンタンパク質複合体の化学修飾である.本稿では作物への有用形質付与を目的としたゲノムの構造・機能の改変を効率的に行う手段として,従来の方法とは異なるエピゲノム制御の観点からのアプローチを紹介する.
著者
伊左治 俊策 吉永 直子 寺石 政義 小川 大輔 加藤 悦子 奥本 裕 土生 芳樹 森 直樹
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
pp.D18-036, (Released:2018-08-03)
参考文献数
29
被引用文献数
1 10

イネ(Oryza sativa)は干ばつで枯死するとその後に給水しても復活することはないが,酢酸水溶液を与えたイネは,乾燥ストレスで一度地上部が枯れながらも,再給水すると新たに地上部を伸長させる特異な乾燥耐性を獲得する.処理中の酢酸代謝を解明するために,13Cで標識した酢酸をイネに処理し,LC-MS及び13C-NMRで13C標識された酢酸代謝物を追跡した.根抽出物のLC-MS及び13C-NMRの分析結果から,処理された酢酸はイネ体内に取り込まれ,グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)によってγ-アミノ酪酸(GABA)に代謝されると示唆された.酢酸処理したイネのGABA蓄積量を調べると,根に続いて地上部でGABAが蓄積され,また地上部のGABA蓄積量に比例して乾燥ストレスに対する生存率が増加した.以上から,地上部のGABA蓄積が酢酸によるイネの乾燥耐性に寄与する可能性がある.