著者
坂井 堅太郎 松岡 葵 牛山 優 下田 妙子 上田 伸男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.1176-1181, 1998-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
12
被引用文献数
4

鶏卵の卵白中のオボムコイド(OM)は, 他の卵白タンパク質に比較してアレルゲン活性が最も高く, 加熱により凝固しない特徴を持っている.鶏卵を15分間沸騰水浴中で作成したゆで卵の卵黄をOMに対する特異抗体を用いたイムノブロットとELISAにより分析したところ, OMは加熱凝固卵白の水溶性成分として卵黄側へ拡散・浸透していることを認めた.卵黄中のOMは, ゆで卵作成直後で卵黄1g当たり4.8±0.8μgと定量された.ゆで卵を室温に120分間放置したゆで卵から取り出した卵黄中のOMは卵黄1g当たり78.8±31.3μgと定量され, ゆで卵作成直後の16.4倍であった.加熱凝固卵白水溶性画分のOMとタンパク質量は, それぞれ14.2±11.9mg/mlと37.7±3.2mg/mlと定量され, OMは全タンパク質量の約40%を占めていた.ゆで卵の作成により卵白中のOMが卵黄側へ拡散・浸透することは避けられないと思われるが, アレルゲン性の強いOMの感作をできるだけ回避するには, 長時間放置したゆで卵の卵黄を使用するのは望ましくないであろう.
著者
坂井 堅太郎 小川 路恵 高嶋 治子 水沼 俊美 真鍋 祐之
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.147-152, 1997-04-10
被引用文献数
1 1

加熱殺菌方法の異なる3種類の市販牛乳 (低温殺菌, 高温短時間殺菌および超高温殺菌牛乳) に含まれるタンパク質成分のペプシンに対する消化性を, SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法と, 牛カゼイン, 牛α-ラクトアルブミンおよび牛β-ラクトグロブリンに対する特異抗体を用いたウエスタンブロット法により検討した。カゼインは牛乳の加熱殺菌方法の違いに拘らず, ペプシンにより速やかに分解された。低温殺菌および高温短時間殺菌牛乳中のα-ラクトアルブミンはペプシン消化に対して抵抗性が認められた。超高温殺菌牛乳では, α-ラクトアルブミンのペプシン消化に対する抵抗性はやや減少したものの, 十分に維持されていた。低温殺菌と高温短時間殺菌牛乳中のβ-ラクトグロブリンは, α-ラクトアルブミンと同様に, ペプシン消化に対して抵抗性を示したが, 超高温殺菌牛乳では, ペプシン消化に対する抵抗性はほとんど消失し, カゼインでみられるペプシン消化のパターンに類似していた。ラットに低温殺菌または超高温殺菌牛乳を強制的に経口投与し, 胃内容物中のβ-ラクトグロブリンの消化を調べたところ, 超高温殺菌牛乳投与ラットの消化度は低温殺菌牛乳投与ラットに比べて明らかに高かった。これらの結果から, 市販牛乳中の各タンパク質成分のペプシンに対する消化パターンは異なることが示された。また, 超高温殺菌処理によって, β-ラクトグロブリンのペプシン消化に対する抵抗性が著しく消失することから, 超高温殺菌牛乳はβ-ラクトグロブリンのアレルゲン性が緩和された牛乳としての有用性が示唆された。