著者
坂東 美和子 田辺 智 伊藤 章
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育學研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.505-514, 2006-07-10
被引用文献数
1 2

4ターン投法でパフォーマンスが異なる(世界のトップレベルから地方学生レベルまで)26名の成人男子ハンマー投げ選手の公式競技会における投てきのハンマーヘッドの運動を三次元解析し,以下の結果を得た.記録の良い選手ほどヘッドの初速度が高い傾向にあったが(r=0.917,p<0.001),記録とりリース高および投射角との間には有意な相関関係が認められなかった.すべてのターンにおけるヘッド速度の最大値と最小値は記録との間で有意な正の相関関係が認められた.指導現場では1ターン目は速度を遅くし,徐々に加速するように指導する傾向があるが,本研究の結果では優秀選手が速い回転速度で1ターン目を開始しており,異なる結果を得た.また,指導現場ではヘッドの軌道を規定する曲率半径を大きくするように指導がなされる場合があるが,本研究の結果では曲率半径が短い局面でヘッドが加速しており,また曲率半径が短い局面で法線加速度が増加する傾向が観察された.そして,記録の良い選手ほど法線加速度が高く,法線加速度の発揮速度も高かった.以上の結果を先行研究を参考にまとめると,ハンマー投げの選手は回転の中心方向にヘッドを引くことによって法線加速度を高め,その結果曲率半径が減少しながらヘッドを加速する可能性が示唆された.