著者
坂田 ゆず
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.41, 2022 (Released:2022-04-11)
参考文献数
70
被引用文献数
2

外来植物は、瞬く間に分布域を広げ在来植物を駆逐する場合がある一方で、定着してから気づいたら姿を消していたという場合もある。こうした外来植物の在来生態系でのふるまいの違いを理解・予測する上で、外来植物の自身の形質に加えて、外来植物と在来植物の間の相互作用のメカニズムの理解が欠かせない。本稿では、外来植物が植食者を介して在来植物に与える負の影響(見かけの競争)に注目し、これまで研究されてきた事例を幅広く紹介し、後半ではこの3者間の相互作用が環境要因によってどのように変化しうるかについて議論する。さらに見かけの競争によって、意図的・非意図的な外来植食者の侵入が逆に在来植物の食害を増加させる事例についてまとめた。また、筆者が外来植物のセイタカアワダチソウを材料に、原産地と侵入地で見かけの競争の地理的な変異に注目して行っている事例研究を少し紹介する。最後に、外来植物を取り巻く環境の変化を取り上げて、変動する環境下において、変化していく外来植物のふるまいへの理解を深める今後の研究の展望を探りたい。
著者
坂田 ゆず
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

1年目と2年目における研究から、アワダチソウグンバイ(以下グンバイ)が高密度で見られる集団ほど、セイタカアワダチソウ(以下セイタカ)の抵抗性が高いことが明らかとなった。原産地から侵入地への侵入過程で、どのような自然選択圧が背景となり、グンバイの密度が高まり、セイタカの抵抗性が変化したかを明らかにするために、野外調査、相互移植実験、温室実験を行った。今年度は、これまで行った集団遺伝学的解析の結果、日本のセイタカの集団と最も近縁であることが明らかになった北米南部集団のグンバイへの抵抗性を比較した。日本における圃場実験の結果、北米南部集団のセイタカは、グンバイに対して高い抵抗性を示した一方で、日本のグンバイの侵入が11年目の集団に比べて、抵抗性が低い傾向も検出された。3年間の研究から、原産地でもセイタカとグンバイの関係は地理的な変異が大きく、両地域でセイタカのグンバイに対する防御形質が局所的に適応していることが明らかとなった。そして、グンバイが日本への侵入時に、原産地に比べて侵入地では気候条件が好適で、グンバイの競争者となるその他の植食者が少なく、抵抗性が低いセイタカが全国に分布しているという背景によって、侵入地におけるグンバイの密度が高まったことが示唆された。その結果、セイタカは、グンバイから解放されることで一旦は低下した抵抗性が、侵入地において再会したグンバイが強い選択圧によって、防御形質の適応が短期間に再び生じているといった進化動態が示唆された。以上により、物理的環境と生物的環境の複数の要因が作用し植物と植食者の局所適応が生じていることが示唆された。これらの結果をまとめ、国内外での学会での発表を行い、投稿論文を執筆中である。