著者
谷 順彦 坂田 和男
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:18847374)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-11, 1977

日本産フナの有効な分類基準を得るため, それらの筋漿蛋白像をデンプンゲル電気泳動法により分析した。デンプンゲル泳動像はデンプンの質, ゲルのデンプン濃度, ゲルと電極槽の緩衝液のpHなどの要因の影響を受け, 若干変化した。そこで種内および種間変異を最も明瞭に示す実験条件下で, 分類学上重要ないくつかの地点から採集したフナ類の筋漿蛋白像を比較したところ, それらは基本的4型に類別された。第1型はCarassius buergeriの4亜種;キンタロウブナ, キンブナ, ニゴロブナ, ナガブナを含む。第1型は1遺伝子座の2対立遺伝子に支配される3変異型, 1-A, 1-AB, 1-B型に細分される。キンブナ類のA遺伝子頻度は地域によって異なり, 0~1.00の範囲で変動した。<BR>第II型にはギンブナが含まれる。第II型もまた4変異型に細分されるが, バンドの数とそれらの濃度などから判断して, これらの変異が単に有性生殖集団内における共通の座の対立遺伝子による変異とは考え難い.これら4変異型のうちII-1およびII-3型は霞ヶ浦に多く, II-2型は西日本に多く, II-4型は霞ヶ浦でわずかに認められた.ゲンゴロウブナは例外なく第III型に含まれた.ヨーロッパブナは目本産フナのどの泳動像にもあてはまらないが, キンブナの像にいくぶん似たところが認められた。