著者
坪井 光弘 吉澤 潔 環 正文 三浦 一真
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.079-084, 2012-01-15 (Released:2012-02-29)
参考文献数
15

症例は25歳,女性.咳嗽を主訴に近医を受診したところ,胸部X線にて右肺に多発腫瘤影を指摘された.CTで右上葉に多発する石灰化を伴った粗大な結節が認められると同時に,胃体部大弯に粘膜下腫瘍を指摘された.右肺上中葉切除,胃部分切除を施行したところ,肺腫瘍は軟骨腫,胃粘膜腫瘍は消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor; GIST)と診断された.1977年,Carneyらは胃平滑筋肉腫(現在ではGISTとして扱われている),肺軟骨腫,副腎外傍神経節腫の3つの稀な軟部腫瘍を合併する症例をひとつの症候群(Carney's triad)として提唱した.しかし3病変をすべて合併する完全型は稀であり,診断は上記3病変のうち2病変以上の合併をもってなされる.本症例は胃,肺の2病変のみを有する不完全型Carney's triadと考えられた.Carney's triadは極めて稀な疾患であり,自験例を含めた本邦での報告11例の文献的考察を加えて報告する.
著者
坪井 光弘 畠山 茂毅 竹原 雄介 津田 洋 澤田 成彦 佐尾山 信夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.2219-2222, 2007
被引用文献数
1

患者は58歳, 男性. 自宅アパート3階の窓より転落し救急搬送された. 胸部単純写真および胸部CT検査で左多発肋骨骨折, 左肺の透過性低下および左横隔膜の挙上を認めた. 血液検査上transaminaseおよびamylaseの上昇を認めたが, 腹部に身体的異常所見は認めなかった. 腹部CT検査でも異常所見を認めなかった. 入院後血液検査およびCT検査による経過観察で腹腔内臓器損傷は否定できたため, 外傷性左横隔膜ヘルニアの診断で受傷後第3病日に経胸的に手術を施行した. 開胸したところ, 横隔膜の断裂と腹腔内臓器脱出に加え, 心嚢の破裂を認めた. 腹腔内臓器を還納し横隔膜を縫合閉鎖した. 術後特に合併症なく患者は術後23病日に退院した. 外傷性横隔膜損傷は他臓器損傷を合併していることが多く, 合併損傷も考慮し有効な手術経路を選択することが重要と思われた.