著者
小島 大輔 谷口 佳菜子 城前 奈美
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 = Geographical space (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.289-303, 2015

本稿では,唐津市呼子町における「呼子朝市」について,観光化の変遷と出店者の構成から,その存続基盤を検討することを目的とする。 「呼子朝市」は地域の変化に合わせて移動しており,また法律への対応のために組織化するなど柔軟に対応してきた。さらに,「呼子朝市」では「生活市」としての機能が低下していくなかで,「観光市」としての機能が増した。「呼子朝市」の出店者調査で,①鮮魚にイカが付加された呼子独特の出店品目構成による集客,②加工・乾物水産物販売による保存が可能な土産品の提供,③野菜販売者による賑わいの補強,④その他の販売による土産品目の多様性の創出,が把握され,いずれも「観光市」としての機能であった。ただし,この存続基盤の背景には,「生活市」としての機能が消失されず,賑わいの補強につながっていること,出店者同士の交流が出店者の出店意欲を維持させていることがある。