著者
小島 大輔
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.122-133, 2006-08-20 (Released:2007-10-05)
参考文献数
51

ロドプシンファミリーは多様なメンバー (オプシン) から構成され, 視覚やそれ以外の様々な光生理現象に関与する。筆者はこれまでに様々なオプシンの解析を通じて, 動物の光受容細胞の機能と進化に関する研究を行ってきた。本稿では筆者らの行った以下の研究について紹介する。(1) ヤモリの桿体に含まれる視物質が錐体タイプであることを明らかにし, ヤモリ桿体が錐体から進化したとする仮説を検証した。(2) ホタテガイの繊毛型視細胞において新しい光情報伝達系を発見し, 視細胞の光情報伝達経路は脊椎動物と節足動物の分岐以前にすでに多様化していたことを明らかにした。(3) ゼブラフィッシュの脳内において2種類の新規オプシン (非視覚型オプシン) を同定し, その一つ (エクソロドプシン) は松果体, もう一つ (VALオプシン) は脳深部と網膜の二次ニューロンに存在することを示した。また, エクソロドプシン遺伝子プロモータの機能解析を行い, 松果体特異的なシス配列の同定に初めて成功した。
著者
小島 大輔
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.604-617, 2009-11-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
33
被引用文献数
3 3

本稿では,日本人のカナダ旅行の発展に伴う日本人向け現地旅行業者の活動の展開に着目し,旅行目的地とその供給体系との関係について分析を行った.1970年代まで,日本人のカナダ旅行の供給体系はアメリカ旅行の供給体系のサブシステムだった.カナダでは主に現地の日系人が設立した旅行業者が媒介部門の役割を担い,日本人の旅行目的地においてカナダ西部と東部は,それぞれアメリカ西部と東部のそれに統合されていた.1980年代になると,東西両地域を含んだ旅行商品の大量供給や夏季以外の旅行商品の開発が行われた.また,日本人カナダ旅行者の急増に伴い,柔軟な催行体制を用いた日本系旅行業者の進出によって,アメリカ旅行の供給体系から独立したカナダ旅行の供給体系が構築された.1990年代後半の日本人カナダ旅行者数のピーク以降,日本から進出した日本系旅行業者は,季節変動に対し労働力の数量的・機能的柔軟さを高め,その存続を図っている.
著者
小島 大輔
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学教育基盤センター紀要 = The Journal of Nagasaki International University Center for Fundamental Education (ISSN:24338109)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.91-101, 2018-03

本稿では、『学習指導要領社会科編(Ⅱ)(第七学年~第十学年)(試案)』で示された中学校第1学年の単元「われわれは余暇をうまく利用するには、どうしたらよいだろうか」(以下「余暇利用」単元)について、問題設定と社会機能の視点から検討し、以下のことを明らかにした。「余暇利用」単元の設置には、アメリカのレクリエーション運動が影響したヴァージニア・プランが反映された。一方、日本における戦後のレクリエーション運動は、「余暇善用論」の展開の一つであり、レクリエーションとの対比で余暇が問題化されていった。この「余暇善用」を前提とした余暇の規範化と、その方法としてのレクリエーションの普及という背景から、「余暇利用」単元が、本来的に自由な時間である余暇が、レクリエーションとしてすべて「社会生活の主要機能」に帰属させられる短絡的な展開になっていた。
著者
小島 大輔 谷口 佳菜子 城前 奈美
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 = Geographical space (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.289-303, 2015

本稿では,唐津市呼子町における「呼子朝市」について,観光化の変遷と出店者の構成から,その存続基盤を検討することを目的とする。 「呼子朝市」は地域の変化に合わせて移動しており,また法律への対応のために組織化するなど柔軟に対応してきた。さらに,「呼子朝市」では「生活市」としての機能が低下していくなかで,「観光市」としての機能が増した。「呼子朝市」の出店者調査で,①鮮魚にイカが付加された呼子独特の出店品目構成による集客,②加工・乾物水産物販売による保存が可能な土産品の提供,③野菜販売者による賑わいの補強,④その他の販売による土産品目の多様性の創出,が把握され,いずれも「観光市」としての機能であった。ただし,この存続基盤の背景には,「生活市」としての機能が消失されず,賑わいの補強につながっていること,出店者同士の交流が出店者の出店意欲を維持させていることがある。
著者
小島 大輔
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100178, 2017 (Released:2017-10-26)

日本では,近年「インバウンド・バブル」と呼ばれるほど外国人観光者数が増大している。この動向は日本全国の観光地で注目され,市場化を目的として外国人観光者の行動パターンの詳細な把握が試みられている。 ところで,戦後日本の外国人観光者は一様に増大してきたのではない。1960年代,1970年代半ば~1980年代半ば,1980年代半ば~1990年代半ば,1990年代半ば~2000年代末,および2010年代以降といったような段階的な増大を示している。 これらの長期的な発展段階については,外国人観光者に関する全国的な統計データの整備が遅れたため,その行動パターンの空間的特徴やその時間的変化を国土スケールで検討することはなされていない。 そこで,本研究では,外国人入国者のゲートウェイの変遷から,日本におけるインバウンド・ツーリズムの時間的・空間的な発展傾向について検討する。 ゲートウェイという視点から分析する理由は以下の通りである。 まず,前述したように,外国人観光者の行動パターンの空間的特徴を長期的に比較検討可能な統計データが存在しないことがあげられる。そこで,本研究では,法務省『出入国管理統計年報』の港別入国・出国外国人に関する統計を使用した。電子化されていないものはデータベース化し,1961~2015年までの55年間の数値について分析を試みた。 また,観光者数の長期的な変動については,地理学では伝統的に観光地のライフサイクル(Tourism Area Life Cycle:TALC)という視点で検討がなされてきた。しかし,長期的な観光者数の変化とゲートウェイの変動という関係について検討した研究はほとんどない。 さらに,国籍別に出入国両ゲートウェイの関係を分析することによって,国籍別の日本国内の行動パターンの空間的特徴を抽出することが可能である。すなわち,入国港―出国港の関係を検討することで日本国内でのルートを類推することができる。 以上のことから,本研究は,近年増大する外国人観光者の集中する地域(インバウンド・クラスター)が発生する背景,およびそれら特定の地域における行動パターンを説明に寄与することも想定している。 各発展段階を通して,ゲートウェイは一様に発展しておらず,各発展段階においてその構成が大きく変化していることが明らかになった。ゲートウェイは,インフラ整備の影響によって,まず東京への集中および地域的ゲートウェイの出現による多極化が進展していった。続いて,「ゴールデン・ルート」に代表される「定番ルート」の形成によって,さらに多極化の特徴が強くなった。その後,「定番ルート」からのトリクルダウン,チャーター便を利用したツアー,特定の観光対象の出現・衰退,およびクルーズ船寄港などによって多様化が生じていった。 なお,これらの特徴は,外国人の国籍によって大きく異なっていることも明らかになった。欧米からの観光者のゲートウェイは,東京への集中傾向が強く,発展段階を通じてその変化も小さかった。一方,東アジアからの観光者のゲートウェイについては,入国者数の増大に伴い多様化が進展していったこと,および国籍別に集中するゲートウェイが異なることが明らかになった。   付記:本研究はJSPS科研費15H03274の助成を受けたものである。
著者
小島 大輔
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.49-65, 2008-04-28
被引用文献数
2

本稿の目的は,近年注目の集まりつつある都市観光(urban tourism)について,熊本市の都心の集客施設への来訪者の行動から,観光行動についての空間的特性とその規定要因を明らかにすることである。調査対象は,中心市街地およびそれに隣接し,熊本市の観光入込客数の上位に含まれる主要な集客施設である。分析は,熊本市内および熊本市外の2つの地域スケールについて行い,さらに,数量化III類によって両者の行動の関係およびその規定要因を検討した。分析の結果,熊本市は,熊本県内周遊,九州横断,および九州周遊という3つの主要な旅行ルートによって,階層的な観光流動に組み込まれていることが明らかになった。また,熊本市内における行動について,トリップ数の増加に伴い,行動が多様化し,さらに行動空間も拡大することが示された。さらに,現地への滞在時間の増大または来訪経験の増加によって,滴下効果が生じ,ツーリストの卓越する施設に加えてレクリエーショナリストの卓越する施設への来訪行動が現れることが確認された。
著者
岩田 宗彦 小島 大輔
出版者
日本比較内分泌学会
雑誌
比較内分泌学 (ISSN:18826636)
巻号頁・発行日
vol.34, no.129, pp.82-85, 2008 (Released:2008-06-03)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1