著者
萩原 文子 中村 とも子 大槻 かおる 寺尾 詩子 大島 奈緒美 井上 早苗 堀 七湖 大塚 敬三
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.98, 2008

【はじめに】日本理学療法士協会や神奈川県理学療法士会の報告では会員の退職や休職の理由として出産や育児が大きな比率を占めているとされている。制度的には男性も育児休業(以下育休)の取得が可能であるが厚生労働省の調べによると2006年度の男性育休取得率は0.57%であり政府目標の10%には程遠い状況である。今回育休の取得経験のある男性理学療法士(以下PT)及び作業療法士(以下OT)より経験談や意見を聴取し,男性の目から見た育児・仕事との両立・制度などの問題点などを明らかにするため,調査を行なったので報告する。<BR>【方法】事前に作成した調査票により面接又はメールにより実施した。<BR>対象者:男性PT3名・OT1名<BR>調査内容:家庭環境・職場環境・育休取得について<BR>【結果】育休取得時年齢:28~40歳 <BR>育休取得期間:2~12ヶ月(平均5.75ヶ月) 3名は妻の育休取得後・1名は妻の産後休暇期間<BR>職場:公的又は準公的施設<BR>職場のPT・OT数:2名~28名(平均11.25名) <BR>休業中の代替者の確保:2施設あり・2施設なし<BR>職場内保育所の設置:4施設共なし<BR>職場での女性の育児休業取得:3施設取得し易い・1施設退職圧力等はなし<BR>リハビリ部門の対応:4施設とも協力的。3施設では代替者の募集が行なわれた。<BR>良かったこと:親としての責任感が持てた。子供とゆっくりとした時間が持て向き合うことが出来た。人としての幅が広がった。病院以外の世界にも目を向けるきっかけとなった。患者さんが帰っていく家庭や地域がみえ,指導へもつながることがたくさんあった。<BR>困ったこと:特になし<BR>要望:育休が取得可能であることや取得によるメリットなどの情報発信をして欲しい。事務職員が制度を理解しスムーズな手続きが行なわれるようになって欲しい。待機児童をなくしいつでも認可保育園に入れるようにして欲しい。<BR>男性PT・OTに対して:育児に深く関ることにより父親として,人として,職業人として多くのメリットがあるのでどんどん取得して欲しい。<BR>【考察】今回の調査は偶然アクセスできた5名のうち協力を得られた4名という非常に少ない数の調査であるが全ての職場が公的又は準公的な施設であった。<BR>職場の規模や職員数・取得期間や時期などは様々であった。<BR>困ったことは全員が特になしと,良かったこととして子供や家族との関係・人としてやリハビリテーションを担う職業人としての向上を挙げており育休取得によりメリットが大きいことがわかった。<BR>女性の育休取得がし易い職場では男性も取得し易いのではないか,保育所の必要性,どうしたら育休をすすめていけるかなど更なる状況把握・育休制度の啓発と代替者の補充が容易になるよう人材バンクなどの整備なども進めていく必要があると思われ,今後も活動を続けていく。<BR>
著者
萩原 文子 堀 七湖 中村 さち子 大槻 かおる 寺尾 詩子 大島 奈緒美 三枝 南十 上甲 博美 佐藤 幸子 小川 美緒
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.G3O1233-G3O1233, 2010

【目的】育児休業(以下、育休)が男性も取得可能な制度である中で実際の取得率は大変低くなっている(平成19年度育休取得率:女性89.7%、男性1.56%)。当部では育児経験のある男性理学療法士(以下、PT)に育児に関する意識や環境についてアンケート調査を行い、実際に育休の取得経験があるパパPT及び作業療法士(以下、OT)より経験談や意見を聴取した。今回はパパPTの実態を踏まえ、育休取得パパPT・OTの経験談と比較し問題点や改善点を見出すことを目的とした。<BR>【方法】2008年12月の1ヶ月間に20~40代のパパPT107名にアンケート用紙を使用し、家庭環境・職場環境や育児支援制度の認知度などの実態調査を行った。回答は無記名・多選択方式で得た。また、育休の取得経験があるパパPT3名・OT1名(平均年齢34歳)に調査票を使用し、家庭環境・職場環境・育休取得について面接又はメールにて調査をした。<BR>【説明と同意】調査依頼文にて目的や学会での公表を明記、もしくは口頭にて説明を行い、回答を得た時点で同意を得たものと判断した。<BR>【結果】家庭環境は共働き家庭が67%、育児援助者がいない家庭が72%と半数以上であった。子供と接する時間は平日で毎日30分以上が63%、また何らかの家事を行っている人が97%であった。職場は総合病院が最も多く43%、職場のPT数は1~56名、職場での育休の有無は「なし・わからない」が20%、育休取得環境の有無は「わからない」が43%であった。育休取得率は0.93%で、取得しなかった理由は「妻が取得した」という意見が多く、次いで「職場の環境」「仕事への影響」「必要なし」「制度不明」が挙げられた。パパになってからの変化としては経済的な責任や家庭を持つことで仕事以外にも役割が増え、休まざるを得ないことが増えたり、自分の時間が少なくなったと感じている人が多いが、同時に仕事のやりがいが向上し、PTとしての広がりや生活の充実を感じている人も多かった。パパPTの39%は出来れば育児支援制度を利用したいと思っていた。<BR>育休を取得したパパPT・OTの家庭環境は妻が出産を機に退職1名・共働き3名であり、育児援助者がいる1名、いない3名であった。職場は公的・準公的施設でPT・OT数は2名~28名、休業中の代替者の確保は「あり」2施設・「なし」2施設。職場での女性の育児休業取得は「取り易い」3施設・「退職圧力なし」1施設、リハビリテーション部門の対応は4施設とも協力的であり、そのうち3施設では代替者の募集が行われた。事務の対応・反応は「権利なので可能」「制度はあるが事務職員の認識がなく、自分で制度を調査し担当者の上司へ説明を求めるなどの対応を必要とした」「事情に詳しい他職種の上司が直属の上司や事務方への対応をしてくれた」が挙げられた。育休取得期間は2~12カ月で3名は妻の育休取得後、1名は妻の出産直後に取得した。困ったことは全員が「特になし」、良かったこととして「子供や家族との関係の向上」「人としてやリハビリテーションを担う職業人としての向上」を挙げており育休取得によるメリットが大きいことがわかった。<BR>【考察】両調査において共働き・育児援助者なしが多く、夫婦が助け合って仕事と育児を両立していく必要性が高い家庭が多かった。その中でも日本人男性が家事や育児に関与する時間は約1時間という報告がある中が、パパPTは家事や育児に協力している傾向が見られ、さらにパパが育児に関与することは仕事面・家庭面において親として・人として・職業人としての向上などのメリットが挙げられた。しかし、育児支援制度に関してはパパPTの39%が出来れば利用したいと思っているが、実際に育休を取得した人は0.93%であり、育児・介護休業法にて取得権利が認められているといっても制度の利用には課題があることがわかった。パパの育休取得に関してはまず、今回の結果からパパの育休に関する情報不足を感じ、さらに職場の環境としては代替え要員の雇用支援や人材バンクの整備、上司や事務職への制度に関する理解と啓発の必要性を感じた。また、公的・準公的施設や女性が取得しやすい職場などの環境も育休取得に影響していることがわかった。今後は会員のみならず職場への育児支援制度の情報提供・支援サービスの整備などを進めていく必要性を感じ、今後の活動へ生かしていきたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】ライフワークの中で就業が継続できる働きやすい環境を支援することでPTの質の向上にもつながると思われる。