著者
萩原 文子 大槻 かおる 髙橋 七湖 大島 奈緒美 寺尾 詩子 三枝 南十 上甲 博美 清川 恵子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.GbPI2473, 2011

【目的】当部は半数を占める女性会員の30歳以降の急激な減少に対し、女性会員が継続して活動できるような組織作りの必要性を感じ、平成17年女性会員支援事業委員会として活動を開始した。今回は6年にわたる出産・育児に関する調査・報告や会員への啓発活動を通じて得られた情報の共有と啓発のため、これまでの活動をまとめて報告する。<BR><BR>【方法】1)実態調査;女性会員・男性会員・職場責任者にアンケート調査実施。その内、2つの調査報告書を作成し県内各施設などに配布 2)学会発表;関東甲信越ブロック理学療法士学会や日本理学療法学術大会において6回のポスター及び口述での発表。第25回関東甲信越ブロック理学療法士学会ではPTのひろばにて「働く女性が求める職場環境」というテーマでシンポジウム開催 3)研修会・交流会;年1回研修会を実施し、内2回は子供同伴可として交流会も開催 4)新人オリエンテーション研修会;「女性雇用環境の関連法規について」などの講義 5)本会ニュース・ホームページ;出産・育児・介護の体験談や活動報告、調査報告、法律などの情報提供 6)復職支援リカレント教育推進事業;離職者への復職支援活動<BR><BR>【説明と同意】調査実施時は調査依頼文にて目的や学会などでの公表を明記もしくは口頭にて説明を行い、回答を得た時点で同意を得たものと判断した。<BR><BR>【結果】女性会員への実態調査より、結婚後就業を継続している人・継続予定の人は85%と多いが、育児休業制度(以下、育休)のことや利用可能な環境かがわからないという人が多く、離職理由では50%が「育児」25%が「出産」であった。また、非就業者23名全員が復職の意思を示していた。これらより女性の就業継続には出産・育児が大きな問題になっていることが再確認された。次に男性の育休取得者への調査・子供のいる男性理学療法士(以下、パパPT)の育児に関する意識調査を実施した。家庭環境としては共働き・育児援助者がおらず、夫婦が助け合って仕事と育児を両立していく必要性の高い家庭が多くみられ、パパPTは育児や家事に協力している傾向がみられた。パパ・職場共に育休制度に対する情報不足が感じられ、39%のパパPTができれば利用したいと思っているが実際に取得した人は0.93%とわずかであった。パパPTが育児に関与することは親として・職業人としての向上などのメリットが挙げられた。育児・介護休業法にて権利が認められているといっても制度の利用には制度についての認知度と職場環境に課題があることがわかった。次に理学療法部門の責任者を対象とした出産・育児と仕事の両立に関する調査を実施し、性別による雇用の差は認められなかったが、人材確保が困難になることで発生する問題が就業継続・就業復帰を困難にしているものと考えられた。また組織内の意識改革で両立が可能な環境へ近づける可能性があることも示唆された。全体を通して、公的・準公的施設以外は制度が利用しやすい職場環境にはなく、制度利用促進に関して啓発や支援が必要と感じた。具体的には、保育園の充実、代替要員の雇用支援や人材バンクの整備、上司や事務職を含む職場のスタッフ全体の意識改革などである。当部は女性会員支援事業委員会として発足したが、さまざまな活動の中で活動の必要性は女性に限るものではなく、この活動は会員全般への支援であることを実感し、平成19年12月には会員ライフサポート委員会に名称を変更、平成20年には会員ライフサポート部へ昇格し活動を継続している。<BR><BR>【考察】学会発表を行う中で他県士会の理事や団体の方よりご意見や応援の言葉を頂けるようなり、他県士会での調査・報告も聞かれるようになった。本会においても委員会から部へと昇格することができ、日本理学療法士協会からもアンケート調査の協力依頼や復職支援リカレント教育推進事業実施の機会も与えられた。本会から日本理学療法士協会へ数年にわたり代議員会にて協会レベルでの会員支援の調査や活動の依頼を行ってきたが、協会にて調査やリカレント教育推進事業が行われたことは一つの成果と考えられる。今後も当部では業務システムがうまく工夫されている施設の紹介や情報提供など今までの出産・育児を中心とした調査・啓発活動も進めていくとともに介護など更なるライフワークにも目を向けた活動を継続し、会員が理学療法士として働き続けられる環境支援のため活動を継続していく。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】さまざまなライフワークの中で理学療法士として就業が継続できる働きやすい環境を支援することで、理学療法士の地位や質の向上にもつながると思われる。
著者
萩原 文子 堀 七湖 中村 さち子 大槻 かおる 寺尾 詩子 大島 奈緒美 三枝 南十 上甲 博美 佐藤 幸子 小川 美緒
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.G3O1233-G3O1233, 2010

【目的】育児休業(以下、育休)が男性も取得可能な制度である中で実際の取得率は大変低くなっている(平成19年度育休取得率:女性89.7%、男性1.56%)。当部では育児経験のある男性理学療法士(以下、PT)に育児に関する意識や環境についてアンケート調査を行い、実際に育休の取得経験があるパパPT及び作業療法士(以下、OT)より経験談や意見を聴取した。今回はパパPTの実態を踏まえ、育休取得パパPT・OTの経験談と比較し問題点や改善点を見出すことを目的とした。<BR>【方法】2008年12月の1ヶ月間に20~40代のパパPT107名にアンケート用紙を使用し、家庭環境・職場環境や育児支援制度の認知度などの実態調査を行った。回答は無記名・多選択方式で得た。また、育休の取得経験があるパパPT3名・OT1名(平均年齢34歳)に調査票を使用し、家庭環境・職場環境・育休取得について面接又はメールにて調査をした。<BR>【説明と同意】調査依頼文にて目的や学会での公表を明記、もしくは口頭にて説明を行い、回答を得た時点で同意を得たものと判断した。<BR>【結果】家庭環境は共働き家庭が67%、育児援助者がいない家庭が72%と半数以上であった。子供と接する時間は平日で毎日30分以上が63%、また何らかの家事を行っている人が97%であった。職場は総合病院が最も多く43%、職場のPT数は1~56名、職場での育休の有無は「なし・わからない」が20%、育休取得環境の有無は「わからない」が43%であった。育休取得率は0.93%で、取得しなかった理由は「妻が取得した」という意見が多く、次いで「職場の環境」「仕事への影響」「必要なし」「制度不明」が挙げられた。パパになってからの変化としては経済的な責任や家庭を持つことで仕事以外にも役割が増え、休まざるを得ないことが増えたり、自分の時間が少なくなったと感じている人が多いが、同時に仕事のやりがいが向上し、PTとしての広がりや生活の充実を感じている人も多かった。パパPTの39%は出来れば育児支援制度を利用したいと思っていた。<BR>育休を取得したパパPT・OTの家庭環境は妻が出産を機に退職1名・共働き3名であり、育児援助者がいる1名、いない3名であった。職場は公的・準公的施設でPT・OT数は2名~28名、休業中の代替者の確保は「あり」2施設・「なし」2施設。職場での女性の育児休業取得は「取り易い」3施設・「退職圧力なし」1施設、リハビリテーション部門の対応は4施設とも協力的であり、そのうち3施設では代替者の募集が行われた。事務の対応・反応は「権利なので可能」「制度はあるが事務職員の認識がなく、自分で制度を調査し担当者の上司へ説明を求めるなどの対応を必要とした」「事情に詳しい他職種の上司が直属の上司や事務方への対応をしてくれた」が挙げられた。育休取得期間は2~12カ月で3名は妻の育休取得後、1名は妻の出産直後に取得した。困ったことは全員が「特になし」、良かったこととして「子供や家族との関係の向上」「人としてやリハビリテーションを担う職業人としての向上」を挙げており育休取得によるメリットが大きいことがわかった。<BR>【考察】両調査において共働き・育児援助者なしが多く、夫婦が助け合って仕事と育児を両立していく必要性が高い家庭が多かった。その中でも日本人男性が家事や育児に関与する時間は約1時間という報告がある中が、パパPTは家事や育児に協力している傾向が見られ、さらにパパが育児に関与することは仕事面・家庭面において親として・人として・職業人としての向上などのメリットが挙げられた。しかし、育児支援制度に関してはパパPTの39%が出来れば利用したいと思っているが、実際に育休を取得した人は0.93%であり、育児・介護休業法にて取得権利が認められているといっても制度の利用には課題があることがわかった。パパの育休取得に関してはまず、今回の結果からパパの育休に関する情報不足を感じ、さらに職場の環境としては代替え要員の雇用支援や人材バンクの整備、上司や事務職への制度に関する理解と啓発の必要性を感じた。また、公的・準公的施設や女性が取得しやすい職場などの環境も育休取得に影響していることがわかった。今後は会員のみならず職場への育児支援制度の情報提供・支援サービスの整備などを進めていく必要性を感じ、今後の活動へ生かしていきたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】ライフワークの中で就業が継続できる働きやすい環境を支援することでPTの質の向上にもつながると思われる。