著者
石川 恵美 佐藤 幸子 大久保 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】飯に水や湯をかけて食べる方法は、奈良・平安迄遡る。その後、煎茶をかけて食べる「茶漬け」が出現した。それは比較的あたらしく江戸時代に普及したものである。現在は漬茶け専門店もあり、茶のかわりにだし汁をかけても「茶漬け」としている。飯に汁をかける食法がどのように発展、展開していたのかを探ることが本報告の目的である。【方法】文献調査:通史資料として『古事類苑』、近世資料として『守貞謾稿』、料理本等現在状況調査には市場統計出版物などを対象とした。【結果】平安時代には飯に水や湯をかけて食べる記録がみられる。その後、飯に汁をかける食法は武士層などの酒宴の後に用いられている。江戸末期の『守貞謾稿』には庶民の日常食に言及し、京阪は朝食、江戸は夕食に茶漬けとしている。煎茶の普及がそれまでの水や湯をかけていたものから茶漬けに発展した。水と茶の品質にもこだわっていた話が料亭での茶漬けとして伝わっている。一方、江戸の料理書『名飯部類』には86品中45品が出汁や煎茶をかける物として記載されている。近代に入り、永谷園が1941年に刻み海苔に抹茶や塩を加えた「海苔茶」を発売、1952年に「お茶漬け海苔」と商品名にお茶漬を取り上げ、お茶漬がより日常的なものに発展した。懐石料理においては最後に飯に湯桶にお焦げを入れた湯が添えられ、食法が決められている。現在は外食店にだし汁を飯にかけて供する店名にお茶漬けを採用している現象が出現している。飯に汁をかける食法の総称として「お茶漬け」という言語が使用されるに至っていると言ってよい。
著者
佐藤 志保 佐藤 幸子 三上 千佳子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.9-16, 2013-03-20 (Released:2017-03-27)
参考文献数
16

本研究の目的は、先行研究をもとに作成した、採血を受ける子どもの対処行動を予測するために必要な要因のパスモデルを検討することである。小児科外来で採血を受ける3-6歳の子ども(男児32名、女児20名)とその保護者52組を対象とし、保護者への質問紙調査と採血場面の子どもの対処行動を参加観察法にて行った。パス解析により採血中の子どもの対処行動への関連を検討した結果、子どもの入院経験は、保護者が採血前に予測する子どもの対処行動に関連し、さらに、保護者が採血前に予測する子どもの対処行動が、実際の子どもの対処行動に関連していたことが明らかとなった。これにより、採血を受ける子どもに対して、採血前に保護者が予測する子どもの対処行動を把握することが重要であり、こどもの個別性を把握するためのアセスメントに活用できることが示唆された。
著者
佐藤 幸子 夛名賀 友子 四宮 陽子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.108-116, 2014-03-15 (Released:2014-04-30)
参考文献数
27
被引用文献数
1 3

うどんのコシの特徴である硬さの不均一性を物理的に解明するために,圧縮によるクリープ測定をモデル化し,ゆで麺表面から中心部への粘弾性分布を測定することを試みた.結果は次の通りである.(1)測定方法のモデル化により,ゆで麺表面から中心部にかけての4点において典型的なクリープ曲線が得られ,試料A(ゆで直後麺)と試料B(ゆで後24時間麺)の各部位は,6要素と8要素に解析された.(2)粘弾性の解析結果,試料AとBの粘性率ηNは107~108Pa・sだが,η1,η2,η3は104~106 Pa・sと小さく,麺内部へかけての変化も見られないことから,ηNに対して無視できると考え,粘弾性を2要素に単純化した.(3)2要素に単純化した試料AとBの緩和時間を計算した結果,AとBともに表面付近は約1分で内部へかけて減少し,中心付近は10秒以下であり,ゆで麺の咀嚼時間1秒以下と比較するとかなり長かった.したがって,ゆで麺の咀嚼では弾性要素の影響が強いと考えられる.(4)試料Aの弾性率は表面から内部にかけて徐々に増加し,「コシが強い」状態を表していた.試料Bは歪率16%で増加して,その後やや減少傾向で,弾力の無い伸びた麺の状態を表していた.(5)官能評価で選択された麺の特徴を表す代表的な用語は,Aは「弾力がある」,「もちもちしている」,「こしが強い」,「つるつるする」,Bは「弾力がない」,「こしが弱い」,「噛み切りやすい」,「やわらかい」であり,クリープの測定結果とよく一致した.
著者
今井 暹 鎌田 好二 佐藤 幸子
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.274-280, 1975-08-28 (Released:2010-07-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1

茂原市郊外のヨード工場ならびにモリブデン工場周辺部の養蚕家に出現した異常蚕について研究した結果, つぎの成績を得た。工場群から特定方向の一定距離内の桑園が工場から出る有害物質の被害をうけ, その桑葉を食下した蚕に異常がみられた。この桑葉は50~100ppmという高濃度のヨウ素に汚染され, これを食下した蚕は特異な病状を呈しながら発育を阻害されることを明かにした。したがってこの異常蚕はヨウ素中毒によるものであり, その病状はヨウ素添食蚕と全く一致していた。また中毒死は, 蚕体内にかなり高濃度に留存しているヨウ素にその原因があるように考えられた。
著者
佐竹 紀香 田中 美希 浜守 杏奈 佐藤 幸子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2021年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.136, 2021 (Released:2021-09-07)

【目的】漬物は、特徴的な香りを持つことから「お新香」「香の物」といわれている。漬物の中で、近年、市販の糠床や一夜漬けの糠漬けが流通するようになったが、その独特の臭いにより嗜好性が大きく分かれる。そこで本研究では、スパイスを添加した糠床に胡瓜を漬け込み、その糠漬けについて、香気成分分析および嗜好評価を実施し、糠漬けの糠臭軽減効果について検証した。また、スパイスの認知度を検証するために「スパイスの使用頻度等の意識調査」をあわせて実施した。【方法】糠床は、生糠に塩、唐辛子、昆布、水を混ぜ合わせ、1か月間キャベツで捨て漬けし、調製した。調製した糠床に各スパイス(八角、ナツメグ、クミン)を混ぜ込み、3種類の糠床を調製した。糠床に12時間漬けた胡瓜をすりおろしたものを香気成分用試料とした。香気捕集はMonolithic Material Sorptive Extrction 法に採用し、undecane(C11H24:東京化成㈱)を内部標準とし、GC/MSおよびGC/O分析を行った。また、官能評価(5段階評価法)を実施し嗜好評価を行った。【結果】香気成分分析の結果、糠漬けは胡瓜由来のグリーン様のHexenalと糠臭の3-methyl-butanolが確認できた。スパイスを添加した糠漬けは、いずれも糠臭の香気成分構成割合が半減し、糠臭は抑制された。また、胡瓜由来の匂いはスパイスによる差が顕著であり、八角の添加によって匂いが強調された。官能評価では、ナツメグが最も糠漬けとして好ましい評価を得た。本研究では、スパイス添加による糠臭のマスキング効果が期待できた。今後、食材によりスパイスの種類および添加量を検討する必要があると思われた。
著者
髙橋 育子 佐藤 幸子 今田 志保 本間 恵美
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 医学 : 山形医学 = Bulletin of the Yamagata University. Medical science : Yamagata medical journal (ISSN:0288030X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.43-50, 2020-02-15

【背景】母親の育児不安の一因として乳児の皮膚トラブルがあげられている。乳児のスキンケアついて整理し、乳児のスキンケアに関わる現状を明確にすることを目的とし文献検討を行った。【方法】「医学中央雑誌」Web版を用い、2018年6月現在、「スキンケア」「沐浴」「皮膚トラブル」「乳児」「子供」「乳児湿疹」をキーワードに組み合わせて検索した。原著論文21件を対象に、研究内容を類似性に基づき分析・分類し、乳児のスキンケアの現状と分娩取扱医療機関におけるスキンケアの指導内容について整理した。【結果】対象となった文献の内容は、「乳児の皮膚トラブルの実態」「乳児の皮膚やスキンケアに対する母親の認識の実態」「スキンケアの効果」「母親が行う乳児へのスキンケアの実態」「分娩取扱医療機関における新生児のスキンケア方法」「分娩取扱医療機関におけるスキンケア指導の実態」の6つのカテゴリーに分類された。その内容として、乳児の皮膚トラブルの実態は、季節に関係なく新生児の約7割、乳幼児の約9割程度に皮膚トラブルがあり、多くの母親の困りごとになっていたこと、分娩取扱医療機関におけるスキンケアの指導は充分行われていなかったこと、母親はスキンケア手技に自信がなく、看護職からのスキンケア指導を求めていることが明らかになった。【結論】乳児の皮膚トラブルは多いが、スキンケア指導が充分に行われていない。母親へのスキンケア指導を推進する必要がある。
著者
成田 亮子 白尾 美佳 赤石 記子 伊藤 美穂 色川 木綿子 宇和川 小百合 大久保 洋子 香西 みどり 加藤 和子 佐藤 幸子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】平成24,25年度特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」に基づき、昭和35〜45年頃に食べられていた東京都における家庭料理について聞き書き調査を実施し、次世代に伝え継ぐ家庭料理における行事食の特徴を検討した。</p><p>【方法】東京都23区(台東区・世田谷区・中野区・杉並区・品川区・板橋区・練馬区)、都下(日野市・奥多摩町)、島しょ(新島・式根島)の3地域に分け、70歳以上の都民を対象に、家庭料理を聞き書き調査した。その結果より正月、節分、桃の節句、端午の節句、七夕、お盆、土用、お彼岸、月見、七五三、大晦日などの行事食について抜出した。</p><p>【結果・考察】正月は雑煮が食べられていたが、23区と都下でも地域によって食材が異なり特徴がみられた。お節料理では、黒豆、紅白なます、昆布巻き、数の子、きんとん、田作りなどが重詰めにされて食べられていた。節分では23区でイワシの焼き魚、煎り豆、都下で福茶が飲まれていた。桃の節句では蛤の潮汁、ひなあられ、端午の節句では島しょでしょうぶ、いももち、お彼岸ではぼたもちの他に、都下で海苔巻きずし、いなりずしが食べられていた。お月見では月見団子の他に島しょであおやぎ、七五三では都下で、とりの子餅、大晦日では23区で年越しそば、すき焼きなども食べられていた。不祝儀や仏事では23区で白和え、島しょでひら、忌明けだんごが食べられていた。ひらは祝儀と不祝儀で盛り付け方を区別して用いていた。東京23区、都下では行事食で食べられているものは現在と変わらないものが多かった。島しょでは特徴があるものがみられた。聞き書き調査を行い、昭和35年ごろから現在まで行事食は変わらず受け継がれていることが分かった。</p>
著者
中村 京一 田中 美千裕 高橋 幸雄 佐藤 幸子 照屋 愛 乙咩 公通
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.402-407, 2014 (Released:2014-06-17)
参考文献数
4

頚動脈ステント留置術carotid artery stentingでは,percutaneous transluminal angioplasty(PTA)に伴う頚動脈洞反射によって,心静止,徐脈,低血圧が誘発される.当院では,全身麻酔下に施行し,ステントを十分に開大させる方針をとっているため,留置ステントを拡張させて頚動脈内腔に適合させる留置後拡張術(Post-PTA)で頚動脈洞が強く刺激され,高頻度に反射が発生した.この反射を予防するため,Post-PTAの直前に予防的にアトロピンを投与するプロトコールを作成した.その結果,プロトコール施行前後で,徐脈(前100%,後9.8%),低血圧(前100%,後9.8%),体表ペーシング作動(前40%,後0%)の発生頻度が著しく減少した.本プロトコールによって,頚動脈反射に伴う徐脈,低血圧を効果的に予防できた.
著者
伊藤 美穂 成田 亮子 赤石 記子 色川 木綿子 宇和川 小百合 大久保 洋子 香西 みどり 加藤 和子 佐藤 幸子 白尾 美佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」に基づき、昭和40年頃に食べられていた東京都における家庭料理について聞き書き調査を実施した。今回は、主菜について、23区、都下、島しょの特徴を明らかにすることを目的とした。<br>【方法】東京都に40年以上居住している70歳以上の都民を対象に、昭和40年頃に食べられていた家庭料理について聞き書き調査を実施した。主な調査時期は平成24、25年であるが、随時追加調査を行った。東京都を23区の東部、西部、南部、北部と都下、島しょの6地域に分け、当時食されていた主菜について肉、魚、卵、豆・豆製品、その他に分類して考察した。<br>【結果】肉料理は、23区で多く出現し、中でもすき焼き、とんかつ、ロールキャベツ、餃子などが挙げられた。その他、ステーキやメンチカツ、カレー、ハンバーグなどの洋風料理がみられた。魚料理は、23区では鮭の塩焼き、あじの干物、身欠きにしんの他、種々の魚介を刺身や焼き魚、煮魚、ムニエルにして食していた。都下では、多摩川や浅川などが近いため、川魚のやまめやあゆの料理がみられた。島しょでは、くさやが食されており、伝統的な魚料理の伝承がみられた。その他にもあおむろ、とびうお、ぶだいなど他地域ではみられない魚を使った料理が挙げられた。卵料理は、卵焼き、目玉焼きなどが挙げられ、23区ではオムレツもみられた。納豆や豆腐が23区の日常食に多くみられた。その他の料理として、天ぷらが多くの地域でみられた。23区の東部と北部と比較して、西部と南部に洋風料理が多くみられた。これらの地域では高度経済成長期の中で、食生活が変化していく様子が推察できる。一方、都下や島しょでは、地域の食材に根差した伝統的な食生活がみえた。
著者
佐藤 幸子 小築 康弘 北岡 千佳 梅澤 未来 高梨 萌 渡邉 綾香
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.142, 2010

【<B>目的</B>】食べ物は「単なる商品」として、多くの人々に認識されているとも言え、食品の由来や食の風土・文化的価値に対する理解は希薄であると言っても過言ではないだろう。そこで、我々は、風土と文化を反映する料理の味覚体験を中心に据えた食教育の役割が重要であるとの考えに至った。本報告では、東京湾を魚場とする食産業の中心地である港区芝地区における「江戸前寿司」について、港区芝の寿司職人さんと連携し、体験型調理実習を実施し、地域密着の食文化的視点を取り入れた食教育プログラムを遂行した。更に、新たな食教育の方法として、USTREAMを利用したライブ映像を発信し、その可能性について検討した。<BR>【<B>方法</B>】本学食物栄養科専門科目として「食育演習」(通年,2単位)を新設し、その一講座として「江戸庶民の食文化―握り寿司」を開講した。対象は短大1・2年生30名とした。講座内容は、(1)歴史資料から見た芝地区の漁業についての講義、(2)寿司職人さんによる講義および実演、(3)調理実習、(4)味覚体験「学生による寿司と職人さんによる寿司の比較」を実施した。実習内容は、握り寿司として四種、巻物としてかっぱ巻きとし、食材は、現役漁師の丸氏が東京湾で捕獲した魚類と寿司職人さんが仕入れたものを使用した。講座後、学生に対する意識調査を行い、かわら版の作成と提出を義務づけた。また、講座をUSTREAMを利用したライブ動画発信を行い(アカウント名foodtoitan)、Twitterを利用した教員の解説コメントを同時発信した(アカウント名foodtoitan)。<BR>【<B>結果</B>】意識調査より、食文化・食材・調理・味覚教育を総合的に企画した体験型調理実習は、食と生命の基本的価値を学ぶ食教育として有効であると考えられる。さらに、今回の活動により、食教育に地域の専門家が参加することは有効な手段である可能性を見いだした。今後、継続的な地域組織との食教育プログラムを検討するとともに、USTREAMによる動画発信は、食教育推進の有望な手段である可能性が高いことから、大いなる活用を検討していきたい。
著者
内田 まり子 中村 透 山縣 浩 佐藤 幸子 浅野 真晴 秋保 明 阿部 直子
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.6, pp.71, 2005

財団法人日本盲導犬協会仙台訓練センターでは、平成13年11月から平成17年3月まで、仙台市による地域リハビリテーションモデル事業の一環である中途視覚障害者生活訓練事業の委託を受け、訪問による視覚障害リハビリテーションサービスを実施した。このサービスを利用した仙台市民の人数は、平成13年度および平成14年度は16名、平成15年度は16名、平成16年度は23名であった。のべ55名のケースについて、支援に関係した施設および機関は、当訓練センターのみではなく、地域に存在する複数だったケースが大半を占めた。その他、ケースの概要と傾向をまとめ、地域にある複数の関係機関どうしの関わりや支援システムの動きなどについて報告する。 また、受傷後およそ3年間、引きこもりに近い生活をしていたケースが地域のデイサービス利用をきっかけに視覚障害リハビリテーションサービスを利用し、交流会(「仙台市における中途視覚障害者リハビリテーション支援システム第3報」にて発表)にも参加を始めたケースを報告し、地域に住む視覚障害者に提供できるリハビリテーションサービスについて考察したい。
著者
佐竹 紀香 田中 美希 浜守 杏奈 佐藤 幸子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】漬物は、特徴的な香りを持つことから「お新香」「香の物」といわれている。漬物の中で、近年、市販の糠床や一夜漬けの糠漬けが流通するようになったが、その独特の臭いにより嗜好性が大きく分かれる。そこで本研究では、スパイスを添加した糠床に胡瓜を漬け込み、その糠漬けについて、香気成分分析および嗜好評価を実施し、糠漬けの糠臭軽減効果について検証した。また、スパイスの認知度を検証するために「スパイスの使用頻度等の意識調査」をあわせて実施した。</p><p>【方法】糠床は、生糠に塩、唐辛子、昆布、水を混ぜ合わせ、1か月間キャベツで捨て漬けし、調製した。調製した糠床に各スパイス(八角、ナツメグ、クミン)を混ぜ込み、3種類の糠床を調製した。糠床に12時間漬けた胡瓜をすりおろしたものを香気成分用試料とした。香気捕集はMonolithic Material Sorptive Extrction 法に採用し、undecane(C11H24:東京化成㈱)を内部標準とし、GC/MSおよびGC/O分析を行った。また、官能評価(5段階評価法)を実施し嗜好評価を行った。</p><p>【結果】香気成分分析の結果、糠漬けは胡瓜由来のグリーン様のHexenalと糠臭の3-methyl-butanolが確認できた。スパイスを添加した糠漬けは、いずれも糠臭の香気成分構成割合が半減し、糠臭は抑制された。また、胡瓜由来の匂いはスパイスによる差が顕著であり、八角の添加によって匂いが強調された。官能評価では、ナツメグが最も糠漬けとして好ましい評価を得た。本研究では、スパイス添加による糠臭のマスキング効果が期待できた。今後、食材によりスパイスの種類および添加量を検討する必要があると思われた。</p>
著者
佐藤 幸子 数野 千恵子 西島 基弘
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.111-116, 2008-04-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
19
被引用文献数
1

タイム(Thymus vulgaris L.)を加熱したときの香気成分の挙動を検討した。フレッシュタイムの香気中に,炭化水素類(α-thujene・α-pinene・camphene・β-myrcene・carene・limonene・γ-terpinene・cyrnene・caryophyllene),アルコール類(1-octen-3-ol・linalool・borneol)およびフェノール類(thymol)の14成分を確認した。GC-MSによる香気成分の構成割合は,加熱によってフェノール類のthyrnolが増加傾向を示し,加熱温度が香気成分の揮散に影響していることが推察された。GC-O分析によりフレッシュタイムの香気成分は,初めにα-thujeneとα-pinene,次いでlinaloolとborneol,最後にthymolを順次感じられることがわかった。タイムの香気成分を構成割合とFD-factorにより総合的に検討した結果オーブン加熱では樹木様の香り,電子レンジ加熱では青葉様の香り,真空加熱では甘い青葉様の香りが特徴的であり,加熱方法によりそれぞれの特徴的な香りを食材に賦香することできると考えた。
著者
佐藤 幸子 小築 康弘 民谷 万里子 北岡 千佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.2082, 2009

<BR>【目的】本学が立地する東京都港区芝界隈は、江戸時代より東京湾の魚場として食産業の中心地である。そこで、芝落語会および芝青色申告会青年部との地域連携により、庶民の食べ物として「蕎麦」をテーマとし、栄養士を目指す本学の学生を対象に食教育を展開した。「蕎麦」という食材について、落語鑑賞による食文化的視点と「蕎麦打ち」による調理科学的視点を通して、食材を生かした料理の美味しさの探究を目指し、その文化および調理性について理解することを目的とした。<BR>【方法】食教育として (1)「落語鑑賞」(2)「手打ちそばの体験」(3)「蕎麦粉を使ったお菓子作り」を展開した。対象は、本学食物栄養科の学生に選択授業として実施した。(1)「落語鑑賞」(2)「手打ちそばの体験」において、食文化的視点では落語家の瀧川鯉之助氏により、演目の「時蕎麦」を鑑賞させた。調理科学的視点では、「蕎麦粉」についての解説と芝地区の蕎麦打ち職人さんの実演を受講させた後、その場で打ち立ての「蕎麦」を試食させた。学生の評価は、「かわら版」としてまとめさせた。また、(3)「蕎麦粉を使ったお菓子作り」では、「蕎麦粉を使ったお菓子」を調理学研究室のゼミ履修学生と試作検討し、芝地区活動として「蕎麦」の普及を目指した。<BR>【結果】体験授業後、意識調査(n=74)を行った結果、「落語を聴いて興味をもった」が約80%を占め、手打ち蕎麦については「打ち立て蕎麦を試食して美味しかった」と、多くの学生が、「蕎麦」の文化・美味しさに関しての意識の向上が認められた。また、蕎麦の風味を生かした焼き菓子を試作し、「第4回ふれ愛まつりだ、芝地区」に参加した。
著者
加藤 チイ 吉田 侑加 佐藤 幸子 奈良 一寛
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学生活科学部紀要 = Bulletin of Jissen Women's University Faculty of Human Life Sciences (ISSN:24336645)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-7, 2020-03-09

実習で提供した食事の栄養評価を行った。2 種類の献立の栄養量(エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物)について化学分析値、近赤外分光法測定値、食品成分表計算値の3 つを評価した。化学分析値に対する近赤外分光法測定値の割合(%)、化学分析値に対する食品成分表計算値の割合(%)は、両者ともに80 ~ 120%の範囲内の傾向にあった。汁物、黒色の食品を含む「ひじきご飯献立」では炭水化物を過大評価していた。次に、26 種類の料理の栄養量について、近赤外分光法測定値、食品成分表計算値の2 つについて、回帰直線を評価した結果、エネルギーはR2 = 0.955 と高い相関性を示し、たんぱく質、脂質、炭水化物についても同様の傾向であった。近赤外分光法について献立の料理を混和した場合と料理別に測定し合計した場合の2 つの方法を比較した結果では、「鮭の味噌バター焼き献立」、「アジフライ献立」、「おから入りハンバーグ献立」は近似であったが、「大豆ご飯、豚肉と大根の煮物献立」は混和食のエネルギーを過大に評価していた。近赤外分光法測定は化学分析、食品成分表計算の結果と関連し、給食の栄養量評価に有用である。近赤外分光法で誤差が大きかったものには、海藻など黒色の材料を含む料理、スープ・味噌汁など水分の多い料理があった。
著者
藤田 愛 山口 咲奈枝 宇野 日菜子 佐藤 志保 佐藤 幸子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1_135-1_140, 2013-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
26

【目的】妊娠期の体重増加量別により,栄養所要量や栄養バランスの実態を調査する。【方法】褥婦111名に対し,『141項目半定量食物摂取頻度調査』を用いて妊娠期の栄養所要量ならびにPFCバランスを調査し,妊娠期の体重増加量別を三分位した群について,ANOVA分析を行った。【結果】体重増加量は「8.5㎏未満群」「8.5㎏以上11.0kg未満群」「11.0kg以上群」の3群に分類した。栄養摂取所要量は3群すべて推奨量を満たしておらず,葉酸や鉄は推奨量の半分で,低栄養状態であった。PFCバランスは「8.5㎏以上11.0kg未満群」が理想の栄養バランスをとっており,「8.5kg未満群」と「11.0kg以上群」は脂肪割合が高い欧米型の栄養バランスであった。【結論】現在,妊娠期の体重増加量の指導は,非妊時BMIを基準とした至適体重増加チャートを使用している。本研究より,妊婦の低栄養や欧米型の栄養バランスが示されたことから,体重増加だけでなくバランスのとれた食事の栄養指導が望まれる。
著者
小嶋 知幸 佐藤 幸子 加藤 正弘
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.141-147, 2002-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
7

重度発語失行例における軟口蓋破裂音/k/の構音訓練として, 構音点に対して冷却刺激を加える方法を試みた.症例は発症時53歳の男性.平成11年4月に発症した左中大脳動脈領域の広範な脳梗塞を機に, 重度の発語失行を中核症状とする混合型失語を呈した.構音訓練開始から6ヵ月経過しても改善のみられなかった軟口蓋破裂音/k/の構音の改善を目的として, 構音点である奥舌と軟口蓋に対して冷却刺激を加える方法を考案し, 刺激前後での構音の成功率を比較した.その結果, 冷却刺激後に/k/の構音成績に有意な改善がみられた.これは, 構音点に対する末梢からの感覚刺激が正しい構音点を形成するための運動を促通した結果と考えられた.本方法は, 正しい構音動作を視覚的に呈示することが困難な音や, ダイナミックパラトグラフィの利用が困難な音の構音訓練法として簡便な方法であり, 臨床的に有効な手法であると考えられた.