著者
相澤 真一 堀 兼大朗
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.115-136, 2022-07-30 (Released:2024-04-01)
参考文献数
26

本稿では,ブルデューの『ディスタンクシオン』およびイギリスにおけるその実証的展開である『文化・階級・卓越化』から示唆を得て,日本社会において同様の問いを検討し,いかなる文化資本を見いだすことが可能なのかを計量的に検討する。ただし,本来,このような問いを明らかにすることのできる調査データは存在しないため,現在,広く入手可能なデータでどこまでこのような問いに接近可能なのかについて検討する。 本稿では,文化的変数あるいは生活様式にかかわる変数を投入した対応分析を行う。『文化・階級・卓越化』に則り,対応分析には,文化的活動あるいはライフスタイルにかかわる変数をアクティブ変数として投入する。具体的な分析手順としては,第1に,文化的活動あるいはライフスタイルにかかわる変数のいずれかのみを投入する。第2に,その両者を投入する。このそれぞれの分析結果に追加変数として,社会階層の分析でよく用いられる変数をプロットし,両者の関係を検討する。分析には,2015年「社会階層と社会移動全国調査」(以下,SSM2015)と東大社研パネル調査(以下,JLPS)の一部のWaveを用いる。 結果として,文化的活動への関与の有無と資本の総量は相関していることが示唆される。特にクラシック音楽や美術への関与と社会階層変数との重なりが大きい一方で,第二軸の分散は主に年齢と関連していることが明らかになった。