著者
木村 亜矢子 堀 匠 佐藤 啓子 佐藤 智美 先崎 章
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.421-427, 2017-12-31 (Released:2019-01-02)
参考文献数
4

記憶障害と発動性低下のため日常生活の遂行が難しい患者 1 例に対し, SNS (social networking service) を用いた支援を行った。症例は 40 代, 男性の運転手で前交通動脈瘤破裂によるくも膜下出血を発症した。身体, 言語機能はほぼ問題ないが, 重度記憶障害, 発動性の低下を中心とした高次脳機能障害を認めた。入院当初メモリーノートや, アラーム機能による行動指示を試みたが, 活用は困難であった。 本人が使い慣れていた SNS (LINE のトーク機能) を使用し, 多職種チームが連携して支援を行った結果, 病棟生活では標準意欲評価法 (CAS) による評価が改善し, 退院後もLINE を用いて屋外での単独行動が安全に可能となった。家族にとっても行動を遠隔に確認し見守ることができ, 退院後の安心や省力化につながった。SNS (LINE) による行動指示や記憶を補完する支援は, 患者が自立した生活を送るために有効であった。
著者
奥田 亮 赤堀 匠 大竹 徹
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.75-78, 2015 (Released:2019-07-11)
参考文献数
5

現在では稀となった中毒にメタノール中毒がある.メタノール中毒ではその代謝産物であるホルムアルデヒド,ギ酸が主に毒性を発揮するため潜伏期間を経ることが特徴である.入院時,向精神薬の過量服薬による急性薬物中毒の疑いとして入院したが,入院27 時間後に急変し,肺塞栓等の合併症や他の疾患の突然発症などを考慮するも原因を特定できず,当初急変の原因は不明であった.その後,ご家族からの情報提供により本人のインターネット閲覧履歴からメタノール中毒と推察するに至った.メタノール中毒は早期診断が重要となるが,本症例では向精神薬,制吐薬等を重複して服用していたこともあり,早期の診断に至ることができなかった.稀な自殺方法であってもインターネットなどから情報を得ることが可能で,特に周到,詳細な方法までもが記載されていることに注意しておく必要がある.
著者
谷口 千枝 笹川 真紀子 泉 正彦 三島 リエ 中岡 明子 赤堀 匠 三浦 明彦 大谷 徹
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.11-18, 2013 (Released:2019-07-14)
参考文献数
7

当科では平成6 年から統合失調症入院患者への集団SST が取り組まれていたが,平成23 年度から統合失調症患者に限定しない他疾患患者も参加できるように,主な訓練目標を「対人スキル課題」と限定し実施した.また,対象者も限定し,プログラムを構造化する取り組みを行った.構造化したことでSST 参加者の対人関係に変化が起こったが,中でも有効であった3 症例を報告する.「対人スキル課題」と限定したことで,各人の対人関係の問題が明確になり,課題解決に役立った.そして,各症例とも,他者との友好な交流を可能にし,入院中や退院後の人間関係が円滑になった.我々の集団SST は統合失調症に限定しない他疾患患者にも適応でき,対人関係の構築・改善に有効であった.