- 著者
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野白 有里子
今井 孝
酒井 牧子
河野 通盛
- 出版者
- 松江市立病院
- 雑誌
- 松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.1, pp.33-35, 2019 (Released:2019-07-01)
- 参考文献数
- 6
せん妄は入院期間の延長,転倒事故リスクの増大,医療従事者の負担増加に繋がり,医療現場において問題とされている.そのためせん妄のリスク因子を把握し,事前のせん妄対策を行うことが重要となる.本研究の目的は,せん妄発症患者における,患者背景及びせん妄リスク薬の使用状を調査し,それらがせん妄の発症に及ぼす影響を明らかにすることである.調査期間中の消化器内科病棟全入院患者は1,389 名であり,そのうちせん妄治療目的での投薬が行われた対象患者は22名であった.対象患者のうち,せん妄発症直前に服用していた,せん妄誘発リスクが高いとされる薬剤は0 剤の患者が8 名,1 剤が5 名,2 剤が5 名,3 剤が4 名であった.せん妄リスク薬のうち,BZ系及び非BZ系睡眠薬・抗不安薬服用患者,オピオイド系鎮痛薬服用患者の人数が多い傾向にあった.一方,高齢者ではせん妄リスク薬が0 剤であってもせん妄を発症していた.また,せん妄リスク薬を3 剤服用している患者は0 ~ 2 剤の患者に比べ平均年齢が低い傾向にあった.このことから,せん妄リスク薬を多剤併用している患者に対しては,年齢に関わらずせん妄発症リスクがあることを考慮し,薬剤の適正使用を検討することにより,せん妄発症を回避できる可能性が示唆された.