著者
山田 恭子 堀 匡 國田 祥子 中條 和光
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.9, pp.37-51, 2009

近年, 生きる力の育成の観点から, 自己調整学習(Zimmerman, 1986, 1989)に関心が集まっている。自己調整学習では, 学習方略をプランニングする過程が重要とされる。そこで, 本研究では, 達成動機と自己効力感が学習方略の使用とどのような関係にあるかを調べた。具体的には, 達成動機と自己効力感を測定し, それらの高低の組み合わせで学習者を4つの群に区分して, それぞれの群の学習方略使用を比較した。調査の結果, (1)自己充実的達成動機の高い学習者は, 低い学習者よりも, 抽象的学習方略(例: 授業中先生の話をよく聞く), 基礎的学習方略(例: 覚えたい内容に線を引く), 自己調整的学習方略(例: 自分で自分の成果をほめる)を使用すること, (2)競争的達成動機の高低のみでは, 学習方略の使用について説明が困難であること, (3)自己効力感が高い学習者は, 低い学習者よりも抽象的学習方略, 基礎的学習方略, 自己調整的学習方略を使用するのに対し, 自己効力感の低い学習者は不適応的学習方略(例: 一夜漬け)を使用することが示唆された。これらの結果を考慮することによって, 学習者の適性に応じた学習指導が可能になり, 自ら学ぶ力の向上に貢献できることを考察した。
著者
堀 匡 小林 丈真
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.41-48, 2010-10-01
被引用文献数
1

本研究は,大学生の愛着スタイルとソーシャルスキル,友人サポート,精神的健康状態との関連について検討することを目的とした。大学生を対象に質問紙調査を実施し,回答に欠損のない650名(男性264名,女性386名)を分析対象とした。分析は,まず,愛着スタイル尺度に関してクラスター分析を行った。その結果,安定群,アンビバレント群,回避群という3つのクラスターが抽出された。その後,各クラスターを独立変数ソーシャルスキル,友人サポート,精神的不健康度を従属変数とする一元配置の分散分析を行った。分散分析の結果, 1)アンビバレント群は,関係開始,主張性,感情統制,関係維持スキル得点が安定群,回避群に比べて有意に低く,解読,記号化スキル得点は安定群に比べて有意に低いこと, 2)回避群は,関係開始,解読,関係維持,記号化スキル得点が安定群に比べて有意に低いこと, 3)回避群は友人サポート得点が,安定群,アンビバレント群に比べて有意に低いこと, 4)アンビバレント群は,安定群,回避群に比べて精神的不健康度が有意に高いことが明らかとなった。以上の結果から,1)アンビバレント群では,主張性,感情統制,関係開始,関係維持,解読,記号化スキルを高めることが,2)回避群では,関係開始,関係維持,解読,記号化スキルを高めることが心理・社会的適応状態の改善に有効であることが示唆された。