著者
益子 洋人
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.19-26, 2010-10-01

本研究の目的は,過剰適応傾向を「対人関係や社会集団において,他者の期待に過剰に応えようとするあまりに,自分らしくある感覚を失ってしまいがちな傾向」と定義した上で,本来感に対する過剰な外的適応行動と内省傾向(自分の感情を理解しようとする傾向)の影響を検討し,過剰適応的な人の本来感を高める方法を考察することであった。大学生を対象に質問紙を配布し,163名の回答を分析した。分析の結果,過剰な外的適応行動のうち,「よく思われたい欲求」および「自己抑制」は,本来感と中程度の負の関連を示していた。また,内省傾向は,本来感と弱い正の関連を示していた。この結果は,他者によく思われようと努力したり自分を抑えたりする行動は本来感を減少させるが,自分の感情を理解しようとする傾向は本来感を向上させると解釈された。ここから,過剰適応傾向の高い人の本来感を高めるためには,過剰な外的適応行動を間接的に軽減するため,その原因であるとされる見捨てられ不安を緩和する方法を開発していくことや,過剰な外的適応行動の低減が難しい場合に備えて内省傾向を高める働きかけを行うことが必要であると考察された。
著者
二宮 有輝
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.37-47, 2017 (Released:2021-04-08)
参考文献数
39

【問題と目的】日頃からSNSなどを利用することの多い大学生にとって,ネット依存は無視できない問題である。一方,これまでネット上でのどのような行動がネット依存に関連しているのかはほとんど扱われてこなかった。そこで,本研究ではSNS上の自己呈示というネット上の行動面を媒介変数として取り上げ,精神的健康がSNS依存傾向に与える影響を検討することを目的とした。【方法】大学生を対象に質問紙調査を行い,SNSの一つであるTwitterを利用している403名を分析対象とした。分析にはパス解析を用い,精神的健康の指標としての自尊感情,孤独感,解離傾向の3指標がSNS上の自己呈示を媒介してSNS依存傾向に与える影響について検討を行った。【結果】相関分析から,Twitter上で理想的な自分を演じる,虚栄的自己呈示は精神的健康の指標と負の相関を示した。また,パス解析の結果,自尊感情の低さがTwitter依存傾向に与える影響は,虚栄的自己呈示によって媒介されることが示された。一方,孤独感は間接的にTwitter依存傾向を抑制することが示された。さらに,解離傾向がTwitter依存傾向に与える影響は虚栄的自己呈示によって媒介されていたが,解離傾向は直接Twitter依存傾向を助長することも明らかとなった。【考察】本研究の結果から,個人の精神的健康がTwitter依存に与える影響は,Twitter上の自己呈示によって媒介されることが明らかとなったが,精神的健康からTwitter依存への直接の影響も認められた。今後は縦断的な方法を用いて精神的健康がTwitter上の自己呈示,およびTwitter依存に与える影響を詳細に検討するとともに,実際の活動履歴など,より具体的なネット上の行動面に焦点を当てた方法を用いた調査を行う必要があると考えられる。
著者
尼崎 光洋 清水 安夫
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.23-31, 2009-03-01

本研究の目的は,高校野球部員を対象とした集団効力感尺度を作成し,集団効力感に影響を与えると考えられる集団凝集性と部活動内で経験するストレッサーとの関連性を検討することである。調査対象者は,東京都内の高校野球部員224名であり,質問紙を用いた集合調査法にて実施した。調査内容は,Magyar et al.(2004)が作成した集団効力感を測定するCollective Efficacy Scaleを邦訳した高校野球部員版集団効力感尺度(Collective Efficacy Scale for Japanese High School Basebal Players:CES-JHSBP),集団凝集性測定尺度短縮版(芹澤・清水,2005a),高校運動部員用ストレッサー尺度短縮版(芹澤・清水,2005b)を用いた。尺度開発のために,探索的因子分析,検証的因子分析を実施した。また,抽出された各因子に対して,信頼性係数(Cronbach's α)を算出した。さらに,CES-JHSBPと各尺度の関連性を検討するために重回帰分析を行った。本研究の結果から,信頼性及び妥当性を兼ね備えたCES-JHSBP(3因子10項目)が開発された。また,集団凝集性を高めることで,集団効力感を高めることにつながることが示された。さらに,部活動内でのストレッサーを多く経験することが,集団効力感を高めることにつながる可能性が示された。一方で,部活動内での指導者に対するストレッサーは,集団効力感を低下させることにつながる可能性が示された。今後,顧問教師の指導力の質的向上を果たすための介入プログラム作りに向けて,集団効力感の観点から検討を重ねていくことが必要であると考える。
著者
宮下 敏恵 五十嵐 透子 増井 晃
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.71-80, 2009-12-01

本研究の目的は教員養成系大学における学生のメンタルヘルスの経年変化を検討することであった。小中高等学校の教師のメンタルヘルス悪化が叫ばれる中,教師を目指す学生の段階において,メンタルヘルスは変化しているのか,23年間にわたるデータをもとに検討を行った。調査対象者は,教員養成系大学に1984年から2006年までに入学した学生4,435名(男性1,775名,女性2,660名)であった。大学生の精神的健康を調べるためにUPI調査用紙(University Personality Inventory)を用いた。本研究の結果から,UPIの自覚症状得点において,大きな変化はみられず,また下位尺度得点においても,大きな経年変化はみられず,一大学の結果ではあるが,教師を目指す学生のメンタルヘルスは悪化していないということが示された。教員養成系ではない他大学においては,自覚症状得点が増加しているという傾向が多数示されていることから,教師を目指す学生のメンタルヘルスは,むしろ維持されている可能性があるだろう。また,進路別にUPI得点を検討したところ,教育関係に就職した学生は,抑うつ得点が低いという有意な差がみられた。これらの結果から,一大学のみの結果で,断定はできないが,教師を目指す学生のメンタルヘルスは近年悪化しているとはいえず,むしろ教育関係に就職している学生のメンタルヘルスは高いという可能性が考えられる。教師のバーンアウト傾向の高さ,メンタルヘルスの悪化は,教師の資質そのものの変化ではなく,制度や仕事内容の悪化が大きな影響を及ぼしていると考えられる。
著者
北見 由奈 茂木 俊彦 森 和代
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.43-50, 2009-09-30 (Released:2021-04-08)
被引用文献数
3

目的:本研究の目的は,1)就職活動経験の有無による精神的健康状態の相違を明らかにすることと,2)近年の就職活動状況を考慮した就職活動におけるストレスを測定する尺度を作成し,3)大学生の就職活動におけるストレスが精神的健康に及ぼす影響を明らかにすることである。方法:調査対象者は,大学3・4年生1295人であった。なお,因子分析および就職活動におけるストレスと精神的健康に関する分析には,就職活動状況について,「現在,行なっている」もしくは「すでに終了した」と回答した608人を用いた。調査内容は,基本的属性(性別,年齢,学部),就職活動状況,精神的健康(GHQ-12項目短縮版),就職活動におけるストレスについてであった。結果:分析の結果,就職活動経験がある者の方が,経験がない者に比べ,有意に精神的健康状態が悪いことが示された。また,就職活動ストレス尺度について探索的因子分析およびステップワイズ因子分析を行なった結果,最終的に4因子各4項目の計16項目が抽出され,すべての因子において高い信頼性が得られた(α=0.715-0.870)。さらに,希望の企業からの内定がない者は,内定がある者に比べ,就職活動ストレスは高く,精神的健康へ及ぼす影響も強いことが明らかにされた。結論:本研究の結果から,学校現場において大学生の就職活動期の精神的負担の減少や学校生活の質の向上を目指した支援を行なう必要性が示唆された。
著者
大森 美湖 矢嶋 昭雄 櫻井 眞治 大西 建 石井 彰
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.161-169, 2013 (Released:2021-03-04)
参考文献数
18

【目的】A大学では,教育実習での辞退や失格を防ぐため,2007年度より教育実習生へのメンタルヘルス支援プログラムを開始した。今回その取り組みを呈示し,成果と課題を検討した。【方法】対象は,A大学で2003~2010年に基礎実習を志望した学生8,043名である。2007年より,支援委員会が支援対象学生を選別し,支援活動を開始した。支援開始前4年間と開始後4年間の失格辞退者数を比較,またメンタルヘルス支援対象学生の分析も行った。【結果】支援開始前4年間の失格辞退者は178名(4.4%)であったが,支援開始後4年間は68名(1.7%)と有意に減少していた。実習を行った支援対象学生48 名は全員無事に実習を終了できた。【考察】支援開始後の失格辞退者の減少要因として,①失格辞退の可能性の高い学生を支援することができた,②支援体制を周知させることで,学生も教員もメンタルヘルスへの意識が高まり,情報共有をし易くなった,③問題発生後の段階的支援があること等が考えられた。失格辞退者が減少したこと,実習を行った支援対象学生は全員実習を終了できたこと等から支援は有効と考えられる。今後は,この支援体制で拾えなかったメンタルヘルスの問題をもつ学生をいかに発見するかが課題である。
著者
益子 洋人
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.19-26, 2010-10-01 (Released:2021-04-08)
被引用文献数
3

本研究の目的は,過剰適応傾向を「対人関係や社会集団において,他者の期待に過剰に応えようとするあまりに,自分らしくある感覚を失ってしまいがちな傾向」と定義した上で,本来感に対する過剰な外的適応行動と内省傾向(自分の感情を理解しようとする傾向)の影響を検討し,過剰適応的な人の本来感を高める方法を考察することであった。大学生を対象に質問紙を配布し,163名の回答を分析した。分析の結果,過剰な外的適応行動のうち,「よく思われたい欲求」および「自己抑制」は,本来感と中程度の負の関連を示していた。また,内省傾向は,本来感と弱い正の関連を示していた。この結果は,他者によく思われようと努力したり自分を抑えたりする行動は本来感を減少させるが,自分の感情を理解しようとする傾向は本来感を向上させると解釈された。ここから,過剰適応傾向の高い人の本来感を高めるためには,過剰な外的適応行動を間接的に軽減するため,その原因であるとされる見捨てられ不安を緩和する方法を開発していくことや,過剰な外的適応行動の低減が難しい場合に備えて内省傾向を高める働きかけを行うことが必要であると考察された。
著者
益子 洋人
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.69-76, 2009-09-30 (Released:2021-04-08)
被引用文献数
1

本研究では,過剰適応傾向を「自分の気持ちを後回しにしてでも,他者から期待された役割や行為に応えようとする傾向」と定義した。本研究の目的は,第一に,一般高校生における過剰適応傾向と抑うつ,強迫,対人恐怖心性,不登校傾向との関連を検討すること,第二に,過剰適応傾向のサブタイプによって,それら4つの精神的健康指標がどのように異なるのかを,探索的に検討することである。420名の高校生に,質問紙調査を行った。相関分析の結果,過剰適応傾向のすべての因子は,抑うつ,強迫,対人恐怖と,有意な正の関連を示した。中でも抑うつと対人恐怖は,比較的強い関連を示しており,強迫は,比較的弱い関連を示していた。他方,不登校傾向は,過剰適応傾向の一部の因子としか有意な正の相関を示さず,関連も弱いものだった。また,過剰適応の5つのサブタイプを独立変数,精神的健康指標を従属変数とする一元配置分散分析の結果,各因子得点が高い過剰適応群は,多数がcut off pointを超えるほどに不健康であり,いくつかの因子得点が高い群がそれに続くが,「自己不全感」が低い群は,過剰適応していない群と同程度にしか不健康ではないことが示された。以上の結果から,一般の高校生における過剰適応傾向は,特に抑うつや対人恐怖につながりやすく,強迫や不登校にはあまりつながらないであろうことや,全般的に過剰適応している群は,精神的健康において,臨床群とほぼ同等の問題を抱えている可能性があること,過剰適応的な行動をとっていても,「自己不全感」が高まっていなければ,比較的健康に過ごせる可能性があることが明らかになった。今後の課題として,過剰適応傾向,特に「自己不全感」を低減させるための具体的な方法を開発することや,過剰適応と特定の不適応との関連を明らかにすることがあげられる。
著者
福本 美樹
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.164-172, 2016 (Released:2021-04-08)
参考文献数
20

【問題と目的】1990年代後半より,性同一性障害に対する社会的な受容が高まってきているように見える。しかし,性同一性障害当事者が社会的・心理的に様々な困難を抱えているという報告もあり,性同一性障害当事者がいまだ大きな心理的ストレスを抱えている現状が推測される。そこで本研究では,性同一性障害当事者への支援方法を考察するために,性同一性障害当事者が抱える困難と困難を乗り越える要因を明らかにすることを目的とした。【方法】性同一性障害当事者3名に対し,半構造化面接で,これまで経験してきた心理社会的困難と,そうした困難への対応状況あるいは方法を聞き取った。面接で得たデータをもとに,複線径路・等至性モデル(TEM)により分析した。【結果】困難として,自分の望む服装や持ち物を志向しても周囲に受け入れてもらえなかったこと,性に対する違和感を周囲に言えないこと,第二次性徴,学校や職場の制服や性役割の強要,就労できないことなどがあった。困難への対応状況あるいは方法としては,自分の性に対する違和感を言わないことにより周囲の批判を避けること,体の変化や制服の着用・外部からの性役割の強要を受け入れること,性同一性障害当事者の仲間を得ること,性に対する知識を得ること,家族や友人からの受容などがあった。【考察】性同一性障害当事者が困難を乗り越える際に必要である要因として,①性の多様性に関しての知識理解②性に違和感をもつ仲間たちとのつながり③家族や親しい友人からの受容④学校の受け入れ態勢の整備⑤職場の理解,が明確になった。特に④と⑤については,学校や職場での性別二元論に基づく男女別の振り分けに苦しむ当事者の状況が明らかになった。今後は,学校や職場における性の多様性についての理解と意識改革が必要であるとともに,なぜ学校や社会が性に違和感をもつ人たちを受け入れることができないのかという,性同一性障害当事者を取り巻く環境側の要因を研究していくことが必要と考えられる。
著者
山口 正寛
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.81-90, 2016 (Released:2021-04-08)
参考文献数
28

【問題と目的】本研究では,感情調整と社会性に困難を抱える学生を対象にした,認知行動療法的アプローチ(以下,CBTプログラム)とソーシャル・スキルズ・トレーニング(以下,SSTプログラム)に基づく心理教育による集団介入の実践報告を通して,これらのプログラムの有効性とその運用上の課題を検討した。【方法】9名の大学生が全10回のCBTプログラムに参加し,そのうち7名が引き続き全13回のSSTプログラムに参加した。CBTプログラムは,リラクゼーション,自他の感情理解に関する練習を中心に構成し,自尊感情とストレス・コーピングを効果測定の指標とした。SSTプログラムは,話の聴き方や対人葛藤場面における対処法などを中心とするスキル練習から構成し,ソーシャル・スキルと自己効力感,大学への適応感,精神的健康度を効果測定の指標とした。【結果】CBTプログラム実施後には,参加者の自尊心の向上が示唆され,SSTプログラム実施後では,ソーシャル・スキルの向上が示された。一方で,両プログラム実施後の参加者のストレス・コーピング,自己効力感,適応感及び精神的健康には改善が認められなかった。【考察】CBTプログラムを通して,客観的な自己理解の視点が得られたことや,リラクゼーションなどを活用して感情をコントロールするスキルを獲得することが自尊心の向上につながったと考えられた。また,SSTプログラムは対人関係上のソーシャル・スキルの改善に有効と考えられた。本研究の結果から,感情調整と社会性に困難さを抱える大学生を対象にした心理教育による集団介入は,一般大学生を対象とした心理教育と同様の効果が得られると考えられた。また,大学内における心理教育を運用する際の課題として,参加者のアセスメント,集団介入による否定的作用,介入効果の妥当性について検討する必要について考察された。
著者
齊藤 勇紀 有川 宏幸 土居 正城
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス = Journal of school mental health (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.117-128, 2018

【問題と目的】本研究は,児童発達支援事業を担う子ども発達支援センターで早期療育に従事する保育者を対象とし,保育者の関心の変化から「循環型」研修会のあり方を検討した。分析1 では,保育者の関心の変化を捉えるための指標となるカテゴリーの作成を行った。分析2では,「循環型」研修会の導入の前後における保育者の関心についての時系列的な変化を客観的に分析し,得られた効果を検討した。【方法】4年間継続して研修会に参加した12名の保育者を対象とした。分析1では,保育者の関心の変化を捉える指標を作成するため,会議録より抽出した保育者の質問内容のデータを,KJ法を用いて分類し,カテゴリー化した。分析2では,「循環型」研修会を導入した介入の前後における各カテゴリーに属する質問の個数の変化により,効果判定を行った。【結果】分析1では,保育者の関心の変化を捉えるための指標として,「指導法」「個に適合した療育」「職員間の連携」「保護者支援」「療育評価の方法」「地域連携」の6つのカテゴリーが抽出された。分析2 では,保育者の関心の変化として,「指導法」のカテゴリーが減少し,「療育評価の方法」,「地域連携」のカテゴリーが増加したことが示された。【考察】保育者の関心は,技術を求める実践から反省的な実践へと変化した。「循環型」研修会は,保育者の力量を高めるための研修会として,一つの選択肢であることが示唆された。一方,「循環型」研修会を再現していくためには,コンサルテーションのあり方についての検討が今後も必要である。
著者
板倉 憲政
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.197-203, 2017 (Released:2020-11-13)
参考文献数
22

【問題と目的】本研究の目的は,親子間での担任教師に関するコミュニケーションと高校生の教師に対する信頼感および登校回避感情との関連を検討することであった。【方法】インターネット調査会社MELLINKSに登録している対象者の中で,本調査への協力同意が得られた高校生250名(男子125名,女子125名)を対象に質問紙調査を実施した。調査内容は,親子間での担任教師に関するコミュニケーション,教師に対する信頼感,登校回避感情であった。【結果】親子間での担任教師に関する肯定的コミュニケーションと生徒の教師に対する安心感および役割遂行評価の間に正の関連が示された。また,親子間での担任教師に関する否定的コミュニケーションと生徒の教師に対する不信および登校回避感情の間に正の関連が示された。【考察】本研究の結果から,生徒の認知する保護者の教師に対する信頼感が,生徒の教師に対する信頼感の規定要因になっている可能性が示唆された。高校における不登校支援では,母親の担任教師への評価を肯定的に変化させる支援が有効であると考えられる。