著者
國田 祥子
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.87-93, 2016-06-16

電子メディアと従来の書籍では,文章の読みやすさや印象に違いはないのだろうか。國田(2015)はiPadを用いた読みと文庫本での読みを比較し,iPadで読む場合は書籍で読むよりも読み時間が長くなり,文章に対する印象が異なる傾向が示されたと報告している。このような差が見られた原因として,ディスプレイの大きさによる視点移動の多さや目の疲労感が考えられる。そこで本研究では,より小型のディスプレイを持つiPad miniおよび目に対する負担が少ないとされるe-inkディスプレイを搭載したKindle Paperwhiteを用い,大学生に電子メディアと文庫本で同一の文章を読ませ,読み時間を計測した。さらに読了後,文章の読みやすさ評定と印象評定に回答させた。その結果,読み時間および読みやすさ評定はいずれも文庫本と差がなかった。このことから,ディスプレイの大きさに配慮することで,電子メディアでの読みやすさが書籍と同等になることが示唆された。一方,印象評定はiPad miniと文庫本の間でいくつかの差が見られた。iPad miniは操作性やディスプレイ表示の質感などがスマートフォンと類似しており,その馴染みが読みの特性を変化させたのかもしれない。Kindle Paperwhiteと文庫本の間にほとんど差が見られなかったのは,ディスプレイ表示の質感が紙に近く,そのため書籍で読んだ場合と印象があまり変わらなかったためではないだろうか。
著者
國田 祥子 中條 和光
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.9, pp.27-35, 2009
被引用文献数
1

携帯電話のディスプレイ上で読まれている, いわゆるケータイ小説の書式は, 改行が多く, センテンスが短めであるといった特徴があり, 一般的な小説の書式と大きく異なっている。このような書式の特徴は, 携帯電話のディスプレイで文章を読みやすくするために経験的に編み出されたと言われている。しかし, 実際にその書式が読み手に対してどのような効果を持っているのかは調べられていない。本研究では, 携帯電話のディスプレイと紙面において, ケータイ小説を模した書式(ケータイ書式)と一般的な書式(一般書式)で小説を呈示し, 読み時間測定, 読みやすさ評定, 文章の印象評定を行った。その結果, 携帯電話で読んだ場合はケータイ書式の方が読み時間が短く, 読みやすいと評定されたが, 紙面で読んだ場合は差が見られなかった。また印象評定の結果から, 携帯電話で読んだ場合はケータイ書式の方がやわらかく積極的で活発, もしくは明るく派手な印象を与えるのに対し, 紙面で読んだ場合はケータイ書式の方が消極的で静かで不活発で地味な印象を与えることが見いだされた。以上の結果から, ケータイ書式は携帯電話での文章呈示における工夫として有効であることが示された。
著者
國田 祥子
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.15, pp.87-93, 2016-06

電子メディアと従来の書籍では,文章の読みやすさや印象に違いはないのだろうか。國田(2015)はiPadを用いた読みと文庫本での読みを比較し,iPadで読む場合は書籍で読むよりも読み時間が長くなり,文章に対する印象が異なる傾向が示されたと報告している。このような差が見られた原因として,ディスプレイの大きさによる視点移動の多さや目の疲労感が考えられる。そこで本研究では,より小型のディスプレイを持つiPad miniおよび目に対する負担が少ないとされるe-inkディスプレイを搭載したKindle Paperwhiteを用い,大学生に電子メディアと文庫本で同一の文章を読ませ,読み時間を計測した。さらに読了後,文章の読みやすさ評定と印象評定に回答させた。その結果,読み時間および読みやすさ評定はいずれも文庫本と差がなかった。このことから,ディスプレイの大きさに配慮することで,電子メディアでの読みやすさが書籍と同等になることが示唆された。一方,印象評定はiPad miniと文庫本の間でいくつかの差が見られた。iPad miniは操作性やディスプレイ表示の質感などがスマートフォンと類似しており,その馴染みが読みの特性を変化させたのかもしれない。Kindle Paperwhiteと文庫本の間にほとんど差が見られなかったのは,ディスプレイ表示の質感が紙に近く,そのため書籍で読んだ場合と印象があまり変わらなかったためではないだろうか。
著者
國田 祥子 小阪 芙由美 西 菜見子
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.18, pp.113-122, 2019-06-16

近年,待機児童の問題が大きく取り上げられている。保育施設の増加が必要だが,保育士不足もあって容易ではない。保育士不足の原因の1つに,早期離職者の多さがあると言われている。そこで本研究では,保育士がなぜ早期に離職してしまうのかを検討する。 保育士146名に質問紙調査を行い,離職を考えた経験とその理由,職場環境について尋ねた。その結果,20代後半以降や保育経験6年以上で離職を考えた経験のある人が増加していた。離職を考えた理由は「職場の人間関係」「残業が多い」「給与面」が,保育士を続けてきてよかったことは「子どもの成長に貢献できていると思うこと」「子どもと一緒に過ごせること」「保育を通して充実感が得られること」が多かった。また離職を考えた経験のない人は,ある人よりも現在の職場には研修機会が多く,相談相手がいると感じていた。 保育士の多くは職場の人間関係や待遇に不満を感じつつも,自分の保育を高める機会や相談できる同僚の存在に支えられ,子どもの成長を糧として仕事を続けていることが示唆された。多様な価値観を許容する職場風土の醸成や保育士の待遇改善が,早期離職者を減らすために有効なのではないだろうか。
著者
山田 恭子 堀 匡 國田 祥子 中條 和光
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.9, pp.37-51, 2009

近年, 生きる力の育成の観点から, 自己調整学習(Zimmerman, 1986, 1989)に関心が集まっている。自己調整学習では, 学習方略をプランニングする過程が重要とされる。そこで, 本研究では, 達成動機と自己効力感が学習方略の使用とどのような関係にあるかを調べた。具体的には, 達成動機と自己効力感を測定し, それらの高低の組み合わせで学習者を4つの群に区分して, それぞれの群の学習方略使用を比較した。調査の結果, (1)自己充実的達成動機の高い学習者は, 低い学習者よりも, 抽象的学習方略(例: 授業中先生の話をよく聞く), 基礎的学習方略(例: 覚えたい内容に線を引く), 自己調整的学習方略(例: 自分で自分の成果をほめる)を使用すること, (2)競争的達成動機の高低のみでは, 学習方略の使用について説明が困難であること, (3)自己効力感が高い学習者は, 低い学習者よりも抽象的学習方略, 基礎的学習方略, 自己調整的学習方略を使用するのに対し, 自己効力感の低い学習者は不適応的学習方略(例: 一夜漬け)を使用することが示唆された。これらの結果を考慮することによって, 学習者の適性に応じた学習指導が可能になり, 自ら学ぶ力の向上に貢献できることを考察した。
著者
國田 祥子 山本 あゆみ
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.13, pp.131-140, 2013-06-16

子どもの問題行動の背景には,自己表現力や自己抑制力の欠如があると言われている。本研究では,この2者の関係について検討した。保育者および小学校教諭を対象に,担任している子どもについての質問紙調査を行った。回収した質問紙を学年によって幼児,低学年,中学年,高学年に分類し,適切な自己表現であるアサーティブな自己表現および不適切な自己表現であるノンアサーティブ,アグレッシブな自己表現の生起頻度について平均得点を算出した。さらに,自己抑制を構成する行動の抑制,注意の移行,注意の焦点化の3因子についても平均得点を算出した。自己表現に関する得点を説明変数,自己抑制に関する得点を従属変数とする重回帰分析を行ったところ,アサーティブ得点から自己抑制の3因子に対して概ね負のパスが見られた。このことから,適切な自己表現を行っている子どもほど自己抑制ができないと捉えられていることが示唆された。保育現場や教育現場においては,本来独立しているはずの自己表現と自己抑制が,対照的なものと捉えられているのかもしれない。保育者や小学校教諭は,子どもの自己表現をより肯定的に捉えられるよう,配慮していく必要があるだろう。
著者
國田 祥子 山田 恭子 森田 愛子 中條 和光
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.8, pp.21-32, 2008

成人の文章理解では, 黙読が有利であることが知られている。これに対し, 高橋(2007)は, タッピングを行いながらガーデンパス文の意味理解を行う課題において, 黙読は二重課題が無い場合よりも成績が低下するのに対し, 音読では成績が維持されることを見いだし, 音読が個々の単語に強制的に注意を配分する読み方であることが成績を維持させた原因であると考察している。本研究では, この音読の注意配分機能を成人の文章理解において検討した。音読と黙読の2群でタッピングの有無の条件を設け, 理解と記憶のテストを行った。その結果, 理解テストでは正答率に読み方の差は無く, 読み時間は黙読群の方が短かった。記憶テストの正答率は黙読群の方が高く, 読み時間は黙読群の方が長かった。両テストでタッピングの主効果と交互作用は有意にならなかった。本研究では, 成人の文章理解における黙読優位という一般的な結果が再現された。読み時間から, 黙読群は, 理解と記憶という読みの目的に応じて柔軟に読み方を変えていたことが示唆された。しかし, 理解テストや二重課題としたタッピングの難度が低すぎたとも考えられ, 音読の注意配分機能については更に検討が必要である。