- 著者
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堀 和孝
- 出版者
- 同志社大学
- 雑誌
- 同志社法學 (ISSN:03877612)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.2, pp.1219-1248, 2007-07
本稿は、竹越与三郎が宮内省臨時帝室編修官長在任中に執筆した稿本「明治天皇紀」の特色を考察することを目的とする。竹越の稿本「明治天皇紀」は、「第一巻 緒論」、「第二巻 明治前紀甲」、「第三巻 明治前紀乙」、「第四巻 明治前紀丙」、「第五巻 明治前紀丁」の五冊から成るが、戦後公刊された『明治天皇紀』と比較すると、竹越稿本の最大の特色は、「第一巻 緒論」において、明治天皇生誕以前の歴史を叙述しているところにある。そしてそこでは、「歴史の本体は経済的動機にあり」(『日本経済史』)とする観点から、江戸幕府の崩壊が論じられている。また、明治天皇生誕以後を記述した「第二巻 明治前紀甲」以降についても、特に同時代の「国勢」に関する記述に公刊本『明治天皇紀』との大きな違いが見出される。竹越の編修官長辞任の要因は不明だが、もし彼が辞任していなければ、公刊された『明治天皇紀』とは大きく異なるものが完成していたに違いない。