著者
栗駒 かおり 池 康平 畑 知宏 久木 はる奈 堀 晋之助 河合 春菜 服部 暁穂 山田 めぐみ
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3P3052, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】 有酸素運動として一般的にはウォーキング(速歩)、ジョギング、サイクリング、水中運動等が挙げられる.しかし、臨床では心疾患及び骨・関節疾患等の身体的なリスクがある場合において、自転車エルゴメーター(以下エルゴ)及びリカンベントを用いることが多い.それらを使用するにあたり、それぞれの特性を把握しておくことは重要である.しかし、エルゴとリカンベントを比較した報告は少ない.そこで我々は、双方に心肺運動負荷試験(以下CPX)を実施し、駆動姿勢の変化が有酸素運動に及ぼす影響について検討した.【方法】 対象は同意を得た健常成人10名(男性6名女性4名、年齢24.6±5.4)とした. エルゴを使用し、起立座位及び、リカンベント様姿勢にて回転数60rpmのRamp負荷法(男性20watts/min、女性15watts/min)でCPXを施行した.呼気ガス分析はミナト医科学社製エアロモニターAE300Sを用いた.比較項目は、運動開始から嫌気性代謝閾値(AT)までの負荷増加に対する酸素摂取量(AT-V(ドット)O2)・時間(AT-Time)・負荷量(AT-Load)とした.また、同様に呼吸性代償点(RC)までの、酸素摂取量(RC-V(ドット)O2)・時間(RC-Time)・負荷量(RC-Load)・ATからRCまでの酸素摂取量(AT- RC V(ドット)O2)、及びボルグスケールも算出・比較した.統計処理はスチューデントのt検定を用いて検討した.有意水準は5%未満とした.【結果】 CPXから得られた双方の各指標は有意な差を認めなかった.また、V(ドット)O2及びボルグスケールは有意差を認めなかったが、リカンベント様姿勢での施行が高値傾向であった.【考察】 本研究において駆動姿勢の変化は、CPXの各指標には有意な差を認めなかった.このことから、身体的なリスク(肥満、高齢者、長時間の端坐位が困難な腰部疾患や体幹が不安定な片麻痺)を有し、エルゴ使用困難な場合、リカンベントを使用することで、エルゴと同様の有酸素運動が実施出来ることが示唆された. しかし、ボルグスケールや動員筋活動に影響すると言われているV(ドット)O2はAT及びRCにおいて有意な差を認めないが、リカンベント様姿勢が高値傾向であり、被検者からは下肢の疲労の訴えが多かった.その原因として、リカンベント様姿勢は体幹が固定され下肢を中心とした運動が多い、また、駆動時の下肢の運動方向がエルゴでは従重力位に対し、リカンベント様姿勢は水平方向であったため、筋活動に違いを生じたのではないかと考える.このことから、リカンベントの使用は有酸素運動に限らず機能訓練にも有効であると考えられる.本研究では双方の下肢筋活動量は測定していないが、今後それらを比較・検討する必要がある.【まとめ】 本研究により、エルゴ使用時の駆動姿勢の変化は双方ともに同様の有酸素運動効果が得られると示唆された.
著者
木下 利喜生 橋崎 孝賢 森木 貴司 堀 晋之助 藤田 恭久 幸田 剣 中村 健 田島 文博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100176, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 当院リハビリテーション(リハ)科では、リハ室で患者が急変した場合、緊急カート、心電図モニター(ECG)、パルスオキシメーター、血圧計、ストレッチャーなどの準備、装着を現場スタッフで行う。同時に他のスタッフがリハ医へ報告、現場での診察を依頼し、身体所見やモニターなどの情報をもとに対応の指示を仰ぐまでの一連の流れを救急時対応とし、全スタッフを対象にトレーニングを実施している。そのため、当科では、これまでにも幾度となく血圧や意識レベル低下などの急変が発生しているが、全ての案件において対応が可能であった。 今回、リハ実施時において、開設から始めて患者が心肺停止となる状況に直面した。その際にリハ科で対応可能であったこと、またシステム上の不備や対応不足が明らかとなったことを情報の共有のために報告する。【方法】 10時20分頃、理学療法室で立位練習開始、血圧低下認めないため、平行棒内での歩行練習をこの日より開始する。平行棒内での歩行練習後もバイタルの著明な変動ないため、10時40分頃に歩行器での歩行練習を行う。歩行器歩行10m程度で両下肢の脱力、意識消失を認め、理学療法士数名でベッドへ寝かせている間に、リハ医と外来看護師に連絡、ECG、パルスオキシメーター、血圧計を装着した。ECG上60台でサイナスリズム、酸素飽和度98%、血圧測定行えないためベッド上で下肢挙上する。10時45分頃リハ医・看護師到着、何度か血圧測定するも測定できず、病棟に連絡し、ストレッチャーでの迎えを要請する。その後、意識レベル改善認めず、徐々に酸素飽和度が低下し始めたため、10時48分にホワイトコール(救急対応依頼の全館放送)を要請する。リハ医と看護師により酸素投与開始し、アンビューバックを準備している際に多数の医師、看護師到着。頚動脈も触知困難のため救急医師により、心臓マッサージ、挿管により気道確保され、救急処置室へ搬送される。その後の検査の結果、急変原因は肺血栓塞栓症であることが判明した。【倫理的配慮、説明と同意】 本症例の情報は、医療記録から特定できないよう匿名化し、プライバシーに配慮した。また、今回の発表にあたり当大学医療安全推進部に発表内容および目的を十分に説明し、発表の了承を得た。【結果】 初期対応は、手順通り実施できており問題ないと思われた。しかし、多数の医師、看護師が到着、理学療法室内が騒然とし、リハ中の患者を移動するなどの対応をとるべきであったが、これまでに心肺停止でのホワイトコール経験がなく、迅速な対応が行えず、駆け付けた看護師の判断により、病棟へ帰室するかたちとなった。 また、当科では酸素配管はあるがボンベを常備しておらず、リハ室から救急対応室へ搬送する際の酸素ボンベを救急部に借りに行く必要があった。【考察】 今回の対応の不備は、これまでに心肺停止によるホワイトコールの経験がなく、我々の想定していない状況下に陥った事が背景にある。これを受けて、ボンベの常備を早急に行い、ホワイトコール時は、一旦、リハ中の患者を発生現場以外の訓練室に移動したのち、病棟へ搬送すると決定した。また、シミュレーションをホワイトコールまでを想定したものに変更し、すぐに全体研修を実施、また人事異動のある4月初旬に必ず全体研修を実施すると決めた。 院内対応としては、長期臥床患者のリハを開始する際は、下肢深部静脈血栓症・肺梗塞のリスク因子を評価し、必要があれば下肢静脈エコーを行うなど早期発見・早期予防に務めるよう全科へ指導が行われた。当科でも下肢の腫脹などの身体所見の確認だけでなく、Dダイマー、FDPなどの血液データの確認を指導した。またリハ科で行える静脈血栓塞栓症の予防として、早期からの歩行および積極的な運動が重要であることを再教育し、早期離床を再度徹底した。 今回の案件を経験し、考えうる最悪の状況を想定した急変時対応を常に考えていく重要性を痛感した。本案件だけでなく、ひとつひとつの事例背景を分析し、対応マニュアルの強化、更新が必要であり、また積極的に文献抄読や学会参加をすることで、常に新しい情報を収集しておくことも重要であると感じた。【理学療法学研究としての意義】 最も重篤な急変の1つである心肺停止事例における、対応時の問題、さらにその解決策を報告することは、今後のリハ室での急変時対応マニュアル作成や強化などをする際の貴重な情報になると考えられる。